きせつや めばえさん

文 大川久乃
絵 加藤麻依子

会いたい人に会いに行くこと
行きたい場所に出かけていくことが
気軽にできない今。
それでも心は誰にも制限されることはありません。

だからこそ、誰かの流れにのるのではなく
誰かの言葉におどらされるのではなく
いつも以上に自分自身をとぎすませていたいと願います。
そのために情報の取り入れ方に気を払ったり、
寡黙になってみることも、あります。
わたしは自分の言葉さえにも
引っ張られることがあるので、
特に、今のような心がどうしても揺れがちなときなどは
寡黙であるほうが自分にやさしい。
揺れを眺めて、名付けずに。
言語化することをしばし待つのです。

季節は春。
今日も雨が降っていますね。
あと数日で二十四節季は「穀雨」を刻みます。
初夏へと向かうまばゆい季節です。

家族と自然を求めてごく近所へでも出ることは
心がけてしています。
そのような先で、すれ違う人があるときは
ちいさく会釈をしてみたり
ほほえみ顔でうつむいていたりします。
共感を勝手に感じているにすぎないのですが
小さく喜んでいます。
お互いに幼子を連れていたりすればなおのこと。
一緒ですね、頑張りましょうね、と心で伝えたい。

自然は今日もめぐっています。
雲が空を覆っていても太陽はのぼっている。
月は満ち欠けを、海は寄せては返しを休みません。

揺れて当然。
誰かを思いながら
誰かに思われながら
自分のいのちと大切ないのちを今日も育てよう。

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「きせつやめばえさん」と「自然工房めばえ」のこと。

わたしの住む町には「井」でつながるコミュニティがあります。
今年の「井のいち」中止となってしまいました。
井のお仲間のおひとつ「自然工房めばえ」さん。
https://www.s-mebae.com/

めばえの前拠点、わたしの住まいから近かったため
まだよちよち歩きだった長男を連れてよく通いました。
季節の花々やハーブが植えられた美しいお庭でぼーっとするのは
めまぐるしい時のなかでは何よりの癒し。
代表のうんのさんはじめスタッフや利用者さんたちの
やさしい「目」や「手」に
ゆるやかに長男をも見守ってもらえている安心感のなか
手作業をすることも楽しく、力がわいてくるものでした。

そんなめばえさんでお話会をさせていただいたときが
この作品「きせつやめばえさん」の初披露でしたが
あれはいったい何年前のことだったでしょう。

今、自宅で過ごす時間が多くなっていますね。
先が見えない不安はありますが、共に寄り添いあえますように。
ご覧いただき楽しんでもらえたら嬉しいです。
人形は、イラストレーターの加藤麻依子さん作。

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