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樹
2021年3月6日 10:49
ひさしぶりに会った友人は、スーツを着ていた。少し緊張しながら、声を掛ける。友人は、帰りの飛行機の時間までを、俺と会えないかと思って連絡してきたらしかった。「まさか、こっちに来てるとは思わなかったよ」と伝えると、「こっちで仕事があったからな。ついでだ、ついで!」と、笑いながらそっけなさそうに答えた。 「こっち来るんなら、前もって連絡くれれば良かったのに…」「ああ、でもこういう方がサプライ
2021年2月13日 17:39
夢を見ていた。高校生の俺と姉が歩いている。俺たちは、夜の散歩をしているようだった。市街地から離れているせいかこの辺りは、この時間になるとめっきり人通りが少なくなる。だが、今日に限ってさっきから何人もの人とすれ違っていた。姉は、すれ違う人たち全員にまるで顔見知りのように挨拶をしている。確かに、すれ違った人の中には何人か、顔見知りの人もいたのだが…。『知らない人に
2021年2月9日 23:18
「つまり…それはどういうことなんですか?」「あそこから来ている人がいるのかもしれないということですね」顧問は、そう言って、天を指差した。「でも、そんな話聞いたことありません」「そうですか?割と頻繁にあることなんですが…」そう言って、顧問は少し意外そうな顔をした。「頻繁に?」今度は、声が、少し震えていたかもしれない。「もしそういう人たちがいるんだとしたら、何故、全く噂が、立たない
2021年2月5日 07:07
「月で暮らしてたなんて、かぐや姫みたいですね」たぶん、何気ない感じで言えたと思う。「…そうだね」しばらく沈黙が流れた。この沈黙が、どういう意味の沈黙なのかと、俺はあれやこれやと考えを巡らせていた時、「でも、あの話は、実に興味深いよね?」顧問が、低い声でつぶやくように言った。「あの話って?」「かぐや姫です」「興味深いですか?童話ですよ?」 今の言い方は、ちょっと素っ気なさ過ぎ
2021年2月3日 07:52
「月では、地下に暮らしていたのよ」「地下?」姉が頷く。「クレーターから、地下に続く通路があるのよ」姉は、いつもこんな風に、まるで見てきたように話し始める。「地下には、大気が作られる装置があったから、宇宙から月に降り注いでいる放射線を防ぐことも出来たのよ」激しい気温差のある月の表面とは異なり、地下には太陽光発電システムのようなものが作動しており、常に快適な温度が保たれていたらしい。