『深夜図書館』2019.10.19



深夜の図書館に恐ろしい孤独が立っている。わたしは彼と約束をしていた。紙をめくる音がする度、彼は無機質な伝達をして、壁一面の本棚の間を更に奥へ導く。淡い月明かりが照らすステンドグラスが、より孤独と寄り添う為の、彼と私の密会を援護する。優しい語りと、破裂しそうになるほど、強く流れ込んでくる単語。連なり、文字列から知識へ。私は話さない彼と、図書館で共に本を読む。誰もいないその場所で、時間だけが過ぎてゆく。深夜の月明かりと彼と。私は、会いたいのはどの知識なのか、わからないまま、揺られる。彼の導くまま、身を委ねて、紙をめくる音を何度もさせ、遠くまで行く。独りの時間。言葉を噛み、飲みこみ、吐き出しては、私の知りたかった文字列を食べてゆく。彼と食べる温かい食事。彼は話さないで、更に奥へ導き、本棚の間を抜ける、静寂のステンドグラス。彼と紙の匂い。遠くまで。深夜の図書館に、孤独が立っている。私は彼と、月明かりの下で密会する。


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