汚染水をめぐり東京電力が説明していないこと(1)汚染水は増え続ける
8月31日、東京電力の中長期ロードマップの進捗状況の会見に行った。
今回、驚いたのは、福島第一廃炉推進カンパニーの「廃炉・汚染水対策最高責任者」の肩書きを持つ小野明氏にIAEAへの出向経験があると分かったこと。
しかし、会見についてより先に、汚染水の基礎知識から書いていく。
(これは本来、東京電力が改めて丁寧に説明すべきことだが。)
貯蔵タンクと海に捨てる選択肢の関係
汚染水の貯蔵タンクは1,046基ある。98%はすでに一杯で、東電は「これ以上、タンクを建てる場所がない」と主張(*1)。汚染水は増え続けているが、タンクは増やしたくないから、汚染水を“処理”して海に放出するというのが、政府・東電の選んだ選択肢だ。(*1)この主張に対し「場所はある」との反論は、無視され続けてきた。
東電は、汚染水が発生する理由の一番に、燃料デブリを冷やすために注水していることを挙げる(下図)が、これは閉じた空間を作れば循環させ、増やさないことが可能だ。ただし・・・
根本的な問題に取り組まず放出開始
ただし、問題は閉じた空間を作ることを後回しにしていること。これが、汚染水が発生し、増え続ける本当の理由で、地下水が原子炉建屋の地下に流れ込み続けていることだ。この止水をなんとかしろと原子力規制委員会や福島県から言われているが、東電は蕎麦屋の出前みたいな返事を続けている。
放出しても増え続ける
この根本的な問題に取り組まず、タンクを増やさないことを前提に、多核種除去施設(ALPS)で処理して告示基準濃度限度を下回ったものを海洋放出し続ける。
つまり、放出し続ける一方で、汚染水はどんどん増えていくという自転車操業が政府・東電のやろうとしていることだ。
(続く)
【タイトル写真】
8月31日、東京電力の中長期ロードマップの進捗状況の会見場にて筆者撮影。