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【2024年2月】読んだもの記録

週に1冊(ひと月に4冊くらい)は本を読む宣言、今月は達成できました。
ネタバレにならない程度に少しずつ感想を。


伊坂幸太郎『重力ピエロ』

読み始め:2月2日 読み終わり:2月3日

「春が二階から落ちてきた」という有名な出だし、あれ、この作品だったんだ。

結末に触れないように感想を綴るって意外と難しいな。高校時代の生物基礎の授業を思い出して若干懐かしい気持ちになってしまったっていうのは、アウト??セーフな気がする。

春が背負っている過去と比べたら私の中の遺伝に対する仄暗い思いなんてちっぽけなものだけれど、どこか少し重ね合わせてしまって痛みを理解したような気持ちになってしまったこと、誰に、ということはないけど、許してほしい。そんなことを言っておきながらなんだけれども、その後の春の行動についてはなんだかなあ、と思ってしまうところもあったり。なんだこの抽象的すぎる感想。

胸に残った言葉ナンバーワンは、「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」

瀬尾まいこ『夜明けのすべて』

読み始め・読み終わり:2月19日

主役はPMSを持つ藤沢さんと、パニック障害を持つ山添君。作中では特に大事件が起きるわけではなくて、2人と職場の人たちとの関わり合いがゆったりと進んでいく。

とてつもなくありきたりな感想を述べるとすると、「あたたかい話だった!!!!」これに尽きる。「温かい」と言うより「あたたかい」。

この作品、実写映画化されて、全国で上映されていますよね。元々藤沢さん役を務める萌音ちゃんが好きなのもあって観てみたいと思っているのだけれど、山添君ほどではないけれどもパニック発作持ちの私には映画館へ足を運ぶことはいささかハードルが高い。劇場で舞台を見ることは大好きなのにどうして映画館はダメなのか……というのは私が1番教えてほしいこと。かれこれ5年くらい抱え続けている疑問である。

話が逸れてしまったけれど、この作品には私と同じく観たいのに観られない寂しさを抱いている人たちが他の映画以上に多くいるはずだと思っている。気長にDVD化かサブスク配信の決定を待つしかないのだけれど。映画館に足を運んでこの作品に触れることができていろいろな生きづらさがあることを知った人たちが、少しでもあたたかさを伝播させていくことができれば素敵だな。

あさのあつこ『バッテリー』

読み始め:2月19日 読み終わり:2月20日

私の記憶が確かであれば、小学生の頃から読む読む詐欺をしていた。9年くらいは引きずったであろう「いつか読む」をようやく実現。

主人公は小学校を卒業したばかりの男の子。若い。若いと言うより、幼い。自分がその年頃だったときのことを思い返すと、自分は十分に自立していると思い上がりも甚だしい意識を持っていた気がするのだけれど、今ならわかる。12歳なんて、まだまだ、子どもだ。

巧はひたすらに思春期の男の子だ。周りの大人に対する不満を上手く言葉にできずに、定期的に不機嫌な態度をとってしまう。彼の母はそんな彼よりも、病弱な弟の青波のことばかり気に掛ける。私は巧に感情移入できる年齢ではなくなってしまったけれど、かと言って完全にお母さん側に回れるわけでもなく、ただ「ああ、あるよなあ、こういうこと」と感じるのみだった。数年後かに読み返したら抱く感情が変わったりするかな。

読み終わってから、この作品が全6巻あることを知った。個人的に1巻の巧たちの将来がぼんやりとしたままの終わり方で満足してしまったから、少なくともしばらくの間は続編は読まなくても良いかなあと思っている。

知念実希人『仮面病棟』

読み始め・読み終わり:2月20日

『重力ピエロ』に続きピエロの出てくる作品を選んだのはただの偶然です。ミステリーを読んだの、よくよく考えてみれば結構久しぶりかもしれない。知念先生作品を読んだのは『優しい死神の飼い方』に続き2冊目かな??

