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Releasing ALPS treated water into the sea caused concern over harmful rumours

ALPS処理水の海洋放出について
 まず日本側というか経済産業省がいろいろな案を検討したことは事実だ。ただ最初から海洋放出案に経済産業省がこだわっていたことはうかがえる。まず2016年の段階。5つの案を並記しているが、海洋放出案が時間的に最も短期でかつ経費的に安く処理水を処理できるとしていた。なおここで政府の言い分を入れて「処理水」としておく。絶対反対の立場からは、トリチウムが残るという意味で「汚染水」である。
 そして処理方法の決定においては(2019年)、大気放出案と海洋放出案とを比較。言葉の説明としては、前例があることを盾に海洋放出案を、採用している。気になるのは、いずれも風評被害があるとだけにして、両者の風評被害の違いについて詳細な検討が避けられたように思えることだ。
 指摘したいのは、少なくとも、大気放出の方が漁業への風評被害が出にくかったことである。その意味で海洋放出に絞ったことで、政府―東電は漁業を切り捨てる判断をしたと批判されてもやむをえないのではないか。
 また風評被害規模の推定を政府ー東電は行ったと考えるが、被害が発生した場合は東電が賠償するというのが政府のスタンスであり、政府が海洋放出実施に際してのリスクを東電任せにしていた感も否めない。
 また政府―東電側は海洋放出の場合の、風評被害を、福島県の水産物への国内での消費減退程度と甘く想定していた可能性もある。中国政府が海洋放出に合わせてとった日本の水産物すべての輸入禁止(8月24日)といった、厳しい反応を想定していなかった可能性はある。他方、中国側からすればすでに福島県などからの水産物などへの輸入禁止措置は実施済で継続中なので、次に取れる手段は現在の措置の拡大であり、それが日本の水産物の全面輸入禁止だったのかもしれない。
 2023年8月24日から放出が始まった。これは1tの処理水を1200tの海水で希釈して放出するもの。処理水の放出は24日は200tその後次第に多くして最大500t。17日かけて処理水7800tを放出。今回は第1回の放出で、23年度中に4回かけて計3万1200tの処理水を放出する計画とされる。
 最後に外交で弱腰はよくないとはよく指摘される。領土をめぐる交渉ではその通りだ。しかし処理水の放出で日本はあくまで不安を与える側である。処理水をめぐる不安は内外でなお払しょくしきれていないのが現実である。日本はあくまで理解を求める側である。少なくとも処理水の放出については、科学を振りかざすのではなく、理解をお願いする下からの姿勢が日本政府には求められるのではないか。
追記 2023/09/03
 ALPS処理水:Advanced Liquid Processing System treated water
 ALPS(東京電力HDのHPより) 2023/09/03閲覧
 ALPS処理水(経済産業省) 2023/09/03閲覧

外務省による海洋放水開始直前の在京外交団向け説明会(注:中国を始め海洋放出に批判的な国々もこの種の集団的な説明会には一貫して出席している。→日本政府からの情報受取をすべて拒否しているという一部の理解は間違っているし、逆にいえば日本政府も情報を伝達している。)2023/08/22   ↓

外務省MOFAによる中国語説明(2023/08/01)

鳥養祐二 ALPS処理水に含まれるトリチウムとは何か(2022)

馬田敏幸 トリチウムの生態影響評価(2017)


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