Russian's Invasion into Ukraine in Feb. 2022 ロシアのウクライナ侵攻
コロナの収束とロシアのウクライナ侵攻
コロナ第六波は、2022年2月第二週には収束過程に入った。表１は東京都の報告日による感染者数の推移だ。そのタイミングで＊、世界を揺るがしたのが、ロシアによるウクライナ侵攻だ（2月24日侵攻公表）。武力で他国に意思を通そうとするプーチンが批判されるべきなのは当然として、ウクライナ側＝ゼレンスキー政権に、ロシアに対し武力行使の口実を与えない選択肢はなかったのかは、現在も疑問として残る。
＊なおコロナの感染者は、3月27日以降第5週から再び増加に転じた。7日平均の数値が分かりやすいが、六波の完全収束を待たず、第七波が続いた。しかし4月第4週に入り、第七波も収束に入った。
以下では2022年5月1日に統計数値を補訂している。文章については、数値の推移について5月1日段階の事実と照合し改定しているが、その他の本文については2月27日の記述をそのまま更新している。
表１ 東京都感染者数の推移
2022年 同日 7日平均
2月1日 (火) 14,445 15,395 2月第1週
2月3日 (木） 20,679 17,057
2月5日 (土） 21,122 17,893
2月8日 (火） 17,113 18,575 2月第2週
2月10日(木) 18,891 17,850
2月12日(土) 11,765 16,350
2月15日(火） 15,525 15,215 2月第3週
2月17日(木） 17,864 14,936
2月19日(土) 13,516 14,825
2月22日(火) 11,443 14,003 2月第4週
2月24日(木) 10,169 12,509
2月26日(土) 11,562 11,515
3月1日（火） 11,813 11,313 3月第1週
3月3日 (木) 12,251 11,342
3月5日 (土) 10,806 11,148
3月8日 (火) 8,925 9,979 3月第2週
3月10日(木) 10,080 9,402
3月12日(土) 9,164 8,874
3月15日 (火) 7,836 8,476 3月第3週
3月17日 (木) 8,461 8,159
3月19日 (土) 7,444 7,822
3月22日 (火） 3,533 6,834 3月第4週
3月24日 (木) 8,875 6,352
3月26日 (土) 7,440 6,275
3月29日 (火) 7,846 7,181 3月第5週
3月31日 (木） 8,226 7,530
4月2日 (土) 7,395 7,622 4月第1週
4月5日 (火) 6,989 7,482 4月第2週
4月7日 (木) 8,753 7,433
4月9日 (土） 8,102 7,553
4月12日 (火） 6,922 7,590 4月第3週
4月14日 (木） 8,540 7,502
4月16日 (土） 6,797 7,124
4月19日 (火) 5,583 6,377 4月第4週
4月21日 (木) 6,713 5,905
4月23日 (土) 5,387 5,507
4月26日 (火) 5,048 5,342 4月第5週
4月28日 (木) 5,394 5,051
4月30日 (土） 2,979 4,492
報告日による感染者数の推移（東京都 人）
ルーブル価値、日本株価は下落後回復。原油・小麦は高止まり。
プーチンによるウクライナ侵攻（2022年2月24日公表）は、ロシアからの西欧マネーの流出、ルーブルの価値下落につながるはずで、ロシア経済にも深刻な打撃になると見られた。株価や原油、小麦など国際商品価格の変調は開戦前に始まっている（表２ 表３）。統計上は開戦後10日経過した3月第2週前半3月7日から9日が最悪の極点で、以降はルーブル価値、株価は最悪からの回復、原油、小麦は暴騰からの修正を確認できる。日経平均は3月第4週22日には27000円台を回復し,開戦前の決して高くはない水準に戻した。週末の25日に28149円、第5週29日に28252円の高値を記録後、戦争の長期化を嫌ってか、再度、値を下げるようになった。4月第2週には再び26000円台に落ち込んだ。興味深いことに3月末までにルーブル価値は開戦時の水準まで戻しただけでなく、4月第2週にはそれを上回るようになった(表２ 表３)。国際商品価格は4月29日段階で、開戦前（2月17日）に比べて原油（表２）は2割程度、小麦（表３）は3割程度上昇している。
表２ ルーブル価値、日経平均、原油価格の推移
1ルーブル 円 始値 終値 日経平均 原油価格 バレル ＄
円 円 終値 円 ブレント WTI
2月17日（木） 1.5335 1.5048 27,232.87 92.97$ 91.76$
