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オンラインブッククラブの3つの方式とやり方を紹介します

はじめに

ある文献を読んでいるときに

「この文章はどういう意味だろうか?」
「この文章から思いついたアイディアを誰かに聞いてほしい」

とか思った経験はないでしょうか?
誰もが一度は経験したことがあると思います。Twitter やnote などを利用して感想をシェアしてもいいのですが,せっかくなら同じ文献を読んだ人と交流してみたいと思いませんか?

本の内容や感想を他者と交流・議論する会のことを「ブッククラブ」といいます。最近では,zoomやSlackなどのサービスを使うことで,オンラインでのブッククラブも簡単にできるようになりました。

この記事では,私が参加・企画してきたオンラインブッククラブの3つの形式(輪読型、本文+コメント型、引用+コメント型)と,オンラインブッククラブのやり方について紹介します。

私がブッククラブに出会ったのは数年前ですが,今ではすっかりドハマリしてしまい,いろんなブッククラブに参加したり,自分で企画したりするようになりました。本を通して他者と交流することで,自分の知見が深まっていることを日々実感しています。

パソコンとネット環境があれば誰でも無料で参加・企画
することができますので,ぜひ参加者を募ってやってみてください(忙しい人は「おわりに」にジャンプしてください。まとめた表があります)。

まずは,これまでに参加・企画してきたオンラインブッククラブの3つの形式の紹介です。


形式1.【輪読型】zoomを使って輪読する

最初に紹介する形式は,おそらくもっともオーソドックスな形式です。
第1章は◯◯さん,第2章は◯◯さん,というように、参加者で各章の担当を決めて,リレー形式で発表していくという,いわゆる「輪読」形式です。発表がzoomを通して実施されるというだけです。もはや説明するまでもないですが,具体的なやり方は以下の通りです。

1.各章の発表担当を決める

メンバーの募集が完了したら,メンバー内で各章の発表担当発表の日程を決めます。

2.持ち回りで発表する

発表担当者,司会者,それ以外の人で役割が変わってきます。
発表担当者は,担当章の要点をまとめたスライドを準備しておきます。当日,発表担当者はスライドを用いて発表します。

司会者は,発表途中の話題が切り替わるタイミングで,適宜議論の時間を設けましょう。参加者に感想や疑問点がないか聞いてみたり,発表者に補足を促したりするとよいでしょう。

それ以外の人は,発表当日までに該当の章を読んでおきます。あらかじめ疑問や感想を整理しておけば,議論もしやすくなると思います。

■メリット

一番オーソドックスな形式ですが,オンラインだと次の点でメリットがあります。

・チャットが使えること

対面形式だとチャットは使えませんが(使ってもいいですが),zoomだとチャット機能が使えます。これにより「議論の俎上にあげるほどの内容でもないけど,とりあえず言語化しておきたいこと」を可視化することができます。おもしろいチャットがあれば,それを取り上げることで議論が深まることもあります(発表内容に関連して大喜利を始める「チャット芸」という文化も生まれました)。特に,発表内容と関連するリンクや資料を投稿すると議論のきっかけになるのでおすすめです。

一番簡単なのはzoomのチャットですが,最近は Slido などのサービスもあります。zoomのチャットだとポスト量が多いとすぐ流れていってしまいますが,Slidoを使えばコメントに「いいね!」をすることができるため,参加者の多くが関心を持ったコメントを拾うこともできます。

・【有料】録画ができること

対面で記録を残すとなると,ビデオカメラやマイクなどの機材が必要ですが,zoomだとワンクリックで録画できます(ただし,zoomの有料アカウントが必要です)。

この録画ファイルを参加者内で共有すれば,欠席者も見ることができます。いわゆる「見逃し配信」です。議論が盛り上がった回も,録画があれば何回でも見直すことができます(私は3回も見直した回がありました)。

Googleドライブにmp4ファイルをアップロードすると,YouTubeのようなインターフェイスで動画を視聴することが可能ですので,アップロード先はGoogleドライブがおすすめです。

■注意点
無料のzoomアカウントだと,3人以上のミーティングには40分の制限がついています(※ 2021年5月現在,時間制限は一時的になくなっているようですが、よくわかりません)。私の場合は有料アカウントを持っているので問題はなかったのですが,参加者が誰も有料アカウントを持っていないときは注意が必要です。これを解決するためにも,有料アカウントを持っている参加者をうまく誘うことが大事かもしれません。


