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借金によって回る経済の仕組み

只今、noteで「お金について考えていること」というお題でコンテストを行っているようですので、それについて書いてみたいと思います。

このコンテストは、日本証券業協会とnoteがコラボしているものらしいので、投資などの個人的な稼ぎ方を主に対象にしていると考えられるのですが、そんなことは気にせず好きに書いていきます。

信用創造による競争ゲーム

信用創造とは

市場に出回っているほとんどのお金は信用創造、すなわち銀行の貸し付けから生まれています。

ほとんどの国で中央銀行が創造している紙幣は通貨供給量の10%にも満たない。9割は一般の銀行が「A会社に100万円の貸出」と帳簿に記入する、あるいはコンピュータに打ち込むことによって生み出されているのである。

出典:ビル・トッテン『アングロサクソン資本主義の正体』、東洋経済新報社、2010年、68貢

信用創造とは、貸し付けによって銀行が預金を生み出すことを指します。

例えば、銀行に誰かが100万円を預金したとします。

法定準備率が10%の場合、銀行は10万円の支払準備金を残し、誰かに90万円を貸し付けることができます。

貸し付けられたお金は預金され、銀行はその90万円の預金のうち9万円を残し、また誰かに81万円を貸し付けることができます。

これを繰り返すと、銀行は100万円を元手に約1000万円を貸し出すことができるようになります。

これが信用創造と言われるものです。

資金を借りた人はその資金を使って新しい事業を始めたり、何かを購入したりするでしょうから、誰かの借入金は誰かの資産になります。

これを端的に表せば、誰かの借金は誰かの資産ということが言えます。

しかし、個人や法人が銀行から借り入れた資金はいずれ返済しなければならないため、最終的にはマネーサプライ(通貨供給量)は減少します。

マネーサプライを減少させないためには、銀行は新たにお金を貸し付けなければなりません。

そのため、新たな貸し付けを生み出すような経済成長が必須となります。

このような仕組みは、設備投資が積極的に起こっていた時代においては、銀行が信用創造で資金を創って巨額な設備投資を支えることができるという点で合理的であったと、松尾匡は指摘しています。(松尾他 2021,156-159貢)


競争ゲームの仕組み

では、現在の先進国のように経済成長率が伸び悩み、新たな貸し付けが生まれなくなった場合、どうなるのでしょうか。

銀行があなたに10万ドルの住宅ローンを貸すとき、銀行は元金を口座に入れる。しかし、銀行は今後20年後やそこらのうちに合計20万ドルが帰ってくることを同時に期待している。もし、その額を返せないならば、あなたは家を失うことになるだろう。あなたの銀行は利子をつくらない。銀行はただ、あなたに元金をもたせ、その上乗せ10万ドルを誰か他人から獲得するための戦いに送り込むだけなのだ。他の銀行も同じことをしており、このシステムであなたが10万ドルを獲得するためには、誰かが確実に破産するようになっている。簡単に言えば、あなたが利子を払うときに、誰かの元金を使っていることになる。〔中略)現在の金融システムは私たちに借金を負わせ、お互いに競争させることになっている。

出典:ベルナルド・リエタ―『マネー崩壊』、日本経済評論社、2000年、69貢(太字は引用者による)

新たな貸し付けが生まれる限りにおいて、債務者は新たな貸し付けによって増加したマネーサプライから利子を返済できます。

しかし、経済成長が止まることで新たな貸し付けが生まれなくなると、マネーサプライが減少し、お金の奪い合いが発生するのです。

社会に流通するお金の80~90%が「貸し付け」によってつくられたお金であり、貸し付けは利子を付けて返済しなければならない。そのため、経済は利子の分だけ成長する必要があると考えられている。経済全体からみれば、返済金額は貸付金額をつねに上回る。その上回る金額―つまり利子分を稼ぎ出さなければならないのである。

出典:ビル・トッテン『アングロサクソン資本主義の正体』、東洋経済新報社、2010年、124貢

日本の経済成長率はと言うと、以下のようになっています。

出典:世界経済のネタ帳「日本の経済成長率の推移

これを見る限り明確な結論付けはできませんが、全国銀行協会の資料によると、「コロナ禍」において増加した貸出金が、2021年3月あたりから減少傾向に転じています。

それを踏まえるならば、これからマネーサプライが減少し、利子返済のための競争がさらに激しくなると考えられます。


国債は税金によって返済しなければならないか?

