見出し画像

デザインエンジニアを目指してみた

最近デザインエンジニアって話題がホットですよね。
身近でもデザインエンジニア目指してますって人、かなり増えてきました。
弊社でもチームが新しく作られたばかりで、まだ活動としては始まったばかりなのですが、徐々に案件にアサインされ動きつつあります。

デザインエンジニアの具体的な価値や動き方については、弊社メンバーがDesignshipにて発表してくださったので、こちらを見ていただけると学びになると思います。

そもそも何でこの記事を書こうと思ったかというと、自分は学生時代から現職まで、デザイナーとしてフロントエンド業務に関わらせて頂いていました。
社会人2年目も後半に差し掛かり、デザインエンジニアとしての知見がそれなりに溜まった気がしたので、改めてデザインエンジニアを目指して歩んできた気づきをまとめようと思った次第です。

そもそも何で開発とデザイン両方やろうと思ったか

もともと自分は大阪にあるECCコンピュータという情報系の専門学校に通っていて、WEB・UIデザインを学ぶ前にそもそもWEBとは何か、どうやってWEBサイトは作られているのかを、HTML & CSSのコーディングを通して学びました。
最初に仕組みを学び、今見ている画面がどうやって作られているのかを理解したとき、自分のデザインに対する興味はアートな興味よりも、それがどのようにして実現されるのか、ブラックボックスになっていた事柄を理解することに面白さを覚えたのがきっかけです。

ある日、個人制作としてオリジナルのサービスを作るという課題がありました。
当時はまだUI・UXという言葉も浸透しておらず、WEBデザインという言葉が主流でした。
当時のデザイナー・エンジニアの価値は、技術力やデザインスキルが重視されていた背景もあり、自分も技術への興味が強かったので、サービス企画も無難な内容で提出しました。

そこで、企画を担当していた講師に1ヶ月近く自分の出した企画案に対してひたすらダメ出しをされていました。「なんでこんなダメ出しするんや・・・早く作らせてくれや・・。」とか思いながら、企画を考え直しては跳ね返されをずっと繰り返していました。

その過程の中で、もともと"技術的に凄いものを作る"ことだけに注目していた自分が、何を作るべきなのか?、作った結果何が起きるのか?、作って何を解決できるようになるのか?、どう持続可能なのか? など、「何のために作るのか」を深く考えるようになり、事象を遡り原因を明らかにする事に楽しさを感じるようになりました。
「どう実現するか」を考えるエンジニアリング思考と、「誰に何を届けるのか」を考えるデザイン思考の両方に興味を持つようになり、デザインとエンジニアリング両方の知識を学びたいと感じるようになりました。

余談ですが、作りたがりの多い母校の学生にとって、この何度提出しても跳ね返される企画提出のフェーズは地獄と感じる人が多かったんですが、むしろ技術的には自力で伸びる人が多いので、サービスデザインをしっかり考えれるようになることを重点に置いてたんだなぁ、と今更になって理解しました。

デザインエンジニアを目指して、ぶち当たった障壁

そんな中、両方のスキルを活用するデザインエンジニアというものがあるらしいと知り、デザインエンジニアを目指して頑張るぞ〜!と息巻いて、開発・デザイン双方の経験を積んできました。

しかし、デザインエンジニアを目指すって中々しんどいです。

ロールモデルが少ないこともあって、組織内でデザインエンジニアの評価体制を作れる人もまだ多くは無いですし、評価者から見て評価がしづらい役割です。前例がとにかくないので、デザインエンジニアをどう評価していいのか、どう活躍してもらえばいいのかも、どこの組織もまだ模索中ではないでしょうか。

また、フロントエンドの経験を積んでからデザインを学び、デザインエンジニアとして活動される方がほとんどなので、エンジニアリングに関心のあるデザイナーが少なく、相談相手が少ないのも悩みの一つです。
エンジニアリングの学習範囲が広いので、デザイナー → エンジニアへの転身ハードルが高いのも、デザイナー出身のデザインエンジニアが少ない理由だと思います。

よくことあるごとに、何のためにデザインエンジニア目指してるんだろう…と悩んで答えが出ない時期もありました。
というのも、どこの組織もデザイナーが足りない環境なので、目の前の課題をなんとかしないといけないのもあり、ずるずるとデザイナーをしてしまっていつまでも開発の経験が積めなかったり、デザイナーの経験を積むほど、デザインの仕事が増えるのでさらに開発経験を積むことから遠のいていったりもしました。デザイナーが求められているのは嬉しいことですが、時にはその需要に流されずに、ありたい姿に向かう強い意志が求められる時もありました。

そしてなにより、デザインを学びながらエンジニアリングを学ぶので負荷もかかりました。
「デザイン1本でやったほうが、必要とされてるし、学習も断然楽だし、そっちのほうが絶対いいよなぁ・・・」「誰のために目指してるんだろう」とか思いながら一時期はモチベーションが落ちていたりもしました。

そんな中、軸を持ってデザインエンジニアという役割を目指してこれた理由の一つに、前職の先輩から聞いた言葉があります。
この言葉のおかげで、今でも自分のやっていることが必要なことだと信じて頑張れています。

「グラフィックデザイナーは紙の素材、ファッションデザイナーは服の生地について、どんな肌触りか? どんな質感になるか?など、世の中のデザイナーと呼ばれる職種の人たちはデザインする物の素材を理解している。
唯一、デジタル媒体を扱うデザイナーだけが、デザインする対象を理解しないままデザインをしてしまっている。」

デザイナーがエンジニアリングを学ぶことは本来正しいことなのだと、むしろ自分達がデザインしているものが何なのか分からずにデザインしている状況がおかしいのではないかと。
同世代がデザインについて深く学んでいく中、それまでエンジニアリングに"寄り道"をしている罪悪感のような感情でいた自分は、この言葉のおかげでデザインのために必要なことをやっていると信じれるようになりました。

結局、自分はエンジニアなのか、デザイナーなのか?

