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App Clipsとは? 【マーケター向けApp Clips完全活用ガイド】 ~あなたはまだ"App Clips"の潜在価値を知らない~ ※2020/9/29追記

■ はじめに
こんにちは!Repro Growth Marketerの稲田宙人(@HirotoInada)です。

先日のWWDCで発表された"App Clips"。メディアでも話題になっていたのでご存知の方も多いと思いますが、実際にイマイチ何ができるのかイメージが掴めていない人も少なくないんじゃないでしょうか?

また、メディアでは決済の簡易化の側面のみが大きく取り上げられており、他の活用シーンや、アプリ業界に及ぼす影響に関して触れられていない点に違和感を感じたので、今回はそれらをまとめて考察することにしました。
尚、今回の記事は技術的な内容ではなく、マーケター向けの完全活用ガイドになっています。

コンテンツ構成は以下の通りに進行します。(文章中は「だ」「である」口調)

1. AppClipsとは?

まずはそもそもの"App Clips"の概要からである。

■ 何ができるのか?
AppClipsを利用することにより、フルパッケージのアプリをダウンロードすることなく、アプリ機能の一部だけを利用することが可能になる。
仕組みとしてはGoogle Instant Appと同じだが、設計思想は逆。(本点は後で詳述する)

例えば、以下の例ではコーヒーショップアプリでトリガーを起点として、決済機能のみが搭載されたAppClipsが起動して、アプリをダウンロードすることなく決済まで完了することができる。

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Source:Developing a Great App Clip

■ どのように発動するのか?
AppClipsは各種トリガーをきっかけに起動する仕組みになっており、利用可能なトリガーは以下。

・NFCタグ
・QRコード
・Safari
・メッセージ
・マップ
・位置情報連動
・App Clips Code

尚、最後のAppClipsCodeに関しては、2020年後半に作成ツールがリリースされる予定。

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AppClipsは基本的に1つしか作成できないが、AdcvancedAppClipsを使用することでカスタムのAppClipsを作成することができる。

例1:フードポータルアプリでそれぞれの店舗でURLを生成
例2:レストランアプリで注文と予約で別にURLを生成

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Source:Configure and link your app clips

上記のアクションのカスタム化の他に、店舗ごとに違うApp Clipsを表示するということも可能。その場合は、トリガーURLの接頭辞以降を、店舗ごとのURLに変更することで実現ができる。

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Source:Configure and link your app clips

また、SafariのURLごとに出現するApp Clipsを変更することも可能になる。

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Source:Configure and link your app clips

例えば上図では、URL非登録ではメニューページでもデフォルトのAppClipsが出るが、URLを登録しておけばそのURLページで実行可能なタスクに合わせてAppClipsの内容を出し分けることが可能になる。

■ AppClipsとフルパッケージアプリの連携
フルパッケージアプリをダウンロードした場合は、AppClipsは置き換えられ、その後のトリガーではAppClipsではなくフルパッケージアプリが起動する。

逆に、フルパッケージをインストールしない場合は、一定期間経過後に自動的にAppClipsが消滅する(AppleのDemoでは数日間と記載あり)。

一定期間内に再度AppClipsを起動した場合は、ユーザーデータが保持される為、例えばコーヒーショップのAppClipsであれば、注文履歴を元におすすめ商品を表示するなどもできる。

また、フルパッケージとのデータ連携も可能であり、注文履歴などもシームレスにフルパッケージ版に踏襲される他、認証プロセスもスキップして利用を開始することもできるのが特徴。

■ AppClipsで推奨される仕様
AppClipsの原則としてフルパッケージアプリでサポートしていない機能をAppClipsで作成することはできない。これは、あくまでAppClipsはフルパッケージからの一部機能切り出しである必要性があるということを意味する。逆も然りで、AppClipsだけでは完了できないタスクで、フルパッケージアプリのダウンロードを促進するのは禁止事項。

また、AppClipsで提供する機能は極力シンプルであることが求められ、決済に関してはApple Pay・ユーザー認証に関してはSign in with Appleの使用が推奨される。
また、AppClipsはURLベースでの発動となる故に、AppClips内にAppClipsをシェアできる機能の実装が推奨される。以下はメッセージでシェアされたAppClipsの例。

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Source:Configure and link your app clips

■ 位置情報・通知機能
①:通知機能

AppClips起動から8時間以内(初回起動ではなく各起動から)であれば任意のタイミングでプッシュ通知の送信が可能。ただし、プロモーション目的でプッシュ通知を使用するのは禁止。あくまで、AppClipsで達成できるタスクを完了していないユーザーのみに配信することが原則となる(義務ではない)。

