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営業未経験から大手外資系SaaSベンダーでトップの営業成績を残すために大切にしていたコト

こんにちは、山梨です。
本日はAdobe(Marketo)時代の話を書きたいと思います。

これまでのキャリアでは、マーケティング&インサイドセールスという営業プロセスでは前工程にいることが多かったのですが、BtoBでマーケティングの専門性を付けるには営業経験が必須だと思い、前職で1年間程、マーケティングオートメーションの営業(Marketo Engage)を経験しました。

苦労したことも多かったのですが、最終的にはチーム10名程のなかで、2020年はトップの成績で着地しました。

マーケティングの際は、営業や広告データの集計・分析、確率論的な思考で改善施策を考案したり、施策を実行して効果検証する日々を繰り返していたのですが、営業は目の前にいるお客様にいかに意思決定をしてもらうか、という思考になるため、自分自身としては、すごくステップアップに繋がった良い経験になったと思います。

営業未経験から営業を始めたなかでもトップ成績で着地できたわけなのですが、そのなかで自分が大切にしていたことを書いてみたいと思います。

▼この記事をオススメしたい人
・最短で営業成果を出すための行動の型、考え方を身につけたい
・自社製品に自信を持っており、製品価値を最大限お客様に提供したい
・価格(安さ)ではなく価値で競合製品と勝負する商材を扱っている

契約に至るまでのプロセスおさらい

営業の流れをイメージしてもらうため、契約に至るまでのプロセスについて、あらためて、おさらいします。

私もマーケターとしてツールを導入する側だったのですが、大枠このようなプロセスだったかと思います。

▼契約までに発⽣する顧客の動き
調査->ベンダー接触->方針決定->比較検討->起案資料->起案・説得->法務確認->署名

まず大前提で考えていたことは、お客様は、様々な情報をネット検索で調べたり、各ベンダーのインサイドセールスから仕入れたりと、営業担当が顧客と話す時点で、既に、顧客独⾃の情報解釈によりプロダクトへの偏⾒・価値観・⽅針がある状態から営業の活動はスタートするということでした。

そうなると、1st Visit(初回訪問)のパフォーマンスがその後の受注率や商談確度を大きく左右するものになります。

いかに顧客の状態や本音を理解し、事前の製品理解度と解釈をすり合わせながら、自社製品が最大限の価値を提供するための土俵づくりを行うかなど、営業として意識しているポイントがいくつかありますので、具体的にご紹介します。

商談における重要要素の大半は1st Visitに集約される

私的な考え方ですが、受注までの営業プロセスにおいて、重要な要素は、1st Visitに集約されていると考えています。1st Visitできちんとやるべきことをやっておけば、その後の商談リスクを軽減し、コントロールしやすい状態になります。

一方、クロージング間際の案件ばかりに注力し、1st Visitをおろそかにする営業は、結果的にスリップする(翌月に契約がずれる)、失注することが多発すると教えられました。

▼営業1年目で何度も教えられたコト
1st Visitをおろそかにする行為は、「今」の⾃分を⽢やかせる⼀⽅で、「未来」の⾃分のクビをしめる」

1st Visitに含まれる重要要素

具体的な要素を出すとすれば、以下になるかと思います。

・顧客の現状把握、システムに求める要件整理
・信頼関係の構築や営業としての介在価値を創出
・自社製品が最大限価値を発揮するための土俵をづくり
・今後のスケジュール・ネクストの合意

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このような要素を実現するため、1st Visitで実施していたことは以下になります。

1. 本商談の期待値(目的・ゴール)の認識合わせをする
2. 顧客のビジネス⽬標・課題・問題を確認する
3. 類似課題・問題を解決した事例などを紹介する
4. 課題・問題を正しく共感して、解決策を同意する
 ※望まれている場合には、会社の紹介をする

