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「毎日ころころ、時々ふわふわ…生きた証のホコリや髪の毛を集めて、しみじみ…1年かけて大掃除」

母が専業主婦ということもあり、掃除や洗濯を毎日するのは当たり前という家庭で育った私は、生まれた時から清潔な環境で暮らせていた方だと思う。
19歳まで住んでいた家は築50年以上の趣のある古民家というよりボロ家だった。何しろ畳の上にカマドウマ、浴室にナメクジがいる…なんてことは日常茶飯事で、屋内に虫が出没しても驚くことはなかった。それほど、年季の入った家だったと思う。
 
そのせいか母は、少しでも家を清潔に保つために、念入りに掃除していた気がする。起床したらすぐにカーテンを開け、換気のために窓を少しずつ開ける。玄関はほうきで掃き、それぞれの部屋は必ず掃除機をかけていた。そして多少曇っていても、雨が降らない限り、洗濯物は必ず外に干し、自然の風や日光の力で乾かしていた。天気さえ良ければ布団もまめに干していた。
 
カマドウマやナメクジなんて縁のない、木の匂いが香る新築の家に引っ越してからも、母の清潔のルーティーンは変わることはなかった。せっかくの新築だから、きれいな状態をキープしたいと当初は、月に一度ほどフローリングにワックスをかけるほどだった。某レンタル業者からフロアモップを届けてもらい、床をモップがけするのは私の役目になった。母は相変わらず、朝一番にカーテンを開け、窓を少しずつ開けて換気をし、広くなった玄関はほうきで掃き、部屋数が多くなっても各部屋、掃除機をかけて回った。トイレ掃除、浴室掃除にも余念がない。毎日欠かさず掃除し、水回りに関しては、モップを届けてもらっている業者経由で購入しているカビの発生を抑える洗剤も駆使して、磨いている。おかげで築20年以上経過したわりに、水回りのカビは少ない方だと思う。
 
洗濯に関しても、決して洗濯物をためることなく、こまめに洗い続けている。(母の場合、ゴミもため込むことなく、毎回確実に市指定のゴミ袋に捨てている。)そして前述した通り、引っ越した後も、雨が降らない限り外に干している。専業主婦として、在宅していることが多いからできることで、フルタイムで勤めている方からすれば、外干しはいちいち外に出したり、取り込んだり、手間がかかる分、贅沢なことかもしれない。家族四人分を仕分けして、毎日4回ほど洗濯機を回しているので、それなりに水もかかるが、母は、菌が増殖しないうちにこまめに洗濯することも清潔を保つために大事なことで、高級な服をたまにクリーニングに出して着るより、安物でも毎日家で洗濯できる衣類を着回した方が、清潔で健康にも良いという考えらしく、なるほどなと思う。
 
母のきれい好きは人一倍、健康に気を遣っているからかもしれない。私が子どもだった頃、母は体調を崩しがちで病院にもかかっていたが、薬にばかり頼りたくないと自力で健康を維持するための方法を編み出した。朝一番に窓を開けて換気することや、早朝散歩することが健康の秘訣だという。なぜ朝にこだわるのかというと、日中より朝の空気が澄んできれいな気がするから、その空気を吸いたいのだそうだ。どんなに寒くても朝の空気を吸うと、元気でいられると今も毎日散歩を続けている。それから朝に限らず、換気マニアの母は、自分がいる部屋の窓やドアを必ず少しずつ開けていて、冬は隙間風だらけで寒いくらいだ。部屋に取り付けられている換気扇も日中はほぼずっと回っている。ここ数年のコロナ禍で換気が重要、しかも一ヶ所ではなく二方向からの換気が効果的なんて言われるようになったが、うちは母のおかげでコロナ禍以前から、換気の習慣がついていたから良かったかもしれない。
 
それからマスク。花粉症でもないのに、母はホコリなどを吸わないようにと、マスクをつけていることが多かった。私自身はホコリアレルギーということもあり、アレルギーを発症して以来、掃除の時はマスクをするようにしていた。つまりマスク習慣も我が家の場合、コロナ禍以前から習慣づいており、マスク不足の頃もそこそこストックがあり、困ることはなかった。健康マニアの母のおかげで、うがい薬でうがいすることも、毎日の歯磨きとセットで昔から習慣になっていた。
 
