『陽炎』2019.10.13



滴った汗が地面に吸い込まれていく。側溝に流れた記憶が、殴りつける揺めきを焦燥に変え僕らの延髄に響く昨日。海が蒸発した。既に始まっている、終末の木曜日が遠のく「なぁ」彼は赤く焼きついた空の真下で、電線の切れたその場所を嘆く「知らなかった」空が遠い。煙の上がる駐車場、猫の蹲る白線が明日へ繋がっている。階段を降る僕らは息を切らしていた。上履きを落として転げる音を後ろに、今しか、屋上に戻されている「知らない」彼は頭を振りフェンスを掴んで飛び乗る。「空からゴミ袋が降ってきたよ」幼稚園バスから降りた女の子が指差して、母親は目を見開く。僕らは息を切らして、階段を駆け下りて行く、鴉の鳴く赤い赤い空。「なぁ、どうして」手を引いて倒れ込む駐車場の砂利、揺らめいて熱を持つ昨日。叫び散らす彼は喉から血を流し、僕らは明日は向かっている、焼けつく記憶。閉じられて錆びたマンホールに鎖をかけた彼は、安堵の息をついた、削れるほど刃物を突き立てて。片手を折り曲げ。フェンスを飛び越える、何度も、僕らは明日は向かっていく、息を切らして「知らない」。許されない頭を打ち付ける、また上履きを捨てて転げ落ちる「ゴミ袋みたいだよ、俺ら」。僕は、首を振ったんだ。「明日へ向かっているだけだよ」焼け付いた赤い赤い、遠い空へ落ちていく。揺めき。また息を切らす昨日。僕らは明日へ向かっていく。





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