この通知許諾はデフォルトではオンになるが、AppClipsの詳細をユーザーがタップすることで許諾の変更が可能になる。
通知までに必要な時間が8時間を超える商材(レンタカーの返却など)の場合は、通常のプッシュ通知許諾ダイアログを表示してプッシュ通知を送信することも可能であるが、AppClipsが起動している最中のみに促進が可能。

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Source:Streamline your app clip

②:位置情報
位置情報取得も通知と同じく、デフォルトで許諾はオンになるが、こちらもAppClipsの詳細をユーザーがタップすることで許諾の変更が可能。
尚、バックグラウンドでの位置情報取得は禁止。

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Source:Enabling Notifications in App Clips

■ AppClipsの構成要素
AppClipsでは以下4つの要素がカスタマイズが可能。

①:ヘッダー画像
・ヘッダー画像には視認性の観点から文字を使用しないことを推奨
・3000px × 2000pxのPNGかJPEGが使用可能

②:AppClipsのタイトル
・18文字制限
・アプリ名は左下に表示されるため、アプリ名ではなくビジネス名を記載すること(飲食チェーンであれば店名・マップであればスポット名)

③:AppClipsに関して説明するサブタイトル
・43文字制限

④:CTAの文言
・CTAは独自に設定可能だが、何をユーザーがその後にするのかに合わせて最適化すること
・ドロップダウンから複数種から選択できる
・自動でローカライズされる

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Source:Configure and link your app clips

それぞれの要素はAppStoreConnect上で編集が可能だが、変更するたびに審査提出が必要になる。
また、AppClipsとフルパッケージアプリは同時に審査に提出するのが必要であり、それぞれ個別で提出することは不可能

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Source:What's new in App Store Connect

2. アプリ業界への想定される影響

AppClipsのマーケターが知っておくべき仕様に関しての解説が終わったところで、実際にAppClipsがアプリ業界にどのような影響を及ぼすのかを考察する。本章では5つの観点から考察していく。

■ 2-a:ユーザー体験の向上
ユーザーがその場で行いたいタスクを完遂できる最低限の機能を提供するAppClipsは、ユーザーのサービス利用障壁を確実に下げることができると言えるだろう。以下の図は、通常のアプリダウンロードとAppClipsのユーザーフローを比較したものだが、ステップの簡易性の違いは一目瞭然である。

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Source:Here’s why Apple’s new App Clips are about to change apps as we know them

■ 2-b:ユーザー獲得
ユーザー獲得全体の観点としてAppClipsが与える影響は以下3点が挙げられる。尚、ここでいうユーザー獲得とはフルパッケージアプリのダウンロードではなく、あくまで初回サービス利用開始とする。

①全体的:
旧来リーチが難しかったユーザー層へのタッチポイント増加と、利用開始障壁の低下による獲得増加可能性

②オフライン:
特にオフライン・実店舗のようにまだOMOが完全に進んでいない領域では大きなユーザー獲得効果が見込まれる

③オンライン:
オンラインでもその効果は大きく、具体的には自社ウェブサイトなどの別プラットフォーム(Web)での新規アクションが増加する可能性があり、Web体験の最適化も今まで以上に重要になると考えられる

■ 2-c:ASO
フルパッケージアプリのダウンロード数増加を目的とするASOへの影響は以下が考えられる。

・AppClipsトリガー経由のAppClips起動による、ストア流入数・ダウンロード数の減少(=フルパッケージアプリダウンロードインセンティブの低下)
・特にこの影響はオフラインサービスメインのアプリでは大きくなると考えられる(実店舗でのアプリダウンロードのAppClips利用への置換)

ただ、一方でストア以外での潜在顧客とのタッチポイントが増加することによる、最終的なDL数パイ自体は拡大する可能性もあるため注視が必要になるだろう。

■ 2-d:オンライン広告
広告に関してもゴールはASOと同じくフルパッケージアプリのダウンロード数増加を目的とするが、ASOと違いプッシュ型アプローチにあたるため影響はそこまで大きくないのではないかというのが私の見解だ。

しかし、獲得広告ではなくAppClips利用を促進するための誘導広告などが出現する可能性はあり、その場合のアトリビューション設計やKPI設定などは検討の余地があると言える。

尚、前述の通り、AppClipsはユニバーサルリンク経由での起動が不可能である為、通常の獲得広告の遷移URLにAppClipsトリガーURLを添付するなどは出来ない。

■ 2-e:アプリ内マーケティング
AppClipsによりサービス全体としてのアプローチ可能ユーザー数増加と利用障壁の低下は図られる一方で、根本のフルパッケージアプリの重要性は相対的に低下する可能性がある。

