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誰の命も、人生も、犠牲にしないファッション

大好きな友人のはらながまきこさんに紹介してもらった福島里枝ちゃん。パナマ帽の編み方を学ぶため、7万円を手にツテもないまま単身エクアドルに渡っちゃうツワモノです。
帰国した里枝ちゃんが先日わたしのFM那覇の番組「ナライブサンプラス」にゲスト出演して告知してくれたパナマ帽の展示会に行ってきました。

そこに並ぶパナマ帽はどれも素敵で、手にとってまじまじと眺めてさらに感嘆してしまうような逸品ばかり。エクアドルで出会ったパナマ帽づくりに携わる人たちの顔をひとりひとり思い浮かべるように語る里枝ちゃんにも感動しました。純粋でまっすぐな想いがこんこんと湧き出ているような感じ。

そして、この日里枝ちゃんが上映した映画「THE TRUE COST」は私のファッションに対する意識を根本から変えてしまうものでした。
ラナ・プラザでの悲劇は知っていたし、ファッションに関連した環境汚染のこともどこかで耳にしていたし、「ethical fashion」という単語も知っておりどんなブランドがあるか調べたことさえあるのに、現代のファッション業界のシステムの影、その代償がどれほど凄まじいものか私はわかっていなかった。
死者が1100人を超え、負傷者も2500人を超えたバングラデシュのラナ・プラザ倒壊事故のこと。BTコットンがインドの綿農家を30秒に1人の割合で自殺に追い込んでいること。服や靴の化学薬品を扱う工場の村々で水源が汚染され、多くの住民に癌や先天性の疾患、麻痺、奇形などを引き起こしていること、そして経済状況の厳しさゆえ母親が子供の死を待つしか無いようなケースが多発していること。プノンペンで衣料品工場労働者が生活に必要な最低賃金を求めたデモを行い、政府により警察や軍が投入された結果多くの死傷者が出ていたこと。大量生産された服は大量の廃棄ゴミの山々となり深刻な環境汚染を引き起こしていること。ニュースで見たか、少なくともどこかで耳にしたはずのトピックばかりなのに、しっかり向き合ってこなかった。そしてこれらすべてが、まさに「自分が着ている服」の話として繋がっていることにようやく思い至りました。

私も過去によくファストファッションの衣類を購入してきたし、引っ越しの際はH&Mの古着回収サービスに大量の服を持ち込みました。でも、H&Mは毎年12万トンの自社の売れ残り衣類をデンマークで焼却処分していたことが去年ニュースになってもいます。

「わりと良質なのにすごく安い」服。誰かが綿を栽培してるし、誰かが縫ってるし、誰かが加工してる。そしてその誰かは当然自分と同じように日々を営む人間である、という想像力が不足していたことを思い知らされました。現在のファストファッションのシステムはコストを丁寧に考えれば本来成り立つわけがないし、成り立っているように見えるのであればそれは何処かで誰かや何かが無理を強いられているということ。縫製工場で働く、娘と離れて暮らさざるを得なくなった23才のうら若き母親が語るのを聴きながら、ぼろぼろ涙がこぼれてしまった。わたしもこの非人道的なシステムに加担してきたんだな。映画が伝えていた現実は想像以上に凄惨なもので、里枝ちゃんが言った「私、殺人鬼じゃんと思った」という言葉は誇張ではなかったんだなと思います。
今この瞬間も着ている、誰かの人生や命と引き換えに作られたであろう血まみれの服を、このうえは捨てず、今後どんな風に大切に着ていこうかと思案中です。

すっかり『THE TRUE COST』の感想になってしまいましたが、きっとこれは里枝ちゃんが知ってほしかったことでもあるはず。この機会をくれた里枝ちゃんに心から感謝しています。

福島里枝ちゃんが今回展示しているパナマ帽はすべて、たどった工程や作った人の顔がわかる製品。私もこれから先は、そういうものだけを大切に買っていきたいなとしみじみ思いました。ちなみに、私の欲しかった帽子は会期2日目にして先約済みでした。。なので、お求め予定の方は、どうぞお早めにBARRAK 1へ。

『Hola Tejedoras わたしがボウシを売る理由』
2018年7月13日(金)〜7月29日(日)
11:00〜21:00 入場無料
場所: BARRAK1 沖縄県那覇市大道35-5

ありがとうございます!糧にさせていただきます。