10年ほど前から猫を飼い始めたこともあり、ますます母のきれい好きは加速した気がする。掃除機がけはさらに念入りになったし、洗濯の回数も増えた。とはいえ、掃除機や洗濯だけで猫の毛は取りきれるものでもない。そこで私が担ったのは、「ころころ係」。掃除機で吸った後のカーペットなど布類の上をころころすると、猫の毛以上に、家族の髪の毛やホコリが取れて、気持ち良い。正直言って、昔ながらの掃除機を使ったところで、吸引力はそれほど強くなく、取りきれていない部分が多い。お高い掃除機ならともかく、格安の掃除機なら、ころころの方が断然、毛やホコリは取れる。母もころころの威力は実感しているが、ころころのシートをいちいち剥がして替えるのが面倒というか、上手く剥がせないらしく、よっぽど使いたい時しかころころは使わない。
 
掃除好きの母でも、ころころは苦手ということもあり、私が率先して、カーペットやマットなどは毎日ころころしている。ごっそり猫や人間の毛が取れると本当に気分がすっきりする。あれほど母がまめに掃除機をかけていても、こんなに残っているのかと気づくと、掃除機なんて意味ないんじゃないかと思うほどだ。毛以外の固形のものはさすがに掃除機の方が吸引できるから、カーペット類の掃除は「掃除機+ころころ」がマストだと思う。
 
猫を飼い始めた頃から母は病人の介護にも追われ始めたため、それ以前ほど、掃除に手をかけられなくなった面もある。その分私が、家族が病院に出かけた隙に、無人になった家を掃除することが増えた。ころころは毎日しているものの、ホコリを取ることは毎日はできず、誰もいない時に、ふわふわの使い捨てハンディーモップを使い、各部屋のホコリを取っている。数ヶ月に一度、家族が病院に出かけるタイミングを狙うため、大々的なホコリ取りは年に数回しかできない。しかしその年に数回を、大掃除の日と決め、1年かけて各部屋の大掃除をしている。そもそも師走や年末に大掃除というのは、時間が足りない。しかもその時期は寒い。
 
風呂場の天井や壁など隈なくウェットシートで磨き、その後乾いたシートでさらに拭く。天井の角のこまかな汚れも手が届くようにハシゴを使って上り、ウェットティッシュでごしごしする。掃除をしているうちに身についたことだが、汚れがひどい部分は雑巾を使うより、ウェットティッシュの方が効果的だ。サッシのレーンや窓のフチなど黒くなりやすい部分は、ジョウロを使って水で流し、その後、ウェットティッシュを割り箸でつかみ、かつて流行った某有名人の〇〇棒の理屈で、割り箸にウェットティッシュをからめて拭き取るとけっこう汚れが落ちる。サッシや窓はなるべく夏場の晴れて暑い日、すぐに水分が蒸発してくれる日にその掃除を決行している。うちには高圧洗浄機なんてないので、長いホースがシャワー状になるヘッドを使って、夏の一番暑い時期に、窓や網戸、外壁の水洗いをする。労力が要ることなので、年に一度しかできない。
 
浴室の大掃除は梅雨になる前と、冬になる前の年に2回ほど。そして個人の部屋以外、居間など共用スペースや座敷も家族がいない日を狙って、上の方から順番にふわふわでホコリを取り、特にホコリがたまっていそうな部分は念入りにふわふわする。羽毛のようにきれいなハンディーモップがホコリで黒くなるのを見ると、ころころの時と同じく、やっぱり達成感がある。こんなに汚れがあったのかと、ごっそりとれると快感さえ覚える。照明のカサにもいつの間にかホコリはたまっている。それも丁寧にふわふわする。それからシーリングライトの場合、夏が過ぎた頃に、光に集まり、溜まった小さな虫の死骸も取り除くために、一度外して掃除している。その時もふわふわが活躍してくれる。ふわふわでホコリを取った後は、母のように掃除機をかけ、その後、床ならフローリング用のウェットシートで拭き掃除をして完了。そんなことを各部屋で繰り返しているうちに、あっと言う間に1年は過ぎる。年に数回しかない、家族不在の日に行う掃除がいわゆる大掃除であり、神棚はなるべく師走間際に掃除している。
水を使う大掃除はなるべく夏場、虫がいなくなった時期に照明の掃除、神棚は師走頃など、季節ごとに合った場所を選ぶのも、1年かけて大掃除するコツだと思う。
 