「国債は国民の資産である」というMMTに基づいた主張があります。

これは一見、借金=資産であるという矛盾した主張のように思えますが、先ほどの信用創造の話を聞いた人ならば、両者は相反するものではないとわかると思います。

国債においても、国が国債発行によって得られた資金を使って公共事業に投資することで、投資されたお金は誰かの資産になります。

換言すれば、政府の赤字は民間の黒字です。

NHKによると、「国の借金」は1216兆円余で、財政状況は厳しいということになっています。

では、国債は税金によって返済しなければならないのでしょうか?

先述のように、政府の赤字は民間の黒字であるため、政府が黒字化を目指して税金を徴収するならば、民間はより貧しくなります。

ですので、国債は税金で返すべきものではありません。

財務省によると、国債の48.2%はすでに日本銀行によって所有されていますので、それに関しては返済する必要はないと考えられます。

もしそれ以外の国債を返済するならば、中央銀行に市中銀行あるいは保険会社の国債を買い取らせればいいということになります。

日本銀行の出資者の55%は政府であり、株主総会も出資者の議決権も存在しない。また、日本銀行の最高意思決定機関として政策委員会(総裁、副総裁、審議委員)が設置されているが、その人事は国会の承認を得て内閣が任命することになっている。これらは日本銀行が政府の委託を受けている機関であり、政府の一部門であることを示している。

出典:松尾匡、井上智洋、高橋真矢『資本主義から脱却せよ』、光文社、2021年、64貢

また、日本の対外純資産額が大きいという点や、自国通貨建て国債であるという点から、財政破綻(デフォルト)の可能性はないと考えられています。

したがって、デフレ下において政府のやるべきことはプライマリーバランスの黒字化ではなく、積極的な財政支出ということになります。

すなわち、貸し付けが起らない状況において、誰かが借金を負わなければマネーサプライが減少しデフレが継続するような状況において、政府が国債を発行して(借金をして)マネーサプライを増やすべきだということです。


消費税について

話は少しそれますが、消費税についても意見を述べておきたいと思います。

MMTを支持する人々が消費税ゼロや減税を訴えることがあり、例えば、れいわ新選組は消費税撤廃を掲げています。

しかし、昨今の状況を考慮するならば、MMTの是非に関わらず、消費税は減税あるいは一時的に撤廃するべきだと考えられます。

なぜなら、消費税を上げることで、全体の税収が下がるという事例が十分にあり得るからです。

三橋貴明は『あなたの常識を論破する経済学』において、次のように指摘しています。

1997年に橋本政権が増税(消費税率アップ)や公共投資削減などの緊急財政を開始したが、その後の日本の名目GDPは見事なマイナス成長に陥ってしまった。結果的に、政府の租税収入は減少したのである。確かに、消費税収入は増えたのだが、それ以上に所得税や法人税が激減し、トータルでは4兆円を超える減収になってしまった。

出典:三橋貴明『あなた常識を論破する経済学』、経済界新書、2016年、53貢、(太字は引用者による)
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出典:財務省ウェブサイト

財務省が公開しているグラフを見てもわかるように、1997年から消費税による税収が増加し、それと同時に上昇傾向にあった所得税と法人税による税収が減少しています。

結果として、4兆円を超える減収になったと言われています。

つまり、財政黒字化を目的としたはずの緊縮財政や消費税増税を行うことで経済が悪化し、かえって財政が赤字化、すなわち税収が減少してしまうのです。

それに加えて、消費税を増税すべきでない理由として、消費税は所得に関わらず支払わなければならないため、相対的に富裕層への負担は小さく、貧困層への負担は大きいという点が挙げられます。

そのため、消費税増税によって経済全体が悪化し、さらに個人的負担が増加することで、貧困層はより一層の困窮を強いられることになります。


おわりに

今回は経済に関しての所見を述べさせてもらいましたが、私も経済を専門にしているわけではないため、もしかすると間違いがあるかもしれません。

記事を執筆するにあたって細心の注意を払っているつもりですが、それについてはご容赦ください。

最後に参考文献をまとめますので、興味がある方は参考になさってください。

参考文献
ビル・トッテン『アングロサクソン資本主義の正体』、東洋経済新報社、2010年
ベルナルド・リエタ―『マネー崩壊』、日本経済評論社、2000年
松尾匡、井上智洋、高橋真矢『資本主義から脱却せよ』、光文社、2021年
三橋貴明『あなた常識を論破する経済学』、経済界新書、2016年

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