18日（金） 1.5048 1.4872 27,122.07 93.54 91.07
21日（月） 1.4853 1.4386 26,910.87
22日 (火) 1.4386 1.4572 26,449.61 96.84 92.35
23日（水） 1.4569 1.4160 休場 96.84 92.10
24日（木） 1.4111 1.3516 25,970.82 99.08 92.81
25日（金） 1.3528 1.3916 26,476.50 97.93 91.59
28日（月） 1.3822 1.2086 26,526.82 97.93 95.72
3月 1日（火） 1.2085 1.0365 28,844.72 97.93 103.41
2日 (水) 1.0366 1.1655 26,393.03 112.93 110.60
3日 (木) 1.1655 1.0473 26,577.27 110.46 107.67
4日 (金) 1.0473 1.0780 25,985.47 118.11 115.68
7日 (月) 1.0444 0.8261 25,317.40 123.98 119.40
8日 (火） 0.8261 0.9049 25,159.32 127.98 123.70
9日 (水) 0.9049 0.8463 24,717.53 111.14 108.70
10日 (木) 0.8482 0.8691 25,690.40 109.33 106.02
11日 (金) 0.8690 0.8816 25,162.78 112.67 109.33
14日 (月) 0.8876 0.9682 25,307.85 106.90 103.01
15日 (火) 0.9682 1.1103 25,346.48 99.91 96.44
16日 (水) 1.1103 1.2051 25,762.01 98.02 95.04
17日 (木) 1.1987 1.1537 26,652.89 106.64 102.94
18日 (金) 1.1537 1.1181 26,827.43 107.93 104.70
21日 (月) 1.1183 1.1198 Closed 115.62 112.12
22日 (火) 1.1198 1.1387 27,274.11 115.48 111.76
23日 (水) 1.1387 1.2514 28,040.16 121.60 114.93
24日 (木) 1.2515 1.1853 28,110.39 119.03 112.34
25日 (金) 1.1960 1.1966 28,149.84 120.65 113.90
28日（月） 1.2099 1.3036 27,943.89 112.48 105.96
29日 (火） 1.3036 1.3956 28,252.42 110.23 104.24
30日 (水） 1.3956 1.4581 28,027.25 113.45 107.82
31日 (木) 1.4581 1.4879 27,821.43 113.45 100.28
4月1日（金） 1.4879 1.4259 27,665.98
4日 (月) 1.5305 1.4695 27,736.47 107.53 103.28
5日 (火) 1.4695 1.4663 27,787.98 106.64 101.96
6日 (水) 1.4662 1.4817 27,350.30 101.07 96.23
7日 (木) 1.4816 1.5536 26,888.57 100.58 96.03
8日 (金) 1.5536 1.5479 26,985.80 102.78 98.26
11日 (月) 1.5453 1.4786 26,821.52 98.48 94.29
12日 (火) 1.4787 1.4678 26,334.98 104.64 100.60
13日 (水) 1.4678 1.5225 26,843.49 108.78 104.25
14日 (木) 1.5225 1.5227 27,172.00 111.70 106.95
15日 (金） 1.5227 1.5182 27,093.19
18日 (月) 1.5176 1.5645 26,799.71 113.16 108.21
19日 (火) 1.5645 1.5953 26,985.09 107.25 102.56
20日 (水) 1.5953 1.5532 27,217.85 106.80 102.75
21日 (木) 1.5532 1.5860 27,553.06 108.33 103.79
22日 (金) 1.5862 1.6642 27,105.26 106.65 102.07
