見出し画像

フランスと日本で「役者をする」違い

わああ…お久しぶりです(笑)
前回の投稿から約5ヶ月。この間、一体何をしていたかというと…
「どうやったら日本でも役者を続けられるんだああああーーーー」
という問題に向き合っていました。

帰国してから早8ヶ月。
早速、事務所オーディションを受けたり、キャスティング紹介してくれるサービスに登録したり、ワークショップ受けたり、人生初のミスコンに出てみたりw、小劇団の公演に出させてもらったり…とりあえず『始めてみました』。

でも、正直、フランスと日本で役者をするって違いすぎて、日本の方が断然難しいと感じています…。
最近は、エンジンをかけてもかけてもつかない車のような気分(笑)
前進したいのに進まない、自分の中で「ブルンブルン」だけ言ってる(笑)

ということで今日は、【フランスと日本で役者をする際の違い】を列挙したいと思います。

1. オーディション情報への有り付きやすさ

日本:「映画館で見るような映画・テレビで見るようなドラマ」のオーディション情報が一般公開されているのを見たことがありません。よって、そういうメジャーどころの情報を持ったよほどの事務所にでも入らないと、そもそもオーディションの土俵にさえ上がれません。

フランス:かなり一般公開されています。無料のFacebookグループに入ったり、色々な事務所のSNSをフォローしておくだけで、「映画館で見るような映画・テレビで見るようなドラマ」のオーディション情報が入ってくるので、あとは自分に合う役が出てくるのを待つだけ。

私は数ヶ月、フランスの事務所なしでフリーの役者をしていましたが、その間にも有名な監督の映画オーディションに数回出ることができました。
そうそう、今年Huluで公開される、山下智久の主演ドラマ『神の雫』のオーディションも、何十回もFacebookグループで見たなあ。
日本のドラマでも、キャスティングがフランスでされる場合は、フランス流で一般公募するんですね。

その後、フランスの事務所に入りましたが、元々オーディション情報には十分有り付けていたので、どちらかというとイギリスとかのオーディション情報まで見てくれるようになってよかったな、という感じです。
事務所に入らなくても道はある、というのはとても良いなあと思います。

役者は「100回オーディションして1回受かるか」と言われるくらい、報われにくい存在です(笑)
でも、オーディションが受けられるだけでも、日々のやる気につながります。
1回でも呼び戻されたら【やる気5倍】、最終選考にまで進めた日には、【1年分くらいやる気】が湧いてきます。

今は、日本でオーディション情報を見つけるところから苦戦しているので、活力をくれる日々のイベントがない…。
ま、他のクリエイティブな活動で補っています。

2. 事務所の養成所の有無

じゃあ日本でもさっさと事務所を見つけて、オーディション情報を得ればいい!となるのですが、事務所を受ける上でややこしいのが「直所属になるとは限らない」ということ。

そう、養成所(等)の存在です。

日本:事務所のオーディションだと思っていったら、養成所のオーディションだったり、ワークショップへのお誘いだったり。「仕事を紹介できる一人前の役者」としてマネジメントしてくれる事務所・マネジャーが少ない反面、「簡単に合格させてくれる」事務所付属の養成所がありふれている。

フランス:事務所に養成所・ワークショップなどは一切付属していません。それどころか、InstagramやTwitterでよく見かける「新人限定!映画出演の可能性!特典は事務所所属!夢が叶う!」みたいな広告もイベントも一切ありません。

逆に言うと、フランスの事務所は黙ってたら名前も顔も表れてはくれないので、自分から積極的にウェブサイトをリサーチして、宣伝素材送って、「売り込む」必要があります。そして、「じゃあ契約しよう」となるハードルはかなり高いです。

でも、せめて、売り込んで仮に契約できたら、1日目から「仕事を紹介できる一人前の役者」です。
事務所も、契約した役者に仕事を紹介して合格してもらって、ギャラから手数料を得るので、経営上、必死で仕事を紹介してきてくれます。
養成所の月謝で経営を成り立たせるか、役者のギャラで成り立たせるか…そう言うと「フランスの事務所は、ギャラの取り分がかなり高いのでは?」と思われるかもしれません。

