キュスターヴ・ル・ボン 「群衆心理」 砂粒の中の一粒のようなもの
群衆に特有な性質の出現には、種々な原因がある。第一の原因は、次のようなものである。
すなわち、群衆中の個人は、単に大勢の中にいるという事実だけで、一種不可抗的な力を感ずるようになる。これがために、本能のままに任せることがある。単独のときならば、当然それを抑えたでもあろうに。その群衆に名目がなく、従って責任のないときには、常に個人を抑制する責任観念が完全に消滅してしまうだけに、いっそう容易に本能に負けてしまうのである。
第二の原因である精神的感染というもまた、群衆の特製の発揮