上記の事態を防ぐ上でフルパッケージアプリをインストールさせる動機としてのアプリ付加価値の重要性がますます高まると言える。
これは、何もリワード制を推奨しているわけではなく(そもそもガイドラインで禁止されている)、AppClipsを利用してくれたユーザーを如何にスムーズにフルパッケージアプリのダウンロードに繋げられるかを考える必要性があるということだ。

実際、AppClips内ではフルパッケージ版をダウンロードできるオーバーレイバナーの表示が可能であるため、これらを利用して誘導することになり、この誘導のタイミング設計などが重要になる。ちなみに、Apple公式のティップスとしてはAppClipsのタスクが完了した段階で発動するのが有効とされている。

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Source:Enabling Notifications in App Clips

また、AppClipsの設計上、一定期間が経過するとAppClips自体が自動的に削除される為、旧来以上にユーザーリテンションの重要性は高まると言える。

リテンション施策としてAppClipsを新しいチャネルとして使用するのは有効と考えられる。しかし、デフォルトのプッシュ通知は8時間ごとに許諾がオフに切り替わるのに加え、通常のプッシュ許諾ダイアログも発動可能だが継続利用しないことが前提と考えられるAppClipsにおいては高いプッシュ許諾率は見込みにくい。

故に、その効果を過大評価することなく、継続して使ってもらえるよう、本質的なサービス体験向上に努めるべきと言えるだろう。

3. 想定活用事例

本章ではApp Clipsの想定される活用事例を考察する。実際の活用事例に触れる前に、AppClipsの引き合いに頻繁に出されるGoogle Instant Appsとの機能・設計思想を次項で比較する。

3-a:設計思想の比較
頻繁に類似プロダクトとして引き合いに出されるGoogle Instant Appsだが、結論から言うとAppClipsとは設計思想は真逆であるというのが私の見解だ。

■ 機能
まずは、機能の比較から。これだけ見ると両プロダクトは確かに類似性が高いと言える。では設計思想はどうだろうか?

Google Play Instant Apps:
・アプリをダウンロードすることなく一部機能が利用できる

iOS App Clips:
・アプリをダウンロードすることなく一部のタスクが完了できる

■ 設計思想

Google Play Instant Apps:
・目的:フルパッケージアプリのダウンロード障壁を下げること
・非ゲームの活用事例も存在するが、基本的にはゲームアプリのお試し版利用のユースケースがメイン
→ペイン解消対象はダウンロードの待ち時間という投資をするべきかの判断

iOS App Clips:
・目的:フルパッケージアプリをダウンロードしなくても特定のタスクをユーザーが完了できること
・非ゲームのユースケースしか紹介されていない
→必要ない機能はダウンロードしたくないというユーザー心理を解消する

Google Play Instant Appsがアプリダウンロードを最終的なゴールと置いている一方で、iOS App Clipsは必ずしもダウンロードではなくサービス全体としての利用障壁を下げることを目的としている点に相違がある。

つまり、GoogleはGooglePlayStoreというアプリストア単位での拡大を図る一方で、Appleはプラットフォーム横断のAppleエコシステムの拡大を狙うためにAppClipsを導入していると言えるのではないだろうか?これは、決済手段にApplePay・ユーザー認証手段にSign in with Appleを推奨していることからも伺える。

上記で、AppClipsはダウンロードを目的としないと書いたが、逆に言うと、iOS App ClipsもGoogle Play Instant Appsのように、ダウンロードや認知を目的とした施策にすることも可能であり濫用される可能性は大いに存在すると言えるだろう。(本事例に関しては次項で考察する)

尚、技術仕様など含めた詳細の比較に関しては以下のリンクにまとまっている為、参考にご覧いただきたい。

3-b:活用事例
次に実際の活用事例を考察していく。本項では以下5つのジャンルに大別してユースケースを考えていこう。

3-b-1:実店舗(飲食店・ファッション)
3-b-2:メディアサービス
3-b-3:MaaS
3-b-4:ゲーム
3-b-5:オフライン体験

■ 3-b-1:実店舗(飲食店・ファッション)
まずは実店舗での活用事例だ。このジャンルは最も活用のイメージが湧きやすく、冒頭でご紹介したカフェアプリが良いユースケースだろう。ここでは、決済目的とリテンション施策の2軸で考察する。

①:決済目的の利用方法
ある大手チェーンカフェのWebサイト(Safari)でAppClipsを経由して事前に注文・決済し店舗で受け取りを行う。カフェの実店舗での決済をAppClips経由で行うのも大いにあり得る活用シーンだろう。

