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【5】転勤族であったことは確かにわたしの人生の一部だった。けれど。

「ちょっと長くなるけどいいですか?」

自己紹介で順番がまわってきたとき、わたしの最初のひとことはいつも決まってこの言葉。長くなるのは、"出身地"の話だ。

"出生地"となるとそれはもう確実に世界で1ヶ所しかないのだけれど、"出身地"となると途端に話は難しくなる。なぜなら、選べないのだ、わたしは。転勤族の娘として過去にいろんな街に住んできた。その街たちをカルタにして目の前に並べられて、さあ、あなたの出身地を1つ選びなさい、なんて言われた日には、きっと選ぶことができずに日が暮れる。なのでわたしは自己紹介のたびに生まれた場所から今までを辿ることになり、結果、自己紹介が長くなる。聞いてくれるみんなの優しさで生きている、ほんとうに。

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わたしの父は公務員だった。

そしてわたしは、生まれた時から転勤族だった。

多い人だと毎年のように転勤している人もいるけれど、我が家は早くて1年、長くて3年程度に1回ぐらいのペースでの転勤。大学生になってひとり暮らしをするまで、「ずっとこの街にいるわけではない」という事実はわたしの人生にごくごく当たり前に存在していた。当たり前すぎて、「転勤族って大変だね」とか「すごいね」と言われても、何がどう大変で何がどうすごいのか、よくわからないぐらいに。

けれど今回、sanmariちゃんから「転勤族育ちのおいしいトコロ」というお題をもらったので、これを機に、ちょっと考えてみよっかな。

まずはそうだなあ、いろんな街に住む機会があったのは、いい経験だったな、と思う。わりと都会な街もあれば、1時間に1本しか電車が走らないような山の中の街もあったし、関東も関西も、国内も国外も経験することができた。だからなのかどうなのか、旅をしていてもどこの街でもわりと馴染むのが早い気がしているし、きっとどこの街でも住めると思っている。

そして、方言がうつるのが異様に速い。3泊ぐらいすればイントネーションがうつってしまうし、1ヶ月住めば地元の人に間違われる。個人的に方言はその土地との距離感がぐっと縮まる気がしていて、話せるとちょっと嬉しい。

あとはそうだなあ。生まれ育った「地元」と呼べるような街はないけれど、「帰ってきたなあ」と思える街はあちこちにある。ホーム感を感じられる場所があるというのは、なんとなく安心感。あ、それで言うとあれだな、甲子園や高校サッカーは応援したいチームがいっぱいあるから(1度でも住んだことがある都道府県は応援対象)、わりと最後まで楽しい。

あとあれだ、自己紹介の時にわりとインパクトがあるので覚えてもらいやすいのは得だな。特にわたしの場合は生まれがコロンビアなので、ええ?!となって、随分とこれまで恩恵にあずかってきた。

あ、自己紹介と言えば、初対面の人でも人見知りをせずに話せるようになったのは、転校を何度か経験したからかもしれない。「はじめまして慣れ」をしているのだと思う、たぶん。

ちなみに、転校先の学校でどれだけ早くその場所の空気になじめるかは、わたしにとっては重要事項だったし、生存戦略だった。クラスの中心は誰なのか、何がトレンドなのか、何が受け入れられて、何はNGなのか。自分はこの中でどんな立ち位置でいればいいのか。そんなことにずっとアンテナを張っていた。結果、いい影響としては、大人になってからもチームや組織の中での自分の役割やポジションを察せるようになったように思う。が、裏を返すと、変に空気を読んで、場の空気に自然と自分を合わせようとする癖がついてしまった、という面もあるので、これはそうだな、一概にはおいしいとは言えないかもしれない。

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ここまで書いてみてふと思ったことは、自分は転勤族として育ったし、そのことはわたしという人間を形作る大きな大きな要素であるのは間違いない事実だし、そのことによって得られなかったものもあるけれど(地元とか幼馴染とか)圧倒的に得たもののほうが多いし、両親には本当に感謝している、けれど、とはいえそれはたぶん、わたしの人生の第1章的なことであって、過去の話。これからのわたしは「転勤族」という肩書とは別のところで自分の人生を形成していかないとな、ということだ。

そういう意味では、去年、オンラインコミュニティ #旅と写真と文章と に出会えたことはとても大きかった。

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ずっと、もう何年もずっと、打ち込める何かがあるわけでもなく、交友関係は大学時代の友達と会社の人たち、1日が会社と自宅の往復で終わっていたわたしの日々に、彩りをもたらしてくれた。旅はもともと好きだったけれど、より一層、積極的に旅に出るようになったし、写真を撮ることにすっかりはまって今では休日はいつもカメラと一緒だし、こうして文章を綴ったりもして。そして何より、大好きな人たちがたくさんできた。

直接会ったことがあるメンバーも、まだ会ったことのないメンバーも、きれいごとではなく本当に、大好きで、いとおしいと思える人たちが、全国に、世界中に、できた。30歳を過ぎて、こんな出会いがあるなんて、ね。主宰の伊佐さんには、感謝してもしきれない。

転勤族だった第1章。ぽっかりと浮いた第2章。そして #旅と写真と文章と に出会って始まったわたしの第3章。これからの未来が、楽しみでしかたない。

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次回のnoteは、あおいろちゃん にお願いしようかな。かつて住んだ街ではないけれど、結婚してだんなの実家が札幌で、結果本籍地が札幌になって、帰る場所がまた1つ増えたのだけれど、その札幌出身なのが、あおいろちゃん。

お題は…「ふるさと」でお願いします★


#旅と写真と文章と #交換日記


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