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ロシアと中国の仕掛ける新たな戦争の形 『破壊戦』

最初に、著者の古川英治氏が私の親しい友人であることを明記しておく。
この文章には身びいきがあるかもしれない。

一方、著者を良く知っているからこそ、断言できることもある。

信じられないような話が次々と出てくるが、独自のエピソードはすべて事実、直当たりした取材の成果だ。話を盛ったり、筆が走ったりした部分はない。
取材の途中過程を直接聞いていた身としては、「ずいぶん抑制したな」と思うほど、筆運びは禁欲的だ。注意深く読めば、裏が取れていない「読み」や、他のソースによる情報は、はきちんと明記してある。

だから、読者はこの信じ難い「破壊戦」の内幕を現実として受け取って差し支えない。

『破壊戦』KADOKAWA 古川英治/著

冷戦期さながらの諜報活動や秘密工作。
21世紀ならではのネット・SNSを駆使した世論操作。
その「先兵」として利用される難民問題やグローバルな貧富の格差。
個々には知っているつもりのテーマが、足を使ったファクトを描線とした俯瞰図として提示される。

「まともな世界ならロシアは大国になれない。しかし、秩序なき生き残り競争なら、我々の方が使える手段は多く、有利だ」。

「はじめに」に登場するロシア政府関係者のこのセリフに、今、世界が直面している脅威の本質が凝縮されている。
本書が最後に指摘するように、ロシアの「なんでもあり」の手法を、国力ではるかに勝る中国が模倣しようとしている。
この現実を直視するためにも、読んでおきたい力作だ。

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本稿は光文社のサイト「本がすき。」に寄稿したレビューです。編集部のご厚意でnoteにも転載しています。

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