古事記の最低限知っておきたいこと

 「古事記」とは日本に現存する最古の歴史書です。

 太安万侶(おおのやすまろ)と稗田阿礼(ひえだのあれ)によって、和銅五年(712)に元明天皇に献上されました。

 「ふることふみ」「ふることぶみ」とも呼ばれます。

 しかしこの「古事記」という言葉は、当時古い書物を指す一般名詞だったようで、これは正式名称ではないのでは、と言われています。

《内容》

 さっくり説明しますと古事記全体では、日本の神話の時代から推古天皇までの歴史です。

 細かく言うと、古事記は上中下の三つに分かれており、内容はそれぞれ以下の通りです。

  ・上 序、神話 日本創生

  ・中 初代から十五代天皇までの話

  ・下 第十六代天皇から第三十三代天皇までの話

《古事記ができるまで》

 中大兄皇子と藤原鎌足らによる、蘇我入鹿暗殺事件はみなさんご存じでしょう。小学校の社会の授業でも出てくる有名な話題です。少し前までは「大化の改新」なんて呼ばれていました。入鹿が暗殺されたことを知った蘇我蝦夷は、自宅に火を放ち自害します。

 その時に、朝廷の歴史書などを保管していた書庫までも炎上してしまったといわれています。つまり、数多くの大事な書物が失われてしまったということです。(クーデターを起こした中大兄皇子サイドが放火したのではという説もあります)

 どちらにしろ資料が紛失してしまうと、朝廷側は困るわけです。後回しにすると、「何となく知っている」という人さえもいなくなるじゃないか。そう思った天武天皇は稗田阿礼に誦習(しょうしゅう)するように命じました。

 なぜ稗田阿礼が任されたのかといいますと、当時阿礼は二十八歳だったにもかかわらず、高い識字能力と記憶力を持っていることで有名だったからのようです。

 そしてもう一つ。せっかく歴史書をまとめるのならと、日本中に語り継がれている日本神話もまとめることにしたのです。口で語り継がれてきた日本神話は、時代や地域で異なっていたようで、これが何通りも神話があっては、後々訳が分からなくなってしまいます。朝廷が「これが正式な神話だよ!」とするために、日本の歴史と神話のまとめて、体型づけを同時に始めたのです。約二十年ほどかかって元明天皇の御代に古事記が編纂されましたが、皇室と神話の結びつきが強くなっていった経緯があったのは間違いありません。

 では、太安万侶はどういう立場なのかという話ですが。安万侶は推古天皇に命じられて、阿礼が誦習していた歴史書と日本各地の神話を編纂し、古事記を完成させた人物です。

《色々言われている古事記》

 古事記には「偽書説」というものがあります。この説は二つに分かれており、「序文偽書説」と「本文偽書説」です。簡単に言うと、どちらも「本当か怪しいじゃんか」という意見です。

 稗田阿礼なんていたか怪しい。

官位のない人をそもそも舎人として登用するか。

 日本書紀や続日本紀にも存在しておらず、官職の総称なのではないかとか藤原不比等の別名なのではないか、とかいろいろ言われています。この人については重要人物にもかかわらずWikipediaにすら標記が殆どありません。存在自体があやふやな謎の人物です。

そして人物が創作した物語など嘘なんじゃないか、というようなものをはじめとする意見から、本文が紛失して、今残っているのはそもそも偽物のコピーであるという「本文偽書説」というものが出ているようです。

 現在に伝わる『古事記』写本は32本です。
最古の写本は『真福寺本古事記』と呼ばれ、建徳 2年(1371)から翌年(1372)にかけて、真福寺の僧・ 賢瑜が師・信瑜の命を受けて書写したもので、この写本は、後の『兼永筆本古事記』(1522) と共に、古事記写本すべての祖本になっています。

 さらに説明すると、我々が手に取っている文庫本の古事記は江戸時代に本居宣長が古事記伝でこれらの写本を自己解釈で翻訳したものをさらに再出版した「コピーのコピーのコピー...」で内容が変わっているし、神話としての価値はないよね、という主張です。

 ただ聖書なんか典型的な例ですが、原初を探るとなると「神話」ってそもそもなんだという話になりますし、良いものは良いと素直に評価して自分なりに解釈していいと思います。

 正直、古事記ははまる人とはまらない人で、はっきり分かれると思います。しかし、それでいいのです。現代でも同じです。

 映像化された小説や漫画の好みと同じだと思って気軽に手に取ってみてください。今のほとんどの多くの創作物が神話の影響を受けています。

 歴史の知識と合わせてみると触れていくうちに神話を紡いできた人たちの足跡がたどってみえるのも面白いですよ。

 よかったらアニメや漫画に触れる感覚で古事記を読んで楽しんでください。



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