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研究デザイン:量的研究の分類

veryshortな備忘録代わりのメモ.
今回は「研究デザイン:量的研究の分類」について.

研究工程の第一段階において設定したリサーチ・クエスチョンタイプⅠタイプⅡのどちらのタイプかで自ずと研究デザインが決まってくる.したがって,研究を行っていくうえで研究デザインの分類をおさえておくことは必須の知識といえる.

研究デザインを大別すると量的研究(quantitative research)と質的研究(qualitative research)に二分される.量的研究は文字通り“数値”で表す研究であり,統計学の知識が必要となる.ここでは,Deitz(1993)による量的研究の分類を解説する.

量的研究は量的集団研究と量的単一事例研究に分類される.
1)量的集団研究
量的集団研究は記述的研究,関連性研究,実験的研究に分類される.記述的研究は実態調査などが該当し,関連性研究は2種類の評価スコア(例えば,年収と幸福感)の相関など2つ以上の事象の関係を調べるものが該当し,実験的研究は治療効果など因果関係を調べるために行われるものをいう.研究と聞くと大抵の人が思いつくのがこれらの量的集団研究に関するデザインと思う.
以下に各デザインの特徴を要約する.

①記述的研究
・対象の傾向や能力の状態,集団や組織の状態などを調べ,得た情報を記述する研究のこと.
・実態調査や基準値研究(例:健常者の握力分布)が代表的な記述的研究.
・非実験的研究,仮説形成型研究,調査的研究,観察研究とも呼ばれる.
・タイプⅡのリサーチ・クエスチョンが該当する.

例 「大学生はどの程度の握力を示すのか?」

②関連性研究
・2つ以上の事象・現象が同時に起こる程度やその関係の仕方を検証する研究のこと.
・因果関係以外の仮説検証を目的とする.
・タイプⅠのリサーチ・クエスチョンが該当する.

例「膝痛患者の疼痛と破局的思考は相関があるのか?」

③実験的研究
・因果関係を検証することを目的とする.
・仮説検証型研究,介入研究とも呼ばれる.
・治療(介入)効果の検証に用いられる研究デザイン.
・タイプⅠのリサーチ・クエスチョンが該当する.

例「腰痛患者にA治療法を行った場合の方が,B治療法を行うときよりも痛みや日常生活能力が改善するのか?」

以上のように多くのデータを集めて行う量的集団研究の他に量的単一事例研究と呼ばれるデザインもある.

2)量的単一事例研究 
量的単一事例研究はシングルケースデザイン,シングルケース実験法,シングルケース研究法などと呼ばれるもので,文字通り少数事例を対象として治療(介入)効果を確かめる比較的新しい研究手法である. 

心理学・生理学領域において,1960年代後期~1970年代に発展した比較的新しい研究手法である.文字通り,単一事例または少数事例を対象として,ある治療(介入)法の効果を判定するために一定期間にわたり計測を繰り返し,治療(介入)効果を検証する方法である.

シングルケースデザインは個人を対象とした因果関係を追跡する新しい実験法であり,サンプルも確保しやすいため,臨床で使える有用な研究法の一つといわれている.シングルケースデザインは様々な別の呼称がある.シングルケース実験法,シングルケース研究法という和訳が用いられることが多い.

*シングルケースデザインのその他の呼称
 Single-case design
 Single-system design
 Single-subject design
 Single-system research design
 Single-case experimental design
 Small-N design
 Intrasubject design
 Experimental case-study designIdiographic approach

以下の記事もご覧くださいませ.
 ↓↓

ひさのメモ①研究法の基本
https://note.com/hisanpan/n/n73440b049333

ひさのメモ②文献レビュー
https://note.com/hisanpan/n/nd0a2ededd080

ひさのメモ③研究に必要な統計学の基礎
https://note.com/hisanpan/n/nfb2155ab938b

ひさのメモ④観察研究(調査的研究)の基本的方法論
https://note.com/hisanpan/n/nc23d87420257

ひさのメモ⑤介入研究(実験的研究)の基本的方法論
https://note.com/hisanpan/n/n482fcde9ecbb

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