1. 本商談の期待値(目的・ゴール)の認識合わせをする

商談の進め方として、アイスブレイク目的の雑談、会社紹介という流れで始める方は多いかと思いますが、私の場合は、(自身のキャラクターもあり)アイスブレイクはほぼしていなかったです。
最初にやることとしては、本時間の期待値、次のステップとして何を考えていて、本時間では何を得たいのかをすり合わせます。

起案資料を作成して上司に提出するのか、具体的なROIをシミュレーションするのかなど、担当者の考えているネクストステップに合わせた情報提供やディスカッションを行うことで、闇雲に時間を浪費するのではなく、商談を確実に前に進めるためのネクストを切りやすくします。

2. 顧客のビジネス目標・課題・問題を確認する

比較検討における選定軸や期待する要件だけでなく、システムやツールは一旦抜きにした、ビジネスゴールや課題感をお伺いします。

システム中心の話になってしまうと「使いづらい」「データ連携できない」などの粒度の細かい問題点の羅列になってしまう事が多いです。そうなると、ツールベンダーとしてどっちが優れているか、という比較にしかならず、機能でしか差別化できなかったり、提案の価格が安くなってしまったりと、価値提供がしづらくなります。

自分たちが提供できるソリューションの幅や、価値を最大化するために、商談相手の会社における役割やミッション、それを達成するための課題を前提に貢献できる領域を見つけていきます。

3. (GIVE)類似課題・問題を解決した事例などを紹介する

過去の取り組みや事例・実績を伝えるこで、「できます」だけの営業トークに比べて説得力が格段に増します。

また、顧客自身が自分たちの課題を整理できていないケースも多いため、他社事例を取り上げた課題を伝えることで、潜在的な課題を浮き彫りにしたり、具体的な施策がイメージしすくなると思います。

4. 課題・問題を正しく共感して、解決策を同意する

ぼんやりとしていた課題・問題が具体的な顧客事例をもとにを整理することができます。あとは、優先順位の確認です。ビジネスにおいて課題・問題をあげていったら際限なく出てくるので何を優先的に解決するか、またその課題が解決されることで顧客にとってどのような価値がもたらされるかを確認します。

例えば、従業員○人以上雇うより生産性の高い営業組織を創ることができる、仮に受注率が○%上がって☓件の受注が増えたらペイする、などの投資に対する判断基準をここで顧客とすり合わせてました。

1st Visit前の事前準備

このような重要要素を実行するため、1st Visit前の事前準備は徹底して行っていました。

必ず、2営業日前までに以下の項目を言語化し、SalesforceなどのSFAでチーム全体に共有しておりました。
*チーム全体に共有することで、事前準備のマンネリ化を防止し、常に上司やチームメンバーからフィードバックをもらえる環境にしていました。

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その他にも、1st Visitを成功させるために重要なポイントが3つあると思います。

ポイント1. ⼈は⼈から買う

Value Sellingの研修を受けたことがある方は聞いたことがあるかもしれないですが、「⼈は感情的に意思決定をして論理的に理由付けをする」と言われています。

提案された製品がどんなに良かったとして、営業担当と長く関わることが難しそう、一方的に話をされて不快になった、という気持ちから購入検討を断念したことがある方もいると思います。

論理的に企業や商品の説明ができ、機能面や価格面について納得のいく説明が聞けることは前提なのですが、それだけでなく、「感情的に嫌われないこと」もすごく重要です。

どういう人が嫌われるのか

顧客の話をあまり聞かずに一方的に営業を行う人、顧客の業務や業界を理解していない、押しが強すぎる人が嫌われる傾向にあるようです。

話を聞かない     27%
業務を理解していない 25%
押しが強すぎる    19%
反応が遅い      17%
クチ約束が多い    12%
*Forum Corp調べ(ボストン本社の組織開発・コンサルティング企業)

当たり前のようですが、自分たちの製品を買ってもらうための最初の1歩は、顧客に「価値を感じてもらう」のではなく、「嫌われないこと」「嫌われる行動を避けること」です。