そうは言いつつ、やはりデザイナーなのかエンジニアなのか、どちらかに軸は置く必要があると思います。それは組織のどこに所属するのかという問題もありますし、デザイナーとして評価されるのか、エンジニアとして評価されるのかという評価基準や、自分の動き方に軸を作るために必要なことだと思います。

こういった兼務的な役割は、自分の軸がどこにあるのか確立しておかないと、自分の価値を見失いやすくなるからです。
なので最近は、アイデンティティはあくまでデザイナーという意識をより持つようになりました。

というのもフロントエンド側からの参入が多いからこそ、デザインの視点をチームにインストールしたり、デザイン側から見たエンジニアリングへの接続を最近は責務と捉えるようになってきました。
なので自分はデザインエンジニアとしての役割を持ちながらも、軸はデザイナーとして活動するようにしています。

UIデザインという役割に対して感じ続ける違和感

そもそもUIデザインとフロントエンドの接続の観点において、自分は以前から感じている違和感があります。

自分は主にUIデザインを強みに仕事をしていますが、Figmaを使ってデザインをするこの工程は、奥が深いもののデザインと呼ぶには狭義すぎる気がしています。

Figmaデータという、もはや実装されないモックアップの“絵”を作ることに何時間もの時間を割く今の現状が正しいのだろうか。
本来、細かい仕様をFigmaに書き殴ったり、何十ものFrameを作成して実装してすらない紙芝居を作る必要はあるのだろうか。
そこまでしてもデザイナーが想定していたものと違うなど、ミスコミュニケーションが後を立たないし、その仕様を伝えるコミュニケーションコストは本当に必要なんだろうか。

インタラクションや仕様について一番理解しているのは設計したデザイナー自身で、デザイナーがそのままデザイン実装してリリースしてしまえばこれらの問題はなくなります。それどころか、Figmaと実装の整合性・トークンや名称の統一など、多くの場面において実装とデザインの乖離がなくなっていくと考えています。

また、AR・VRなどのスマホで扱える技術や、サウンド・振動などのハプティクスとされるものが増えてきている中、Figmaを使った静的デザインだけで体験を完結させるのは表現の幅を殺しているようにも思えます。
そういう意味では、最近では一度Figmaという静的な世界から離れてみるのも良いような気がしています。

媒体の機能を利用したアプローチや、よりインタラクションを感じる表現など、実装の視点を取り入れることでより品質の高いUIデザインが可能になりますし、自分でデザインしたものは自分でデザインするのが本来あるべき姿のように感じています。

もちろん要求されるスキルセットは高く、理想に近づきにくいのも事実です。
しかし、最近ではフロントエンドエンジニアからデザインエンジニアになりたいという声が増えてきていて、エンジニア側からの歩み寄りを顕著に感じています。
そういった背景もあり、デザイナー出身者とエンジニア出身者で双方の視点を持つことから歩み寄り、最終的には垣根が排除されて、この違和感は消えてなくなる未来がくるような気もしています。

従来のデザイナーは見た目を作ることを重要視されていた名残なのか、細部のデザインを観察することに時間はかけつつも、エンジニアリングに学習時間を割く人は少ないように思います。デザインの細部を突き詰める職人的なデザイナーに対する賞賛の雰囲気は、美大出身のデザイナーが多いことや、デザイナーの専門性が"作ること"だった時代の名残かもしれない(?)

今後について

デザインエンジニアを目指していた関係上、自分の行ってきた仕事はフロントエンドとデザインの接続や、デザインプロセスの整備をすることが多いです。
フロントエンドとデザインの橋渡しとして活動したり、デザインプロセスを考える機会が今まで多くありました。
もちろん新規機能のデザインもしてきましたが、興味関心としては持続可能な仕組みを作ることに対して関心が強いので、そういった仕事を率先してやっていたと思います。

現状デザイナー人材の不足もあり、ジュニアデザイナーの作法に則っていないデザインがそのままリリースされてしまったり、降りてきた要件に従ってUIを作るだけの下請け的な動きをするデザイナーも少なくありません。

そういった環境に対して、デザインの目的から立ち返り、適切なアプローチのもと品質の高いデザインが実装されるような仕組みを作りたいと思っています。
そのためにはエンジニアリングの理解、上流工程の経験など多くの知見が必要ですが、今のデザインエンジニアチームは要件定義から実装まで一気通貫で行えるチームなので、多くの経験を積んでいきたいと思います。
そんなリードができるようなデザインエンジニアを目指して、精進していきます。

読んでいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?