形式2.【本文+コメント型】本文をGoogleドキュメントで共有し、zoomで議論する

最初に紹介した形式が「各担当者が発表資料を作る形式」だったのに対し,この形式では担当者は必要ありません。司会者のみで会を進めていくことができます。どのような形式かというと「対象となる本をファイルに変換し,参加者はそのファイルに自由にコメントしていく」みたいな方法です。具体的な方法は次の通りです。

1.代表者が対象となる本をGoogleドキュメントに変換する
まず,対象となる本をGoogleドキュメントに変換します。対象となる本がPDF形式で存在するなら,PDF → Word → Googleドキュメントという流れで変換可能です(著作権にはご注意ください)。代表者は,Googleドキュメントの共有リンクを作成し,参加者にそのリンクを送ります。

2.参加者は会の当日までに本文に対してコメントをつける
参加者は,会の当日までに該当の章を読み,気になる部分にコメントをつけていきます。コメントは,意見,補足,疑問など,気になったことをなんでも書き込んでいきます。

3.zoomで議論する
会の当日,司会者はGoogleドキュメントを開いて画面を共有し,コメントを拾いながらファシリテートしていきます。コメントした人に対して補足説明をお願いしたり,他の参加者の見解を確認したりして,議論を深めていきます。

■メリット
方式1と重なる部分は省略しますが,この方法による一番のメリットは,「Googleドキュメントが情報のハブになる」ということです。
参加者全員が1つのファイルを閲覧・編集するので,その本に関する情報がどんどん集約されていきます。参考文献のリンクをコメントを貼れば,すぐに引用箇所を確認することができます。

この方式で実施したブッククラブでは

「これわかりません → こういうことじゃないですか? → なるほど」

「参考文献を読むとこんなことが書いてありました。 → あざす」

「このURLに飛んだら色々遊べて楽しいです。 → 俺もやろ」

みたいなやりとりがたくさんあり,コメントの総数は100を超えました。
このように,録画ファイルだけでなく,情報が集約されたファイルも残るのがこの方法のメリットです。


方式3.【引用+コメント型】白紙のGoogleドキュメントにコメントを書き込みあう

最後に,最もお手軽にできるのがGoogleドキュメントのみを使う方式です。具体的なやり方は次の通りです。

1.白紙のGoogleドキュメントを作成する
まず,代表者が白紙のGoogleドキュメントを作成します。代表者はGoogleドキュメントの編集リンクを参加者に送ります。

2.参加者で投稿する
週に一度投稿する曜日を決めます。参加者は,その曜日になったら,①その章で気になった文章,②そのページ,③コメントの3つをセットに,本文にベタ打ちしていきます。コメントは,意見,補足,疑問など,さきほどと同じでなんでもOKです。このとき,参加者ごとに色を決めておくとよいでしょう(例.Aさんは赤、Bさんは青など)。

参加者のコメントで気になる箇所があれば,別の日に,さらにコメントしていきます。そして,また気になるコメントがあれば,さらにコメントしていきます。このように、コメントをお互いに記入しあって、非同期でやりとりしていくことが特徴です。

■メリット
この形式のメリットは次の通りです。

1.時間に縛られない
そもそもミーティングをしないので,定期的に集まる必要がありません。投稿する日になったら,Googleドキュメントに投稿するだけです。投稿する内容を別のファイルで作っておいて、投稿日になったらコピペすればOKです。参加者のコメントを読んで,「なるほど」と思った箇所とか「こういう情報ありますよ」とか,コメントにコメントがついたりすると楽しくなってきます

2.自分のモチベーションに合わせて自由に参加できる
がっつり読んでがっつりコメントしたい人もいれば,参加者がこの本を読んでどんなことを思うのか知りたい人もいます。その章をあまり読めなかったときも特に問題はありません。その人が割ける時間に合わせて自由に参加することができます

気をつけることとしては、テキストだけのコミュニケーションとなりますので,誤解を生まないような文章表現にする必要があります。ただ,顔見知り同士で実施するなら特に問題はないでしょう。


オンラインブッククラブのはじめ方

以上,3つの形式を紹介しました。次はオンラインブッククラブの企画の方法です。以下のような手順で進めるとよいと思います。

1.参加者との連絡手段を決める
実はもっとも重要な段階です。自分や参加想定層のメディアリテラシーに合わせて,連絡手段を決めましょう。一般的に広く使われている連絡手段はメールですが,イチオシはSlackです。メールよりも気軽にやりとりできますし,定例会が終わった後,感想を自由に語ることができる場(いわゆる「感想戦」)としても機能します(感想戦の方が盛り上がることもあります)。ここではSlackを使用することとします。