基礎・基本は経験を積めば積む程おろそかになりがちですが、私に営業を教えてくれた当時の上司は誰よりも基礎・基本を徹底、体現していました。

ポイント2. 提供価値を最大化するための差別化

差別化に批判的な意見をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、私の場合は、「自社製品が提供できる価値がお客様の成功に繋がる唯一のものになる」ということを自分が納得できるまで、お客様の課題と向きました。

表面的な課題のままでは、他社製品でも同様のソリューションを提供することは容易ですし、その状態では「自社だからこそ貢献できる」領域が制限されます。

お客様に導入検討をスムーズに進めていただくため、お客様目線で他社製品ではなく自社製品を撰ぶ理由を明確にする。そのために、以下2つのことを大切にしていました。

1. 顧客の問題に関する視点を⾃社だけが解決策を提供できるものにする
2. 自社(自分)だけが顧客に解決策を提供できる唯⼀の存在であることに同意(=共感)してもらう

特に、価格ではなく価値で勝負するような商材を扱っている営業の方は、必須の要素になるのではないでしょうか。また、これまでの経験上、差別化(=お客様に価値を提供できる唯一の存在であることを認識)されないまま進む商談は⾼確率で失注すると思っています。

差別化のための4つのステップとは

差別化するための領域としては、主に次の5つの領域があります。

1. 製品やサービスの価値に関するもの
2. 営業の提案力や知見の価値など顧客体験によって差別化を図る
3. リスクが減るようなブランド価値を提案
4. 買いやすさなどの契約条件で差別化を図る
5. 価格で差別化を図る

商材によっては、「5. 価格で差別化を図る」ができない場合もあるかと思います。その場合は、5以外で大きな差別化を図る必要があり、それが顧客に「差別化である」と共感してもらうようにすることが必要です。

私が行っていた、価格ではなく価値で差別化するための4つのステップとトーク例を参考までにご紹介いたします。

Step1 ビジネス課題の確認

製品ありきではなく、ビジネス上の課題、現状の問題点をできるだけ具体的にヒアリング、商談相手に合意してもらえるように一緒に整理をしていきます。

例)よく他社様から☓☓☓という課題のご相談を受けるため、貴社も同様の課題をお持ちなのではないかと勝手ながら推察していたのですが、いかがでしょうか。

Step2 自社が提供できるソリューション・価値の整理

「できます」だけでなく納得感を持ってもらえるような同業界、もしくは同様の課題を解決した事例を紹介していきます。

また紹介だけで終わらず、その情報やソリューションが顧客にとって価値のあるものになっているかを1つ1つ確認していました。

例)以上の理由(事例)から貴社の✗✗✗という課題に対して貢献できると思ったのですが、所感や実現イメージをお伺いできますでしょうか。

Step3 顧客と自分の解釈を確認する戦略的質問

一方的に伝えるだけでなく、相手の解釈を確認する質問を投げかけます。

例)他社様の提案も受けられたかと思いますが、他社様の提案内容と比べて率直なご感想やご意見をお伺いできますでしょうか

Step4 差別化可能な価値の共感と意思決定の要素を確認

差別化に共感いただけたのであれば、その上で何が意思決定において必要かを確認する質問に入ります。

例)○○という点において弊社を評価いただきありがとうございます。今後の検討を進める上で不明確な要素や懸念点をお伺いできますでしょうか。
*顧客との関係次第ですが「では、✗✗に対してご納得がいく説明ができれば弊社ソリューションを前向きに検討いただくことは可能でしょうか。」ということも確認してました。

ポイント3. MCP(Mutual Close Plan)の設計と提示

顧客と契約を締結するまでの営業のクロージングプランがとても重要です。前職では、​MCP(Mutual Close Plan)​と呼ばれてました。

MCP(Mutual Close Plan)とは
契約を締結するまでのクロージングスケジュールとして、自社と顧客の双方で、契約までに必要なスケジュールやアクションをリスト化したものがMCP(Mutual Close Plan)です。
具体的にテキスト化、リスト化することによって、顧客と一緒に受注から問題解決までをゴールにして計画を立てる点が特徴です。