②:リテンション施策
カフェの実店舗で購入後のレシートにQRコードを印刷。読み込むとAppClips上でクーポンが発行。8時間有効なプッシュ通知機能を利用して翌日の利用を促進する。その後継続的に購入してくれるユーザーにはアンバサダープログラムなどを理由にフルパッケージアプリに誘導。

■ 3-b-2:メディアサービス
メディアサービスにおいては以下2つの活用事例が考えられる。

①:実店舗紹介メディア(フードポータル・お出かけメディア)
グルメポータルのWebサイト(Safari)上でスポットや記事をクリックすると、当該店舗の予約を注文が可能なAppClipsが起動。

②:オフライン広告
電車のホームや車内の広告にAppClipsコードを設置。読み込むとメディアサービスの一部コンテンツが閲覧可能に。長編や全コンテンツを見るためにフルパッケージアプリに誘導。

フランスでは地下鉄のホームに3分間で読める紙小説を発行する設備を導入したところ、愛用されているため、通勤時間などに利用できる暇つぶしコンテンツへの誘導は有効と考えられる。

■ 3-b-3:MaaS
本ジャンルも活用イメージは湧きやすいだろう。
具体的な事例としては、駐車場の決済にAppClipsを利用するや、シェアリングバイクの自転車本体にQRコードを設置して読み込みにより決済・貸し出しを行うなどが考えられる。
旧来のアプリダウンロードや利用登録といった障壁が、AppClipsの決済・認証機能により簡素化されることで、ユーザー数の増加が見込まれる。

■ 3-b-4:ゲーム
ゲームに関しては、前述のGoogle Instant Appsの設計思想を流用するという考え方だ。AppClipsでは一部ステージのみを提供し、プレイ完了後はAppClips内のバナーでフルパッケージアプリへ誘導するなどが考えられる。これはオンラインだけでなく、前述の3-b-2:メディアサービスのような形で、電車内広告にQRコードを設置してプレイさせるなどもあり得るだろう。
AppClipsの利用規約に沿った形で、アプリをダウンロードさせる目的で使用することもデベロッパーは想定しそうではある。

■ 3-b-5:オフライン体験
こちらは、3-b-1:実店舗(飲食店・ファッション)の決済ではなく、体験に絞った形の活用事例だ。具体事例としては以下2つが考えられる。

①:美術館の展示品にAppClipsコードを設置。読み込むと美術館アプリのAppClipsが起動して、当該展示品の解説やARが体験可能。ギフトショップなどを名目にフルパッケージアプリに誘導。
②:飛行機の座席にAppClipsコードを設置。読み込むと航空会社アプリのAppClipsで飛行機で楽しめる動画コンテンツなどを子供向けに提供。大人には免税品通販を表示し決済を促進する。

4. AppClipsの成長余地・懸念

最終章である本章では、AppClipsの成長余地を懸念と共に考察する。ここでは3つの懸念があると私は考える。

■ 4-a:Appleエコシステムの限定性
当たり前ではあるがAppClipsはiOSユーザーに限定された機能である。
さらに、トリガーは前述の6種類に限定されており、ユニバーサルリンクの使用は不可能である為、メールや広告に仕込むこともできない。
また、トリガーURLのリンクは直接のメッセージ経由でしかシェア・起動ができないため、バイラル性もそこまで望めないだろう。

私の見解として、GoogleInstantAppsが普及しない理由として、Androidエコシステムのみでの利用・ユースケースが不明確であった点が挙げられる。

その場合、中国のWeChatミニプログラムのように生活の各タッチポイントを抑えるプラットフォーマーに利が働くのではというのが私の考えであり、日本の場合は先日始まったLINEミニアプリの方が有効なのかもしれない。

以上の観点からどこまでAppClipsが日本市場に浸透するのかは注視する必要性があると言えるだろう。

■ 4-b:精緻なデータ測定の可否
AppClipsの表示回数やクリック数は、Appleのアプリ管理コンソールにあたるAppStoreConncetで確認が可能になるとの発表があった。しかし、ここでユーザーの詳細な行動データや属性データを閲覧することが出来るとはAppleのプライバシー理念上考えにくい

しかし、AppClipsは動作の軽快さを担保する目的からその容量を10MB以下と規定している為、サードパーティSDKの導入ハードルは必然的に上がるものになる。(そもそも規約として導入自体を禁止する動きも今までのAppleの行動からは今後長期的には考えられるだろう)

