「未来のアンドロイド研究論文」をパラグラフライティングで書いてみた
論文執筆の基本技法であるパラグラフライティングは文章表現の「形式」なので、どんな題材に対しても使えます。SFだって書けます。
というわけで、『未来のアンドロイドロボットの研究者が、次世代型のアンドロイドの開発をテーマとして論文を書いた』という想定で、パラグラフライティングでSF世界の論文の冒頭を書いてみました。どんなものになるのか、そして、それをどのように書いていったのかを紹介します。
SF世界の研究論文
今回書いてみた文章はこちらです。5つのパラグラフで構成される論文の緒言前半部分ですね。まずはひと通り読んでみてください。
先頭文だけ抜き出して読むとあらすじになっていることを確認してください。こうなっているのが、パラグラフライティングの特長ですね。また、各パラグラフの中でも話題が一貫していることも確認できたと思います。
どうやって書いていったか
それでは、この文章をどう書いていったかをみていきましょう。パラグラフライティングでは、まず「アウトライン」と呼ばれる話題とメッセージの並びを決めて、各メッセージに根拠・解説・具体例から成るメッセージの補助文を添えていきます。この方法についてはこちらの記事で解説しています。
アウトラインを整える
下の図をみてください。これが、アウトラインの「素」です。「理想」「現状」「課題」「問題」「アプローチ」の5つの話題がこの順で並んでいます。これは、論文の緒言部分の前半のアウトラインのおすすめの構成です。※後半のおすすめ構成は、「目標」「手段」「論文構成紹介」です。
この構成ではメッセージを5つ決めることになります。
今回の場合、理想は「大気成分のみで活動可能な次世代型アンドロイドの実現」であり、それに反して現状は「現在のアンドロイドは人と同じものを食料としている」というメッセージにしました。
この現状と理想のギャップを埋めるために達成を目指す課題は「食物不要で大気成分のみからエネルギーを得られるアンドロイドのエネルギー変換胃の効率を20%以上にする」ことで、その課題の達成を妨げている問題は「従来の変換胃は壊れやすい」ことであると認識しているということにしました。
この問題の解決のためのアプローチは、「酸の分泌を抑える錠剤を開発し、アンドロイドが用法・容量を守って飲めるように訓練する」というものにしました。
結果として、未来のアンドロイド研究者が用意したアウトラインは、下の図のようなものになりました。各メッセージが、話題展開の接続詞によってしっかり繋げられていることに注目してください。
このアウトラインを左側から順に読んでいくと、すでに話の骨格が出来ていることが分かると思います。実は、このアウトラインをここまで整えるまでには、何度もメッセージを練り直しています。下絵が良くないと良い絵にならないので、このアウトラインも何度も何度も書き直してここまで仕上げています。
アウトラインからパラグラフへ
ここから、アウトラインに沿って肉付けをしていきます。今回、5つのメッセージがありますので、5つのパラグラフを作ることになります。解説・根拠・具体例のいずれを書き加えていくかは、メッセージが読まれたときにどんな感想を抱かれるかで決めるのでしたね。
まずは、「大気成分のみで活動可能な次世代型アンドロイドの実現」という理想についての第1パラグラフをみていきましょう。このメッセージについては、「それが本当に理想なの?」と疑われそうなので、根拠を付けます。また、「詳しくはどうなの?」とも思われそうなので、解説も付けていきます。この方針で、第1パラグラフをこのようにしました。
先頭文がメッセージで、2文目と3文目がその根拠、4文目が解説になっています。各文には、必要に応じて文献の引用が必要ですね。
続いて、現状についての第2パラグラフをみていきましょう。「現在のアンドロイドは人と同じものを食料としている」という現状については、「実際にはどんな感じなの?」と興味を持ってもらえそうなので、具体例を載せました。先頭文はメッセージで、2文目と3文目はその具体例になっていますね。
続いては、課題についての第3パラグラフです。「食物不要で大気成分のみからエネルギーを得られるエネルギー変換胃の効率を20%以上にする」という課題については、「なんでこの数値なの?」と尋ねられそうなので、根拠を付けます。また、「エネルギー変換胃」という用語が曖昧なので、解説も加えるのが良さそうです。というわけで、次のようなパラグラフになりました。2文目が解説、3文目と4文目が根拠になっています。
そして、問題についての第4パラグラフです。「従来のエネルギー変換胃は壊れやすい」というメッセージについては、「本当に問題になっているの?」と信じてもらえなさそうなので、根拠を付けました。2文目と3文目が根拠になっています。
最後は、アプローチについての第5パラグラフです。「酸の分泌を抑える錠剤を開発し、アンドロイドが用法・容量を守って飲めるように訓練する」というメッセージについては、「実際にはどんな風にするの?」と思われそうなので、具体例を付けました。2文目と3文目が具体例になっています。
おわりに
アウトラインに沿って解説・根拠・具体例を書き足してパラグラフライティングの作法に則った文章を書いていく実例を紹介しました。
実際に研究をしなくてもパラグラフライティングで論文を書く練習ができますから、「歯磨きの仕方をパラグラフライティングで書いてみた」「部屋の片付け方をパラグラフライティングで書いてみた」みたいな身近な話を題材にするのもいいですね。
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