『許し』2019.12.16




蜘蛛の網に引っかかったような気分。
洗っても許してもらえない水道管の途中、指で汚れを掬っては泣いている。
払ってもふわり、纏わりつく悲しみが、私を遠ざけてゆく。
まともな日常から、口元へ引っ張られて。
黴びたタイルを裸足で踏む。
皮膚を伝う泡は綺麗で、何度も擦る。
死にたいって言ったら、貴方は何もかも忘れてしまう。
死んだら、泣いてくれる。
「したい、なんて意味のない言葉だよ」
貴方はそう言って、薬を飲んだ。
ベットシーツ。這うように潜り込んで、
想像する。夢みたいな日常。
何もかも許されて、この気分から手を離してもらえる日へ、貴方と。




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