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Amazarashiを聞いてわかる実存主義哲学(ヤスパース編)

Amazarashiを聞いてわかる実存主義哲学、ニーチェ編サルトル編ショーペンハウアー編の続編ノートです。

今回まとめるのは、ドイツの哲学者ヤスパース。ヤスパースの書いた哲学入門の読書メモをもとに読み解いていきます。まずは前回のノート(前編後編)をご覧ください。

哲学入門には重要なメッセージが凝縮されていますが、今回は、
 ・限界状況:自分の力ではどうしようもない壁のこと。限界状況に絶望し、回生することで人間の意識改革が可能となる。
 ・自分の弱さをと無力を認めること=哲学の根源
 ・思弁:哲学的な生活態度として、現在何が行われるべきか?という内省を繰り返すことを主張。
 ・真理は二人から始まる:思弁に加え、内省によって獲得したものを他者との交わりによって実現することをもう一つに哲学的な生活態度として主張。
というところに着目し、Amazarashiの歌詞で、どのように言語化されているかを見ていきます。

もう一度

1曲目は、「もう一度」。

この曲で限界状況は曲の最初で、次のように表現。

バイトの面接ばっくれて 雨雲眺めて不貞寝さ
ビールの空き缶で膨れた ゴミ袋で夢も潰れた
どっかで諦めていて 無表情に生きている
あまりに空っぽすぎて 途方に暮れちまうな
彼女が帰って来るまでに 言い訳を急いで思案する
何やってんだってしらけて どうでもいいやって居直る

なんか、超現実味のある始まり。無気力感ただよいますね。
ここから自分自身の弱さを認める主人公の哲学が始まります。

昨日から雨は止まない このままでは終わらない
敗北 挫折 絶望がラスボスじゃねぇ
自分自身にずっと負けてきた 勝てないわけないよ自分なら
僕が一番分かってる 僕の弱さなら

そして、自分自身に言い聞かせる思弁として、次のように歌い上げます。

もう一度 もう一度 駄目な僕が駄目な魂を
駄目なりに燃やして描く未来が 本当に駄目な訳ないよ
もう一度 もう一度 僕らを脅かした昨日に
ふざけんなって文句言う為に 僕は立ち上がるんだ もう一度

1フレーズ目の歌詞だけ取り上げましたが、2フレーズ目もすごくよいので、味わってみてください。「悲痛 現実 僕らいつも雨ざらしで」って、歌詞にAmazarashiが登場してくるのもポイント。

ジュブナイル

2曲目は「ジュブナイル」。ジュブナイルは少年少女という意味ですが、成熟してない(大人になりきれてない)という意味も含みます。

大人に虐げられて行き場を失っている少年少女の限界状況を次のように表現してます。

虐げられた少年少女 撫でる青あざミミズ腫れの頬
それよりも悲鳴あげる心 自分対世界の様相
「人間嫌い」っていうより 「人間嫌われ」なのかもね
侮辱されて唇かんで いつか見てろって涙ぐんで
消えてしまいたいのだ 消えてしまいたいのだ

そこから、自分の弱さをそのまま受け入れて進めという、ジュブナイル向けの哲学の根源が提示されます。

君が君を嫌いな理由を 背負った君のまま 成し遂げなくちゃ駄目だ
僕は讃える君らのジュブナイル 向こう見ずだっていい
物語は始まったばかりだ

そして、哲学的態度として思弁や交わりまでには発展せず、まずは一歩動き出すことをメッセージとして投げかけます。

そこから一歩も動かないのなら 君は「侮辱された人間」だ
そこから一歩歩き出せたら 君は「負けなかった人間」だ
怖いとは言うべきじゃないな 辛いとは言うべきじゃないな
どうせ誰も助けてくれない それをわかって始めたんだろう
誇り高き少年少女 それでも曲げぬ自分の意思を
いまだ枯れない表現欲と 無謀さを武器にかける浮世

自分がこの曲を高校生のときに聞いてたら、どう感じただろうな。今聞いても、メッセージは力強いですし、ミュージックビデオもすごくいいので是非一度じっくりご覧ください。 

月曜日

3曲目は「月曜日」。「月曜日は自分の無価値と無力をつきつける嫌な曜日だ」というメッセージから始まります。

高校生の変わらぬ日常、行き詰った限界状況を次のように表現してます。

月曜日、蹴飛ばしたら ゴミ箱にも嫌われて 転がって潮風に錆びた
息苦しいのは ここが生きる場所ではないから
僕ら地球外生命かもね
好きなこと好きっていうの こんなに難しかったっけ
それならば僕は息を止めて潜るよ
君の胸の内の深さには 遠く遠く及ばないとしても

このような限界状況の中で、自分の弱さを認めて、自分の哲学を進めていくためには、他者の存在が必要である(真理は二人から始まる)ことを次のように表現します。

普通にも当たり前にもなれなかった僕らは
せめて特別な人間になりたかった
特別な人間にもなれなかった僕らは せめて認め合う人間が必要だった
それが君で おそらく僕で ゴミ箱にだって あふれた僕らで
僕にとって君は とっくの昔に 特別になってしまったんだよ

まとめ

自分の人生を振り返るといろんな転換期があり、それぞれ自分なりの限界状況があったように思います。そこから一歩踏み出すには、まず自分の弱さを認めることって、重要であることを改めて思いました。

まだとりあげてない実存主義哲学者は、キルケゴール・ハイデガー。少しずつ読み込んで、またノートにまとめていきたいと思います。


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