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日本よりも「強い!!」 デンマークの高賃金を支える労働組合

ここ最近、日本の経済ニュースでは「賃上げ」に関するヘッドラインを多く見かけるようになりました。

このまま賃上げが順調に続けば、30年続いた停滞デフレ社会の終わりも近いのかもしれません。

さて、ここで注目を浴びるのが労働組合。

「春闘」の労使交渉で、賃上げに合意する大企業が多いという話なので、「労働組合が頑張った」ということなのかもしれませんが・・・。

組合のありがたみを感じる会社員はさほど多くないのではないでしょうか。

それもそのはず。日本での組合の加入率はおよそ16%ぐらい。ほとんどの人は組合に加入していないというのが実態だったりします(出典: 令和5年労働組合基礎調査の概況

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さて、ところ変わり、デンマークでの組合加入率を見てみると・・・

驚きの68%!!
(出典: Increasing number of trade union members in 2022)

これはOECD加盟国の中でもトップクラスの比率で、デンマークにおける労働組合の影響力の強さを表しています。

(まぁ、正確にいうとデンマークでは任意の失業保険に入るためには労働組合に入らないといけないので、加入率は自然と上がるという背景もありますけどね)

そしてデンマークでは、日本で多く見られる企業別組合はほとんどなく、産業別組合という形態をもつ組合がメインという特徴があります。

産業別組合では、飲食業界向けの組合、先生向けの組合、お医者さん向けの組合、技術者向けの組合、・・・と産業に特化した労働組合がいくつもあります。

なので労働者は自分の職種にあった労働組合を選び、そこに加入するイメージです。

産業全体で組合を組織化しているので、産業全体に対する交渉力が圧倒的に強い。もちろん企業だけでなく、政府に対する交渉や圧力も活発です。

デンマークの労働組合は産業ごとに大企業群や政府機関と交渉して、産業全体としての労使案(Collective Agreement)を締結します。

この労使案が、その産業における基本的な労働条件となり、組合と交渉していない中小企業にとっても意識せざる得ない基準になります。

そのため、労働組合が頑張ると、産業全体や労働者全員の労働環境が良くなりやすい感じ。

だからか分かりませんが、デンマークの平均年収はOECD諸国の平均を上回る形で推移しています。

出所:OECD Data Explorer (https://data-explorer.oecd.org)

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一方で、日本の労働組合の多くは企業別組合という形式。

会社ごとに異なる労働組合があるので、会社の事情に合わせた労使交渉ができるという特徴があります。(大昔の高度成長期には「企業別組合は日本的経営の三種の神器のひとつ」といわれていたこともあります)

ですが、会社ごとに労使交渉しちゃうので、その結果が産業全体や労働者全員に普及しにくかったり・・・。

それに、個人的な経験で言うと、企業別組合は組合としてほとんど機能していないような気もします。僕が日本で働いていた会社での組合は、会社と交渉するというよりも寄り添っており、存在意義がよくわかりませんでした😅

とはいえ、前出の日経新聞の記事によると2024年の賃上げ交渉は23年を凌ぐ勢いだそう。その勢いを日本全体に行き渡せられるように労働組合には頑張って欲しいなぁと思います。

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そうそう、デンマークの労働組合には日本の労働組合よりも実用的な側面もあります。

例えばですが、仕事探しの斡旋をしてくれたり、スキルアップのためのワークショップがあったり、ちょっとしたソーシャルイベントを開催してくれたりと、組合員にとってメリットが結構あります。

実は、僕もこちらでIT分野で働く人向けの組合「PROSA」に加入しているので、次回は僕が実際に体験したデンマークの組合のメリットを紹介しようと思います〜。

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