しかしその1年かけての大掃除のみで暮らせているのは、忙しいながらも、日々母が掃除機をかけてくれているからだと思う。大掃除とは言えずとも、トイレや浴室、キッチンも使用する度に汚れが残らないように、なるべく汚れを落としてくれているから、清潔が保たれているとのだと思う。
 
ここ数年、私は実家と借りている部屋の往復生活になったため、毎日実家を掃除することはできなくなったけれど、一人暮らしの部屋でも、母に教えられた清潔のルールを実践できている気がする。起きたら換気をして、掃除機をかけ、やっぱり掃除機以上の威力を発揮してくれる、ころころが楽しくて、毎日ころころ、ころころしている。一人分だから、洗濯物はためて洗うこともできるけれど、少量でも汚れがひどくならないうちに、毎日洗濯している。おかげで衣類も清潔をキープできていると思う。実家と違い、一人だから浴室はお風呂に入り次第、お湯を抜き、すぐに掃除するようにした。そして一人暮らしの部屋でも時々、ふわふわでホコリを取っている。物が多い部屋なので、見えない部分にホコリが溜まってしまっているかもしれない。しかし特にトイレはトイレットペーパーでホコリが溜まりやすいので、定期的にふわふわとウェットシートを使ってホコリを取っている。
 
実家に帰った時は、何より一番に、ころころをしている。数日分溜まった猫や人間の髪の毛がごっそり取れるので、すっきりする。取れた分だけ、実家で家族がちゃんと生きていた気がしてうれしくもなる。髪の毛やホコリがひとつも落ちていない、きれいすぎる家だと、生活感がなさすぎて寂しい。汚れた分だけ、猫も家族も一生懸命この家で生きていた実感が湧くから、掃除し甲斐がある。私はみんなが生活した痕跡をころころで拾いたいのかもしれない。それが楽しいのかもしれない。母もそうなのかもしれない。家族が散らかした家を掃除して、ホコリやゴミを掃除機で吸い取ることで、家族が生きた証を確かめているのかもしれない。私は一人暮らしをしていても、ころころや掃除機にゴミが溜まる分だけ、よく生きたなと充足感が得られる。きれいになった部屋でまた今日もがんばって生活しようと思える。だから私の清潔のマイルールは、母から伝授された掃除方法も取り入れつつ、毎日ころころ、時々ふわふわ、生きた証のホコリや髪の毛を眺めてしみじみ…1年かけて大掃除、それを繰り返しながら生活することです。
 
大昔と比べたらライフスタイルは様変わりし、在宅ワークが浸透しつつある今でも、毎日掃除することは簡単なことではないかもしれない。真面目な専業主婦のように、日々完璧に家事をこなす必要もないかもしれない。でも、ころころくらいなら隙間時間にちょっとした運動にもなるし、毎日ころころ習慣は良い気がする。母と違って料理は苦手だし、何事も手抜きしつつ、ぐうたら生きている私でさえ、ころころだけは10年以上毎日実践できている。なので、おそらく誰でも生活に取り入れやすい、清潔の第一歩だと思う。主に私はカーペットなど布製品をころころしているけれど、フローリング用のころころも売っているので、ころころは床が多い家でも使える便利掃除グッズ。最初はうまく剥がせなくても、コツをつかんで慣れれば、新しいシートに替えることもそれほど難しくはない。生活痕を確かめ、生きた実感を味わい、感慨深い気持ちに浸るため(ちょっとマニアック?)にも、ころころは本当にお勧めです。ころころ、ふわふわして、しみじみするのはいかがですか?

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