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Slackを使った研究互助コミュニティでどのような活動をしているのかを紹介します

1. はじめに

突然ですが私はSlackが大好きです。

2017年11月に日本語版Slackがリリースされた一ヶ月後の12月14日にワークスペースを作成し,仲の良い後輩と研究者の3人でSlackを始めました。

はじめはメールより便利な連絡手段くらいにしか思っておりませんでしたが,Slackの各種機能(絵文字,カスタム絵文字,スレッド,メンション,リマインド,アプリ連携など)を使っていくうちに,その便利さの虜になり今や研究にかかせないツールになりました。

その後,学会や勉強会等で仲良くなった人たちをそのワークスペースに招待し,やり取りしていく中で,いつの間にか研究に関することを自由に相談・議論し合うコミュニティのようなものができあがっていました。

このような研究互助コミュニティについて,これまでに何回か活動内容について聞かれたことがあったので,今回はその内容について簡単にまとめてみたいと思います(個人的にはあまり「運営」という感覚はあまりなく,好きにやっているという感覚の方が大きいです)。

私はコミュニティ運営の専門家でもないですし,n = 1の経験談に過ぎないので,ただのひとつの事例くらいの感覚でお読みいただければと思います。

2. ワークスペースの基本情報

Slackでいうところのアクティブメンバーは50人くらいです。理科教育に関心のある大学の先生,小学校や中学校などの先生,学生などが参加しています。チャンネル数は30くらいで,チャンネルは緩めのものからしっかりしたものまで多種多様です。

周りの研究者から話を聞くと,こうしたコミュニティにおいてアクティブメンバーが50人という数字はわりと多いみたいです。参加者にアクティブメンバーが多い理由について聞いてみたところ,

・チャンネル数を多くして,多様なニーズを汲み取っている
・投稿に対してなんらかのリアクションがある雰囲気がすでに醸成されている
・クラブ活動(後述)をスキップしても,後からフォローできるように録画を共有している
・運営側がウェルカムな雰囲気を醸し出せている

といったことを挙げていただきました。私自身あまり自覚的でなかったことですが,どうやら心理的安全性やなんらかのフィードバック・リアクションが確保されているような雰囲気がアクティブメンバーの人数につながっているようです(知らんけど)。

3. 具体的な活動とチャンネルの紹介

具体的な活動とチャンネルをあわせて紹介します。
チャンネルは数多くあるので,「club_」や「alert_」などの接頭語をつけて,カテゴリーに分けています。
どのようなカテゴリーがあるかというと

・全員(#all_)
・相談(#talk_)
・情報共有(#info_)
・アラート(#alert_)
・クラブ活動(#club_)
・研究プロジェクト(#proj_)
・期間限定(#YYYYMMDD_)


などです。
これらのカテゴリーと具体的なチャンネルの活動・投稿について紹介します。忙しい人は「チャンネルカテゴリーのまとめ」に一覧表にしてまとめてありますので,そちらまで飛ばしてお読みください。

全員(#all_)

いわゆる #general#random です。全体に流したほうがよい情報はこれらのチャンネルに投稿します。重要度高めのものは#general ,低めのものは #random です。接頭語をつけなくてもよいかなと思ったのですが,「a」から始まるとサイドバーのアルファベット順で整理したときに上位に表示されてわかりやすいかなと思い適当につけました(なお,有料版ではサイドバーを「セクション」設定で自由にカスタマイズすることができます)。

相談(#talk_)

このカテゴリーでは,悩みやちょっとしたアイディアを参加者と共有して,意見を交換しています。たとえば,「#大学授業」というチャンネルがあります。このコミュニティは理科教育の研究者が多く集まるコミュニティなので,各大学で担当している授業も同じような内容であることが多いです。そこで,「シラバスはどんな感じですか?」とか「これを試したのですが,うまくいきませんでした」といったように,授業の構想や手応えなどの情報を交換しています。

これは私の経験談になるのですが,2021年度に初めて「理科教育法」の授業を非常勤で担当することになり,うまくやれるかとても不安でした。私の授業を受ける学生にはできるだけ最善の授業を提供したかったので,授業を実施した後,すぐに授業の反省をして,課題点や改善点について投稿するようにしていました。

最初はただの自己満足で投稿していたのですが,幸運なことに多くの方が私の投稿に反応してくれて,たくさんのアドバイスをもらうことができました。今でもそのアドバイスは授業に活きており,本当に感謝してもしきれません。このように相談カテゴリーのチャンネルでは仕事に関する課題や悩みを相談・共有できるようになっています

情報共有(#info_)

このカテゴリーでは,参加者にとって役に立つであろう情報を勝手に各自で投稿しています。たとえば,「#ライフハック」では,研究で役に立ちそうな最新のサービスを紹介したり,「#文献紹介」では,読んでおもしろかった文献や気になった文献の情報を紹介したりしています。このようなささやかな情報の蓄積が研究のTIPSにつながっています

アラート(#alert_)

このカテゴリーでは,RSSフィードと連携させてジャーナルアラートを自動投稿しています。設定方法も簡単です。詳しく下記の記事を参照してください。

たとえば,「#ジャーナル-理科教育」では,理科教育に関する主要なジャーナルの論文情報が自動で投稿されます(下記のスクショ参照)。

#ジャーナル-理科教育

このように,ただ最新論文のリンクが投稿されるだけなのですが,「おもしろそうだな」と思った論文には「👀」とかでリアクションをするようにしています。こうすることで,「◯◯さんが気になっている論文」というようにその論文に重みがつけられることになります。