このような状況の中で正確にユーザーの行動を把握して次のマーケティング施策に活用することができるかは、データの量・質共に不安と言えるだろう。

■ 4-c:技術発展への各デベロッパーの適応
AppClipsはフルパッケージアプリの一部機能切り出しとは言え、それ単体の開発・運用保守が必要になる。

ユースケースも明確になっていない中で、トリガーやカスタム要素が多い本機能を日本の各アプリデベロッパーが工数を使って検証・有効活用してくれるのかは非常に気になるところである。

本観点は、我々マーテク領域としてもどのように貢献できるかを模索するべき点であり、是非みなさまのご意見を頂きたい。

※2020/9/29追記※実際のAppClipsを触ってみて

iOS14がリリースされ、実際にAppClipsを体験してみての追記レポートです。ようやく初めてのAppClipsにお目にかかりました。

■ AppClipsの起動導線と挙動
上の動画を見てもらうと分かる通り、Safariで以下のサイトにアクセスすると、SmartBanner形式でAppClipsの宣伝がされています。
SmartBannerをタップすると、AppClipsカードがポップアップし、そのままAppClipsを起動することができました。
AppClipsではサイズ制限も厳しい為、挙動もサクサクで軽いのがよく分かると思います。

本noteのユースケースのセクションで述べていた通りの使い方になっており、まさにGooglePlayInstantの活用方法をAppleiOSにも持ってきていると言えます。

AppClips内でプレイが終了すると、以下の画面のようにフルパッケージ版ダウンロードへのフッターバナーが出てきます。

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面白いのが、AppClipsのタスク終了後のこのバナーから「入手」ボタンを押すと、ストアに遷移するとこなくダウンロードまで完了することができるようになっている点です。(本セクション冒頭のTwitterの動画を見てもらうと分かる通り、タスク未完了時のヘッダーバナーからはストアに遷移しています)

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この導線設計から、AppClipsを取り入れる時(特にゲーム系)に気をつけるべき点を次項で考察します。

■ AppClips導入時のアプリ設計の注意点
①:AppClipsのタスクは最小限に
前項の画像の通り、AppClipsのタスク終了時のバナーからはストアに遷移させることなくダウンロードまで完了できるようになっています。これにより、ストア遷移というステップが減る為、AppClipsからのダウンロード率が高まる可能性があります。

このメリットを最大限活用するには、AppClipsでのタスクを最小限にし、タスク完了率を最大化する方向に注力するのが有効と考えられます。特にゲームの場合は、フルパッケージ版のチュートリアルと同じ長さでAppClipsを設計すると、その利点を活用し切れない可能性がある為、注意が必要です。

②:AppClips経由ユーザーにはチュートリアルをスキップさせる
AppClipsではフルパッケージアプリの一部のタスク・機能をユーザーに使用させることで、アプリの魅力を伝え、ダウンロードの障壁を下げることができます。

しかし、せっかくフルパッケージ版をインストールしてくれたユーザーにまた最初からチュートリアルを通過させるのはユーザーフレンドリーとは言えません。ディファードディープリンクなどを用いて、AppClips経由ユーザーには通常のチュートリアルをスキップさせてフル機能に最初から触れてもらう設計は有効かと考えます。

上記2点はゲームのAppClipsを触ってみての考察である為、非ゲームはまたまとめようと思います。

■ AppClipsはタスク完了後どこに表示されるのか?
AppClipsはタスク完了後はホーム画面には追加されず、基本的に再びトリガーURLを読み込まない限りは再度起動しない仕様になっています。
しかし、色々触っているうちに発見したのですが、iOS14から追加された"Appライブラリ"内にひっそりと格納されており、ここからトリガーURL無しに起動できるのを確認しました。

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AppClipsは一定期間が経過すると自動的に削除される仕組みですが、実際どのくらいの期間を要するのかは経過を見守ってみます。

尚、Appライブラリってどこ?何?って方は、手前味噌で恐縮ですが以下の記事をご覧ください!

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■ 最後に

以上がマーケター向けの知っておくべきAppClips完全活用ガイドである。

ご覧頂くと分かる通り、活用の幅は非常に広く効果が出そうではあるが、その実装ハードルや市場成長余地には懸念が残るものであり、これからも継続して注視していくべき技術と言えるだろう。

繰り返しにはなるが、私が所属するReproのようなマーテク領域としても、本技術を活用した貢献領域は模索しているところであり、是非みなさまのご意見を頂きたい

尚、本記事の解説内容は公式の発表内容を元に私見を含め考察したものになる為、感想やフィードバック・修正などは以下の私のTwitter宛てに頂けると助かります。

また、AppClips以外にWWDC2020で発表された内容に関しては、手前味噌で恐縮ですが以下のnoteを参考にご覧ください。

以下本記事を執筆するにあたり参考にした記事や資料を羅列する為、ご参考までにご覧ください。

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