25日 (月) 1.6605 1.7066 26,590.78 102.32 98.54 26日 (火） 1.7069 1.6816 26,700.11 104.99 101.70
27日 (水） 1.6816 1.7404 26,386.63 105.32 102.02
28日 (木） 1.7407 1.7978 26,847.90 107.59 105.36
29日 (金) 1.7978 1.8188 休場 107.59 104.69
資料：moneyworld エネオス市況情報 2022年5月1日閲覧
表３ ルーブル価値 小麦相場の推移
1ルーブル／ドル Wheat Continuous Contract
RUBUSD W00 cent
2月17日 0.013113 100.00 804.75 100.0
18日 0.012928 98.59 804.00 99.9
21日 0.012461 95.03
22日 0.012686 96.74 852.50 105.9
23日 0.012284 93.67 884.75 109.9
24日 0.011852 90.38 934.75 116.2
25日 0.011924 90.93 859.75 106.8
28日 0.009258 70.60 934.00 116.1
3月 1日 0.009134 69.66 984.00 122.3
2日 0.009723 74.15 1059.00 131.6
3日 0.009091 69.33 1134.00 140.9
4日 0.009390 71.61 1209.00 150.2
7日 0.006993 53.32 1294.00 160.8
8日 0.007843 59.81 1286.50 159.9
9日 0.007326 55.87 1201.50 149.3
10日 0.007491 57.13 1087.00 135.1
11日 0.007463 56.91 1107.00 137.6
14日 0.008197 62.51 1096.25 136.2
15日 0.009390 71.61 1154.25 143.4
16日 0.010101 77.03 1069.25 132.9
17日 0.009732 74.22 1098.00 136.4
18日 0.009390 71.61 1060.00 131.7
21日 0.009376 71.50 1119.25 139.1
22日 0.009430 71.91 1118.25 139.0
23日 0.010336 78.82 1105.75 137.4
24日 0.009780 74.58 1085.75 134.9
25日 0.009615 73.32 1099.75 136.7
28日 0.010526 80.27 1057.00 131.3
29日 0.011429 87.16 1014.25 126.0
30日 0.011976 91.33 1027.25 127.7
31日 0.012232 93.28 1006.00 125.0
4月 1日 0.011662 88.93 983.25 122.2
4日 0.011905 90.78 1010.25 125.5
5日 0.011869 90.51 1045.25 129.9
6日 0.012177 92.86 1039.75 129.2
7日 0.012539 95.62 1020.00 126.7
8日 0.012461 95.03 1049.75 130.4
11日 0.011976 91.33 1081.25 134.4
12日 0.011713 89.32 1103.75 137.2
13日 0.012121 92.43 1121.25 139.3
14日 0.012103 92.30 1104.50 137.2
15日 0.012384 94.44
18日 0.012327 94.01 1128.75 140.3
19日 0.012384 94.44 1109.00 137.8
20日 0.012158 92.72 1097.50 136.4
21日 0.012365 94.30 1076.50 133.8
22日 0.012924 98.56 1073.50 133.4
25日 0.013329 101.65 1072.50 133.3
26日 0.013223 100.84 1095.00 136.1
27日 0.013559 103.43 1091.25 135.6
28日 0.013746 104.83 1085.75 134.9
29日 0.014015 106.89 1055.00 131.1
資料：Bloomberg Market Watch 2022年5月1日閲覧
ウクライナ側の攻勢がロシア側の反撃を招いた