私はモデル・モデリングや科学哲学に関する論文が好きなので,それらの論文に対してリアクションをすることが多いです。参加者の皆さんは私の好みをすでに把握されているので,「この論文よさそうですよ」とたまにメンションを飛ばしてくれたりします。私はこうした気遣いをとても嬉しく思っているので,なるべく自分もそうするようにしています(過去にやったかは覚えていないですが・・・)。

また,私の場合,気になった論文があればアブストを読んだ感想も投稿するようにしています。過去にはその論文の感想で盛り上がり,その論文を対象にしたジャーナルクラブにつながったこともありました。こうした最新の論文についての議論ができるのがジャーナルアラートのチャンネルのよさだと思います

クラブ活動(#club_)

このカテゴリーでは,やる気のある人がホストとなって,自発的に勉強会を企画・実施しています。たとえば,毎週理科教育に関する本を輪読する「#ブッククラブ」,毎週質的研究法に関する本を輪読する「#質的研究勉強会」などのチャンネルがあります。これらのチャンネルでは,ホストとなる人が自身の興味・関心にもとづいて企画し,参加者を募り,好きなように実施しています。

参加は完全に自由なのですが,あるときには外部の人にも声をかけたりして,なるべく多様な人で勉強会を開催するようにしています。

個人的な見解ですが,このような定期的な勉強会が研究互助コミュニティにおいてもっとも重要だと思っています。勉強する時間あるいは研究につながる時間を強制的に確保することができますし,参加者の近況も確認することができます。研究について議論する時間は本当に楽しいので,私にとってはまさに「クラブ活動」といった感じです。

このような勉強会の方法については,下記の記事に詳細を書いておりますので,気になった方はぜひ読んでみてください。


研究プロジェクト(proj_)

参加者が論文投稿を目指して,研究プロジェクトを実際に進めていくチャンネルです。情報の機密性の観点からプライベートチャンネルで運用しています。その研究に関する議論はもちろん,関連するリンク,参考文献のリスト,論文のファイル,ミーティングの議事録などが管理されています。過去には,勉強会で学んだことがもとになって,研究プロジェクトに発展したものもありました。メールでやりとりするよりも便利なのは言うまでもないですね。

期間限定(#YYYYMMDD_)

このカテゴリーでは,学会の全国大会に関することや,特定のセミナーに関することなどを投稿しています。「YYYYMMDD」にはそのイベントの日付が入ります(たとえば, #20221221_◯◯など)。これまでには,たとえば全国大会のチャンネルでは,学会の申込に関する基本情報,関連リンク,お互いの原稿の確認とフィードバック,開催地の観光名所や有名店,学会後の感想など,幅広い内容が投稿されていました。これらの投稿を読むことで,学会を最大限楽しむことができています。

チャンネルカテゴリーのまとめ

チャンネル紹介のまとめとして,チャンネルカテゴリーを一覧表にしてみました。各チャンネルカテゴリーを,接頭語,目的,具体的なチャンネル(接頭語は省略)の3つの観点で整理しています。

チャンネルカテゴリー


4. 絵文字

ワークスペース内で感情を表現する時に便利なのが絵文字です。絵文字を使って,投稿に対するリアクションを取ることができます

このワークスペースでは,便利な絵文字から狂気の沙汰としか思えない絵文字まで,これまでに数多くの絵文字が追加されてきました。

この記事を作成するために追加されたカスタム絵文字の数を調べたのですが,その数は400個近くありました。その場のノリで作ったふざけた絵文字もたくさんあるのですが,こうした絵文字芸も個人的には楽しいと思っているので,好き勝手やっています。

基本的にはデフォルトの絵文字でまったく問題ないのですが,個人的に便利だと思う絵文字をいくつか紹介します。

その投稿を無視しているわけではないけれど,
自分では手には負えず,誰かに任せたいときに使っています。


文字通り後で連絡したいときに使います。
後でレスをする意思を相手に伝えることができます。


神速で回答するレス早族や,
求めている情報をドンピシャで提供した人を称える時に使っています。


何かの作業が終了したときに使います。
チェックマークでもいいのですが,ハンコ感があって好きです。
簡単なアンケートならこれで回答終了報告もできます。


草です。

これらのカスタム絵文字については,下記のサービスを使えば簡単に作成することができます。

上級者には下記の「治安の悪い絵文字」もおすすめです。ぜひご利用ください。


5. おわりに

簡単ではありますが,研究互助コミュニティの活動について紹介しました。

一人で研究をゴリゴリと進める方もいらっしゃいますが,これまでの経験を振り返ると,私の場合は仲が良くなった研究者と関わり合い,互いに励まし合いながら研究する方が性に合っているようです。

当たり前ですがコミュニティは一人では成立しません。
運営を支えてくれる人,積極的に投稿してくれる人,クスッと笑ってしまうネタを提供する人など,様々な人がコミュニティ内で活動しています。
そして何よりも,参加者一人一人が他者へのリスペクトを持って参加しているからこそ本コミュニティが成立しているものだと思います。

参加者とは「持ちつ持たれつ」の関係であり,信頼できる「良き仲間」であることをいつも強く感じています。
今後も仲間とともに楽しく研究を続けていきたいと思っています。

なお,これまで紹介してきたのはあくまでひとつの事例です。
そのほかにもSlackの良さそうな使い方がありましたらぜひ教えてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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