2.参加者を募る
連絡手段を決めたら,参加者を募集しましょう。Twitter,Facebook,顔見知りにメールするなど,手段はなんでもよいと思います。以下に10分で考えた適当な案内文を貼っておきますので,自由に加筆修正して使用してください。

◯◯を対象としたオンラインブッククラブのご案内

下記内容でオンラインブッククラブを企画します。
興味のある方は,◯◯までご連絡ください。
形式:
・zoomを用いた輪読会です。
・発表担当者はその章を説明する資料を準備し,発表してもらいます。
・参加者は該当章を事前に読んできてください。
頻度:週1,2~3時間
参加人数:最大10人(先着順)
募集締切:20XX年◯月◯日(日)◯時まで
連絡手段:Slack
その他:
・初回のミーティングにて,今後のスケジュールと担当する章を決定します

3.初回のミーティング日を設定する
無事に参加者を集めることができたら,参加者に、①Slackワークスペースの招待リンク,②初回のミーティングの日程調整,の2点を連絡しましょう。

①Slackワークスペースの招待リンク
こちらを参考して,招待リンクを発行しましょう。あとは招待リンクをコピペすればOKです。Slackを使ったことがない人がいれば,Slackの登録方法の解説リンクをあわせて貼っておくと親切です。

②初回のミーティングの日程調整
調整さん や トントン を使って,初回のミーティングの日程を調整しましょう。以下に,10分で考えた適当な案内文を貼っておきますので,自由に加筆修正して使用してください。

代表の◯◯です。
2点連絡です。

1.Slackワークスペースの招待リンクについて
◯◯のオンラインブッククラブのワークスペースを作成しましたので,下記リンクよりご登録ください。

Slackワークスペースの招待リンク↓
【招待リンクをここに貼る】


2.初回のミーティングの日程について
今後のスケジュールと担当章を決めるミーティングを開催します。下記URLより,ご都合を教えてください。

初回のミーティング
【スケジュール調整サービスのURLをここに貼る】

4.初回のミーティングを実施する
初回のミーティングの日が決まれば,zoomのURLを送信しましょう。初回のミーティングでは、

・どういう雰囲気でブッククラブをするのか【重要】
・誰がどの章を担当するか
・今後はどのようなスケジュールで進めるか

などについて話すとよいと思います。特に重要なのは,ブッククラブの方針です。ブッククラブの方針を参加者と共有して,全員が気持ちよく交流・議論できるようにしましょう。あとは決めたスケジュールに沿って,実施していくだけです。


オンラインブッククラブを盛り上げるコツ

オンラインブッククラブを盛り上げるコツを3つ紹介します。

コツ1.参加者を多様にする
「同じ文章を読んでも,立場が違うと見解がここまで違うのか」とびっくりすることがよくあります。参加者が同じような集団だと「うん,そうだよね」みたいな展開になりがちなので,専門外の人を呼ぶと議論が盛り上がります。

コツ2.専門家をゲストとして呼ぶ
該当の章の内容に詳しい人がいると,議論が深まります。非専門家ばかりが集まってしまうと,「これって,けっきょくどういうことなんだろうね?」みたいな事態が発生してしまいます。「その内容に詳しい専門家」をゲストとして呼ぶことで、議論の内容が妥当なのかを確認してくれたり,内容を補足してくれたりします。

コツ3.「わからない」ということを遠慮なく言い合える雰囲気を作る
自分の理解度を遠慮なく公表できるような雰囲気づくりはとても重要です。
「誰かの疑問」は「みんなの疑問」です(多分)質問するやつはとにかく偉いのです。「○○ってどういうことですか? 私はよくわかりません」みたいなコメントがあると,「あれ? どういうことだっけ?」と深く考えるきっかけになります。このときに自分から説明を買って出ると,自分の理解も深まります。会の趣旨にもよりますが,基本的には疑問や質問を歓迎した方が盛り上がると思います。なので,最初のミーティングのときには,「わからないことがあれば,その場で質問したり,チャットに書き込んだり,自由に表現してください」と宣言するとよいかもしれません。

おわりに

最後に、3つの方式をまとめた表を示しておきます。

スライド1

今回示した3つの方式はあくまで事例で、これが正解というものはありません。企画者や参加者のモチベーションに合わせて、自由に企画・参加するとよいと思います。ブッククラブについてもっと詳しく知りたい方は、ぜひ参考文献の吉田(2019)を読んでみてください。

この記事がみなさんの学びのきっかけになれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献

吉田新一郎(2019)『改訂増補版 読書がさらに楽しくなるブッククラブ 読書会より面白く、人とつながる学びの深さ』 新評論.

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