ところで問題の発端はロシア側からすれば、ポロシェンコ前大統領の発案による2019年2月の憲法改正で、ウクライナ憲法が将来のEUそしてNATOへの加盟をうたうようになったことだろう。そのポロシェンコを破って当選した現大統領のゼレンスキーは（おそらく選挙戦の争点だったであろう）この憲法の順守を、2019年5月の大統領就任以来、繰り返し明言している。憲法順守は大統領として当然の発言だが、しかしウクライナのNATO加盟はプーチンの受け入れるところではない。これは危険なゲームに見える。
ロシアの反発を考えると、ウクライナは大変危険な選択をしたように思えてならない。今回、プーチンとしては、ゼレンスキー政権崩壊と現行憲法停止を視野にウクライナに侵攻したに違いない。
ではウクライナは、憲法改正で将来のEUそしてNATOへの加盟がうたうことをなぜしてしまったのか。そもそもウクライナ側からすれば、問題の発端はロシアの支援を受けた親ロシア派住民による、2014年のクリミア自治共和国の独立宣言（その後、ロシアによるクリミア併合）、あるいはウクライナ東部の「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」の独立宣言、に際してのロシアの武力侵攻なのだろう。そこで侵攻に無力であったことが、憲法改正にEUそしてNATOへの将来加盟を入れた理由だとされている。その意味で原因を作ったのは、もともとはロシアだというのが、ウクライナ側の言い分だろう。それも理解できるが、憲法改正でNATO加盟をうたったことは、今回のロシアの軍事侵攻につながっており、私は、憲法改正は戦争を回避するという観点から言えば政治的には間違いだったと感じる。(そもそも、NATOの側では現に紛争している地域や国がNATOに加わることには、紛争に巻き込まれること、この場合はロシアとの全面対決になるので慎重にならざるを得ない。ウクライナがロシアとの紛争を抱えたまま、NATOに加わることはそもそもハードルが高い。冷静に考えれば、ロシアとの緊張を高める憲法でのNATO加盟の表明は、NATO加盟そのものを難しくした)。
この憲法改正への意趣返しと思えるのは、2019年4月、プーチンが二つの人民共和国の住民に対して、ロシアのパスポートの発行を認めたこと。大統領が交代する、政治空白期を狙って、ウクライナ政府の存在を、公然と否定したやり方であることを、ウクライナ側も感じたはずである。そしてゼレンスキーも何もしなかったわけではない。たとえばゼレンスキーのもとで、「ウクライナ化」の政策が進んだ。2020年から、義務教育がウクライナ語に切り替えられ、ロシア語の広告が禁止されている。こうした「ウクライナ化」は文化面でのロシア離れにつながるわけで、プーチンとしては、面白くなかったに違いない(ウクライナの人たちにすれば、かつてロシア帝国の時代にウクライナ語が禁止されたことを思い起こして欲しいと言うことだろう。それもわかるが、言語問題はとてもデリケートで少数派への配慮が常に必要だ)。結果は、ロシアによる2022年2月の二つの人民共和国の独立承認に続く今回の軍事侵攻である。
ウクライナが2019年に憲法を改正したことは、NATO参加の旗印を上げてロシアへの敵対を示し、ロシアとの緊張状態にウクライナを置いたように見える。そしてナショナリズムの高揚のなかで大統領選挙選を戦ったゼレンスキーは、ウクライナ化を進め、クリミア回復を唱え、ロシアとの緊張をさらに高めたように見える。おおもとの原因は、ロシアにあるというウクライナの主張も理解できるが、ウクライナ自身がただ一つの方針だけを国の方針として示し、ゼレンスキーがその方向を事実歩んだこと（具体的にはミンスク合意を無視して内戦を続けたこと）が、ロシアの武力介入を誘ったように（しかもそれはロシアとの緊張を高めてNATO加盟を事実上困難にする）私には見える。ロシアが一方的に攻めたのではなく、ウクライナがNATO寄り姿勢を強めたことが、ロシアの反発を招いたというのが今回の侵攻の本質である。確かに武力侵攻はロシアに非があるが、ウクライナ側も主戦論に偏っていたように見える。
ただしロシアの侵攻は期せずして、ウクライナの国論を一致させ、ロシアとの融和論は一蹴されることになった。その意味でロシアは武力侵攻により、大きな戦略ミスを犯したのである。国民を殺戮され国土を蹂躙されたウクライナがロシアを良き隣人として認めさらにロシアと関係を修復するには、相当な時間が必要だろう。武力侵攻により信頼関係を根本的に崩したのはロシアであって、ロシアは、より長期的な観点からいえば、ウクライナに対して原罪を背負ったといえる。ロシアはウクライナに対して、劣位にたつことになったとさえいえる。
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