なんだか好きになれない登場人物ばかりだな……と思ってしまったのは多分『夜明けのすべて』を読んだばかりだったせい。途中でなんとなく筋は読めてしまったものの、テンポの良さが幸いしてあっという間に読み終えてしまった。医療ミステリーってこれまであまり馴染みがなかったのだけれど、これを機にもう少し開拓してみたくなった。次は『時限病棟』を読みたい。

加藤シゲアキ『ピンクとグレー』

読み始め・読み終わり:2月24日

作者とタイトルを聞いたことがあるだけで、内容については全く知らなかったこの本。図書館でふと目にとまったから借りてみた。まず各章のタイトルが飲み物で統一されているのがお洒落。よくある手法ではあるとは思うのだけれど、年を重ねるにつれジュースがアルコールへと変化していくのが、仲良しだったリバちゃんとごっちの住む世界が少しずつ変わっていくのと相まってほろ苦く感じられる。

加藤さん、現役アイドルであるだけあって、芸能界に身を置くことになったごっちの苦悩の描写が生々しかった。ラストの描写、最初は驚いたし自分の解釈が合っているのか少々不安なのだけれど、リバちゃんが自らごっちの軌跡を辿っていったことを考えると納得のいく結末な気がする。

1つだけ、本編とは関係がないのだけれど気になったこと。麺つゆで味付けされたおかずを「手抜きの味」(違う言い方だったかも、ニュアンスです) と表現していたこと。麺つゆって便利なんだよ〜〜別に手抜きだって味がするのならそれで良いじゃないか。

有川浩『塩の街』

読み始め:2月24日 読み終わり:2月25日

「自衛隊3部作」という字面のイメージが強かったせいか、読み進めるにつれて強くなっていく恋愛色にまず「これ……恋愛もの……??」と少々面食らう。これがデビュー作なのか、という驚きはあったものの、糖度の高めな恋愛ものが得意ではない私には正直に言うと少々しんどい展開だった。

身体が塩化していく奇病「塩害」に侵され人々が混乱に陥り徐々に崩壊していく世界は、現実離れしていながらもコロナ禍を経た現代の人間からするとどこかリアルに感じられる。不気味だった。

正直なところ(と前置きするのもこの短時間でもう2度目だけれど)、私は真奈にはこれっぽっちも共感も同情もできなかったし、彼女の秋庭への想いや2人の関係性にときめくことは一切なかった。年齢は近いはずなのに。

「愛は世界なんか救わないよ。賭けてもいい。愛なんてね、関わった当事者たちしか救わないんだよ。救われるのは当事者たちが取捨選択した結果の対象さ」

有川浩, 塩の街, 株式会社KADOKAWA, 2010, p.238

入江のこの言葉は真理だと思う。愛は世界なんか救わない。私もそう思っている。でもそれと同時に、私は愛の何を知っているのか、と自問してしまう。私は多分、何も知らない。愛のことなんてなんにもわからない。だから真奈の想いが全く理解できなかったのだけれど、これは私がいつか愛を育んだ暁には気持ちが変わったりするのだろうか。……私、自分の性格的に恋愛には絶対不向きだと思っているしそもそもしたくないんだけどなあ。

物語的には秋庭のおかげで世界は救われたけれど、もし仮に秋庭が真奈の言葉を聞き入れたとして世界が破滅に向かったとしたら、私がその世界の住人であれば「たかが1組のカップルのために世界を犠牲にしやがって!!!!」って怒り狂うと思う。人の愛なんて知ったこっちゃねえよ。でもそんなことを言う権利は私にはないんだよね、だって当事者じゃないから。わかってはいるんだけど、なんだかすっきりしない。

秋庭と真奈、2人の恋物語を純粋に楽しむためのお話なんだと思った。私はまだそういう境地に至れるまでにはなっていないっぽい。ガキなんだなまだ、多分。

私は入江が好きです。秋庭と入江の高校時代のエピソードが好きでした。


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