『鼓動暗号』2019.11.05



カンデラに火を灯すなけなしの心、狭い通路に敷きつめられた毛布、まっている。きみはおそらく、このそらの下にいる、希望は繋がっている。しんじていた、しんじていた、しんじていた。意識は宙に、とどかせたいのは、苦しいと泣くこの胸の深いところ。きみの心臓から、動脈と動脈をむすぶ、知りあいたいけれど。互いの鼓動だけでなみだを流しあっている、わかるのは暗号のような、きみの生だけ。生きているとわかるだけ、それだけ、けれどあたたかいから、なみだは混じりあう、いっしょになる、ひとつの苦しみをさわりあって、きみとこの世界をあいせるように。二つのちいさな苦しみにならないように、繋ぐ。明るい場所はせまくてもいい。二つのちいさな灯りになりませんように。火を灯す、脚先から燃えてゆく、じわじわと蝕まれていく互いの身体に、ふれあって。いたみを共有して。灰になった半身を、たがいの肺に入れ込んで、混じりあい、ふくれて、新しい火を灯して。きみの苦しみが、固結びした動脈から、ぼくへ流れ込んでくるから、そうして、きみをふくめて、世界をあいすると誓い、きみの鼓動をよみとく楽譜をつくる。美しい世界は、きみと共有する苦しみにある。



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