いえ、フランスは【1~2割】が一般的です。対して日本は【5割以上】と聞きます。
高い入学金と月謝を払って養成所に通い、狭き門を通って正式に事務所に所属できたとしても、ギャラの半分以上を持っていかれる。わお…

でも、いいんです、それでも事務所入ってオーディション紹介してもらって《演技の仕事がしたい!!!》
だから、せめて、事務所の直所属オーディションと養成所オーディションを、分かりにくく混ぜないで…(切実)

3. オーディションで見られる要素

日本に帰国して、事務所オーディションを受ける中で(上記のように養成所のオーディションであることがほとんどでしたが)、選考基準にびっくりしました。なんで「応募用紙」に、全てのSNSハンドルとフォロワー数、家系を書くの…?

日本:選考はまず「プロフィール」の書類選考から。写真のルックスとフォロワー数が重要。実績は、朝ドラとかでない限りあまり評価されない。
(ちなみにこれはある業界人に聞いた話です。嘘だったらむしろ、教えてなだめて)

フランス:選考で初めに見られるのは、写真と実績動画(リール)。写真は「ルックスの良さ」ではなく、役の印象と合っているかをみる。もちろんこれも、「〇〇役は、もっと目が大きい人を想像してたからな」で落とされる可能性はあるので、同様に主観的です。が、せめて役作りの目線でルックスを評価される方が「どれくらい可愛いですか、痩せていますか」の目線で見られるより納得がいく…モデルじゃない、役者ですから。

また、写真は大目に見てくれることが多く、本当の第一審査は実績動画。大体3分くらいの動画を送るけど、見られるのは恐らく最初の10秒。その10秒の演技で興味を持たせられるか…というのは、もちろん厳しい世界。でも、どんなに無名でもフォロワー数いなくても、10秒は見てくれる。それは大きく重要な違いだと感じます。

むしろ、フォロワー数どころかSNS自体持っていない役者もいるくらいのフランスだったので、私も趣味くらいにしかやっておらず。
そんな中、日本で「この実績動画はいいんだけどねー、正直見ないから。で、フォロワー何人?」と聞かれた時の私は、なんとも言えぬ反応しかできませんでした(笑)

4. CMや企業案件の立ち位置

日本:事務所経由でもCM・企業案件が紹介される。むしろ、事務所数が多いからか、ほぼCM・企業案件しか紹介していない事務所もある。

フランス:事務所(役者が属する所謂「タレント事務所」)はCM・企業案件を紹介せず、映画・ドラマ・舞台などの案件のみ。その代わりに、「タレント事務所」は1社しか契約できない場合もある(ここは日本と似ているところ。)CM・企業案件は専用の「モデル・広告事務所」があり、こちらは「タレント事務所」に加えて、何社でも登録していい。ちなみに、エキストラは専用のウェブサービスに登録するだけ、事務所に紹介してもらうまでもない。

フランス(というか海外多数)に比べて、日本では「CMに出る」ことへの憧れ・推奨が強い気がします。これは、日本ではまだテレビが依然として見られている方だからかなと推測しています。

フランスでは、CM・企業案件はギャラが高いため、生活を維持するために「受けないといけない」案件という雰囲気で、日本のような「憧れ」はあまり感じません。むしろ、CM・企業案件だけやっていると「自分のことを役者と呼んでいいのかしら…」と悩むところ。だからこそパリでは、タレント事務所経由で大きな演技の仕事がもらえない時でも、何か「演じている」実績を作るために、自ら公演を打ったり、短編映画を撮影したり、自主プロジェクトが多く走っています。


これまで私が感じてきた両国で役者をする「大きな違い」はこんな感じです。
どうしてもフランスのやり方に慣れているため、「フランスはこうで…」と書くと日本に批判的に聞こえてしまうかもしれませんが、結局は「やり方が違う」というだけだと理解しています。どっちも一長一短ある。

日本に帰国したからには、日本でも活動の場を見つけたいことには変わりないので、自分のペースで、引き続き色々模索していこうと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?