【5】転勤族であったことは確かにわたしの人生の一部だった。けれど。
「ちょっと長くなるけどいいですか?」
自己紹介で順番がまわってきたとき、わたしの最初のひとことはいつも決まってこの言葉。長くなるのは、"出身地"の話だ。
"出生地"となるとそれはもう確実に世界で1ヶ所しかないのだけれど、"出身地"となると途端に話は難しくなる。なぜなら、選べないのだ、わたしは。転勤族の娘として過去にいろんな街に住んできた。その街たちをカルタにして目の前に並べられて、さあ、あなたの出身地を1つ選びなさい、なんて言われた日には、きっと選ぶことができずに日が暮れ