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教職を愉しむ 授業を愉しむ

堀裕嗣のまえがき

こんにちは。堀裕嗣(ほり・ひろつぐ)です。宇野さんと一緒に「教職を愉しむ」ということについて、授業づくりを中心に考えてみました。

僕も宇野さんも三十年のキャリアを積んでいますから、それなりに楽しいことも苦しいことも経験してきました。その間、「学校教育の危機」が叫ばれたことは何度もありました。しかし、現在ほど僕ら現場の教師が「危機」を実感したことはありませんでした。これまでの危機は、学校が荒れているとか、子どもの学力が低下しているとか、学級崩壊が頻繁に起こっているとか、保護者クレームが増えているとか、指導力不足教員や不適格教員が増えているとか、いずれも教師が努力することによって乗り越えられると感じられるものでした。しかし現在の問題は、教師のなりてがいないという話なのです。これは僕ら現場人がいくら努力しても乗り越えられません。僕らの手の届く範囲外でのことです。これには参りました。

そんでもって、僕ら現場教師にできることは「教職の愉しさ」を語ることくらいだろうというわけです。おそらく編集者の依頼の意図もそういうことなんだろうと思います。十年前ならこんな本は成立し得なかっただろうとも思います。

でも、実際に書き始めてみて頭をもたげてきたのは、若者にわかりやすく教職の魅力を伝えるなんてことはできっこないという諦めと開き直りでした。教職ってそんなに単純なものじゃない。一時間の授業をつくるのにさえ、想定しなくてはならないことが無限にある。しかもその想定しなくてはならないことがすべて、こうすればこうなるという因果律に押し込めることができない複雑なものばかりなのです。こりゃ参ったと宇野さんと一緒に頭を抱えました。

もちろん表層的に書いてお茶を濁すことは可能です。でも、そんなものでは現状を打開することはできない。若者自身はシンプルで元気の出るものを求めているのかもしれませんが、そんなものをいくら知っても屁のつっぱりにもならない。ちゃんと語るしかないねという結論に達した次第です。だからもし教職に悩む初任の先生や教員採用試験を受けようかどうかと迷っている学生さんがこの本を読んだら、ここまでやらなくちゃいけないのかとかえって苦しくなるのかもしれません。それでも僕も宇野さんも教職を愉しんでいるという自覚はありますから、その愉しみ方を素直に正直に書くとこうなるのです。

本書が教職の在り方に悩む若手教師に、教職を志望する学生の皆さんに少しでも参考になるとしたら、それは望外の幸甚です。

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