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MCP(Mutual Close Plan)のサンプル

MCPの話をすると、「そんな一方的な営業の考え方を顧客に押し付けることはしたくない」、といったような声をときどき聞きますが、実際、私が何度もMCPをお客様と一緒に作成してきたなかで、お客様に嫌われたことは一切ないです。

むしろ、MCPは営業だけでなくお客様にとってもメリットがあり、営業プロセスにおいて、お客様の購買体験を向上させることができる、とても重要な要素だと感じています。

MCPのメリットとは

大きく、以下3つです。

1. ゴールの共通認識を持ち、顧客と同じ目線で会話できる
2. 期限を決めることで「遅延や失注リスク」を顧客と考えられる
3. 複数の部署が決裁に絡む場合、事前にコミュニケーションを取りながら、余裕を持って進めることができる

MCPの最大のメリットは、顧客と同じ目線で顧客の成功をゴールにしたプランの組み立てができることです。

売る側と買う側というテーブルを挟んだ関係ではなく、同じ会社の同じチームとして、成功に向けたスムーズなプロジェクト進行とリスク回避を考えることができます。

また、期限を明確に決めることで、受注の障害となるような懸念材料も事前に確認でき、遅延や失注リスクも軽減できます。

正しいMCPは受注精度を劇的に変える

1st Visitから計画を開始

MCPを設定するにあたっては、既に1st Visitから始まっていることを念頭に置く必要があります。初回から受注、顧客の問題解決を計画立てて行うことが要件の1つです。

月末に焦ってMCP設定しにいったり、急に連絡頻度が高くなると嫌われるだけなので、初回訪問から計画をスタートするようにしていました。商談の初期段階からしっかりとプランを合意することで、「この営業しっかりしているな」という印象を持っていただくことも多かったです。

⼝頭ではなくドキュメント(テキスト)化

プランは絵に描いた餅では意味がないため、口約束ではなく、必ずテキスト化してメールや資料に追加することで、顧客の行動動機にしていました。明文化することで、認識齟齬を防止し、かつ、エビデンスとしての重みを付け効果もありました。

重み付けをすることで、自然と商談に関するリスクを顧客と一緒に考えられるようになります。例えば、法務チェックは1週間では終わらないので、先に注文書の雛形を法務に通しておきたい、セキュリティチェックはCIOの承認が必須なので、今週中にCIOとミーティング設定して根回しをしておくなど、顧客から契約に向けたリスクを積極的に共有いただき、かつリスク回避のための行動計画をすり合わせることができました。

自分と顧客で一緒に作成

あたり前ですがMCPは「Mutual Close Plan」なので一方通行ではなく双方の合意が必要なものになります。一度、テキスト化してお終いではなく、毎回の商談の一番最初にクローズプランのすり合わせをしたり、商談後のメールに合意したMCPを記載するなど、何度もすり合わせを行いました。

また重要だと思っていたことは、発注をゴールに作成しないことでした。発注はビジネスの課題解決やゴール達成に向けた単なるスタート地点のため、しっかりと顧客が実現したい世界観やビジネスゴールをすり合わせ、それに向けたアクションプランを双方の合意のもとに作っていきました。

本記事のまとめ

以下、最後に重要な要素を箇条書きで整理いたします。

1. 受注までの重要なパートは1st Visitに集約されている
2. 1st Visitをおろそかにする行為は、「今」の⾃分を⽢やかせる⼀⽅で、「未来」の⾃分のクビをしめる
3. ⼈は感情的に意思決定をして論理的に理由付けをする
4. 差別化されない価値のまま進む商談は⾼確率で失注する
5. 正しいMCPは受注精度を劇的に変える

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