見出し画像

摂食・嚥下チームアシスタントレポートVol.10 「姿勢と嚥下」 基礎編 〜姿勢のみかた〜

はじめに

 摂食嚥下チームアシスタントレポートにお越しいただき誠にありがとうございます。
前回のブログは『呼吸と嚥下』における「後頭下筋群」についてお伝えしました。今回から『姿勢と嚥下』という新たなテーマでお伝えしていきます。その第1回目は「姿勢&嚥下基礎・姿勢のみかた」になります。姿勢が変化すると、重心位置も変化します。重心位置が変化すると、筋緊張も変化します。嚥下関連筋もその例外ではなく、よりスムーズな嚥下を促すために姿勢への介入は重要だと考えます。そこで今回は重心位置の変化による筋緊張の変化を評価していきます。
現在、私たちアシスタントメンバーも共に学んでいます『呼吸と嚥下』の4回コースが絶賛開催中です!そして12月からは、『姿勢と嚥下』の4回コースが開催予定です!

note セミナー見出し-4

前回のレポートはこちら⬇

1.姿勢と嚥下の関係

*「姿勢と嚥下」導入動画をご覧ください!


姿勢と嚥下 基礎 神経機構

①神経機構:延髄の網様体には嚥下・咀嚼・呼吸の中枢があります。抗重力位での治療、つまり筋緊張の治療を行うことで脳幹機能が賦活し、これらの中枢が働きやすくなります。またベースの脳幹機能が向上することで大脳皮質の働きが向上します。
②高齢者の廃用症候群:廃用症候群は長期臥床や高齢によるサルコペニアで筋量が減り、姿勢保持・筋緊張の低下が起こり嚥下機能が阻害されます。姿勢保持・筋緊張の低下が起こることで、嚥下関連筋が働きにくくなり、スムーズな嚥下を促すために姿勢の介入は重要だと考えます。

まずは重心・支持基底面・床反力、アライメントについて知識を深めていきましょう。
重心と支持基底面の関係やアライメントを変えることで、どのように筋緊張や嚥下機能に変化があったのか?の効果判定が必要になります。 

2.重心について

身体重心の求め方

重心とは物体の質量中心であり、上半身重心(TH7~TH9)と下半身重心(大腿近位1/3)を結んだ中点です。成人男性では足底から身長の約56%、成人女性では約55%の位置にあり、そこから床に垂直に下ろした線を重心線といいます。

<重心線の通るところ>
【矢状面】
耳垂、肩峰、大転子、膝関節前面(膝蓋骨後面)、外果の前方になります。

姿勢アライメント

【前額面】
後頭隆起、椎骨棘突起、臀裂、両膝関節内側の中心、両内果間の中心になります。

姿勢アライメント 後ろ

3.支持基底面(BOS)と床反力について

支持基底面

支持基底面とは、身体が支持物に接している部分の外周によって作られた領域をいいます。
支持基底面が広く、重心線が支持基底面の中心に近いほど安定性は高まります。
また重心線から床へ下ろした所を足圧中心と言います。

重心線と床反力

床反力とは身体(主には足底)と床の接触部分から生じている反力のこと。
人は常に重力(外力)を受けて生活しています。その重力に対して押す力を床反力(外力)と言い、筋活動(内力)によって姿勢を保っていられることになります。
また床反力には上下だけでなく、左右や前後にも存在し加速度(推進力)が生じる事により人は動くことができます。

4.評価
【立位評価】

立位評価

まず、【矢状面・前額面】で重心・支持基底面の関係とアライメントを評価します。この時に、重心移動を行った場合の仮説を立てます。

【重心移動の評価】

重心移動の評価

・胸郭を後方から持って相手の姿勢と同じように自分の身体をシンクロさせ疑似的体験をしましょう。この時、被験者と自分の上半身重心(TH7)を合わせることも大切です。身長差がある場合は、高さを合わせながら介助する方法もあります。持つ手は掌屈や尺屈すると脇が開くので、中間位で持ち、できるだけ指は広げて広い手で保持します。

重心移動②

・相手との距離は、近すぎず遠すぎず重心をコントロールできる位置で介助します。手で動かすのではなく、相手の重心を意識しながら自分の重心を移動させて誘導していきます。相手が抵抗なく動く範囲で左右・上下・前後に動いてみます。代償が出そうなら戻し、代償なく動く範囲をみます。逆にどこまでいったらどのような代償が出るのかも確認すると相手の重心と支持基底面の関係がわかりやすいです。

重心移動③

・重心を動かした際にアライメントや筋緊張がどう変わったかをみます。仮説を検証しながらどこまで動いたら立ち直りなど、どのような現象が生じるのか、なぜそのようなことが起こるのかを考えましょう。例えば、頭や肩が重心線より前にいくと前方に荷重がかかるので腕を広げたり、膝を伸ばして腰を反らせたり・曲げて骨盤を後傾させたりする代償がみられます。
・また、アライメントや重心を正中に誘導しようとした時に何が制限因子になっているか1つ1つ手順を追って検証していくことになります。


【応用編】

応用編

・今回は胸郭からの介助方法でしたが、応用編として肩甲骨が原因だと考えた場合、肩甲骨を介助した状態で重心移動を行います。また腹圧の低下が原因だと考えた場合、腹圧をかけながら重心移動をするとどのような変化が起こるか?を効果判定していくことができます。

まとめ

 今回は、『姿勢と嚥下』の基礎・姿勢のみかたについてお話ししました。
①抗重力位で治療し、筋緊張を高めることで脳幹機能を賦活させると、延髄網様体にある嚥下・咀嚼・呼吸の中枢が働きやすくなります。また、廃用症候群により姿勢保持が難しい患者様にも筋緊張の治療を行うことで、嚥下関連筋が働きやすくなります。
②姿勢と嚥下の関係性において重心と支持基底面と床反力の関係性をみていく視点が重要です。重心と支持基底面の関係を変化させるとどのように筋緊張の変化が起こり、嚥下機能にどう変化するか評価・効果判定していきます。
立位・座位はどうなのか?食事をするときに前傾姿勢になるとどう筋緊張が変化するのか?全ての場面で見ていけるように日頃からの練習が必要になります。

実際の実技方法を動画にまとめています!noteを購入し、動画をご覧くださいね♪

おわりに

これからも解剖学や運動学、実技だけではなく、臨床で必要な思考過程も含めて共有させていただきます。同じ嚥下障害に悩む患者様を担当されているセラピストの皆さんに一人でも多く知っていただき、一緒に嚥下障害を治療していく仲間が増えることを私達摂食嚥下チーム一同願っております。一人でも多くの皆さんに知っていただけるよう、私達の活動を応援していただけると幸いです。今後も摂食・嚥下アシスタントレポートを宜しくお願い致します。

ごあんない
姿勢&嚥下4回コース申し込み開始!!

note セミナー見出し-4

 呼吸&嚥下4回コース開催!!

基礎知識から呼吸機能を部位別にどのように評価・治療していくのかを学べる内容になっています。4回コース購入にて、コース特典の実技練習会・相談会・復習用動画付きになっており、アフターフォローも充実した内容になっています。是非、チェックしてみてください👍

*この続きの姿勢&嚥下の基礎編『姿勢のみかた・立位の重心移動』の動画は、note購入後に下記の有料エリアにでご覧いだだけます!


ここから先は

15字

¥ 500

今後も摂食嚥下障害で苦しむ方をサポートする為に! 皆さんの臨床で役立つ摂食嚥下の情報を発信していきますので、宜しくお願いします!