虹の波

花も月もない
チャコールグレーの霧の中
浮かんでは消える
虚ろな虹の波

寄せる記憶の塵
返す想いの欠片

時空の位相がずれて
重なった虹の隙間から
柔らかい手が現れて
頬に触れた

それは幼い頃の記憶
僅かに残った希望

天使のブランコのように
真夜中の漣のように
向こうとこちらを
いったりきたり

蓮の形の雲
そよぐおくれ毛

糸蜻蛉が
体を反ってデングリ返した
海の土が天に立ち上がり
ナカツクニがはじまる

ユズリハの島
霊宝の眠る山

僕は迷い風になり
瑠璃石の尾根を
滑り上がる
それは虹の波

甘い予感
ペテルギウスの瞬き

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