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詩や、遊んだ文章など

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特殊な感じで書いた文章をまとめます。暗いのもあります。
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#ショートストーリー

短編『MV』

「お兄さん、悪いんだけどさ」  若い女の子だった。夕日に照らされる路地裏の壁に寄りかかっ…

「迷惑と思ってくれたら」2019.12.10

やってしまった、と妹から連絡が来た。その手編みのマフラーは被害者男性の自宅ポストに押し込…

「少女と花と殺人」2019.12.09

溺れた花を燃やす少女の背中に骨が浮いている。「私はどうして泣かないのかな」「どうしてだろ…

『曲』2019.11.26

溶けると刺さるが両立する 世界のうろこを剥がした。 不味い、と吐きだした舌の先 滴る金の粒…

『寝ぼけ眼の寒トンネル』2019.11.24

かなしみは花を咲かせている。 鮮やかでめだつ、わすれられない色で。 わたしはあなたをまって…

『スワロウテイル』2019.10.15

あざとい針で刺されるような衝撃を、彼女と出会ったときに受けた。彼女は草むらで寝そべってい…

『金木犀』2019.10.14

鈴虫の鳴き声、黄昏の包む夕暮れの吐息が冷えた。あの人は自転車をひいて、わたしの隣にいる。駅前の大通りを抜けていく。裏通りの公園には、タイヤ跡を追う学校の友達、家族と湯の沸く火のついていないストーブが音を鳴らして、わたし。木々に混ざる塾帰りの暗記がまだ、窓から吹き込む淡い香りを身体に染み込ませた食パンを頬張る朝に膨らむ。まだマフラーはいらない、と手を振った。ひび割れた硝子の空気を吸う受験日の、手を繋いだ二人の未来。せんぱいたち。食べていない冷蔵庫のケーキ、二階に向けて声をかける

『陽炎』2019.10.13

滴った汗が地面に吸い込まれていく。側溝に流れた記憶が、殴りつける揺めきを焦燥に変え僕らの…

『東京』2019.10.11

僕たちは六月の雨を忘れてしまった。蒸し暑くなる前、透き通る滝のような水縹の街並。時が止ま…

散文詩『記憶のドラゴン』2019.9.30

サグラダファミリアは青銅色の板に閉じ込められた. 警告だ, (洗脳しよう). 錆びた鎧を着なけれ…