『寝ぼけ眼の寒トンネル』2019.11.24




かなしみは花を咲かせている。
鮮やかでめだつ、わすれられない色で。
わたしはあなたをまっていた。
凍えた街に、しろくなった息が、かわいそうを雪みたいに
わたしをつつんで、むなしさでころされて
しまいそうな道路だった。
どうしてあるのかも、わからないレンガ造りの、
雑草の生えたトンネルが、あなたをその中心に映していて
悲しみの花が、その右足の下で潰れていた。
わたしは、あなたが、すきだった。
このせかいは、こういうせかいだったから、
あいすること、わすれないでいられるのでしょう。
白い息は空へ、温かい飲み物が、かなしみをわすれるまで。

踏まれた花をわすれるころ、わたしたちはそれをノスタルジーと呼ぶ。








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