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「さまざま」に「生かし合う」〜『道をひらく』に学ぶ“繁栄”の鍵

世の中に数多くの本を提供しているPHP研究所という出版社があります。終戦直後(昭和21年)に松下電器産業の一組織として設立され、後に株式会社化されました。

この名称に含まれる「PHP」って何の略だかご存知でしょうか?

PHPに込められた想い

PHP研究所のサイトでは、こんな風に解説されています。

PHPとは Peace and Happiness through Prosperity という英語の頭文字をとったもので、“繁栄によって平和と幸福を”という意味のことばです。これは、物心ともに豊かな真の繁栄を実現していくことによって、人びとの上に真の平和と幸福をもたらそうというPHPグループの願いを表わしたものです
PHPの考え方|会社案内|PHP研究所

B6版の小さな雑誌「月刊PHP」、コンビニや書店に並んでいるので見かけたことがある方も多いと思います。この雑誌に、松下幸之助氏が毎号コラムを執筆していました。

国内出版部数 歴代2位の幸之助氏著書『道をひらく』は、月刊PHPのコラムを121篇(1年12冊なので約10年分!)集めた一冊です。本書のなかにも、繁栄・平和・幸福という言葉が多く登場します。

先日、この『道をひらく』の読書会を開催しました。
みなでディスカッションするために毎回お題を設定するのですが、この日僕が出したお題はこちらです。

松下幸之助氏が「繁栄」に込めた想いは何でしょうか? あなたはその想いから何を引きつぎ、どう実践していきたいですか?

読書会当日は、日常生活ではあまり口にしなくなったこの「繁栄」という言葉について、参加メンバ同士で気になった箇所を共有し、意味を語り合いました。

『道をひらく』に学んだ “繁栄”の鍵

では、いったい繁栄に込めた想いは何か。
真の正解は幸之助氏自身にしか分かりませんが、みなとの対話を通じて、僕は「多様性」と「尊敬・尊重」が鍵となるように感じました。

多様性の観点では、「さまざま」という一篇にこんな記述があります。(太字は本記事のため付与)

 いろいろの花があってよかった。さまざまの木があってよかった。たくさんの鳥があってよかった。自然の理のありがたさである。人もまたさまざま。さまざまの人があればこそ、ゆたかな働きも生み出されてくる。自分と他人とは、顔もちがえば気性もちがう。好みもちがう。それでよいのである。ちがうことをなげくよりも、そのちがうことのなかに無限の妙味を感じたい。無限のゆたかさを感じたい。そして、人それぞれに力をつくし、人それぞれに助け合いたい

また、「生かし合う」では、尊敬・尊重を感じさせる、こんなフレーズを見つけました。

 人間の生命は尊い。尊いものは尊重しなければならぬ。ところが、自分の生命の尊いことはわかっても、他人の生命も尊いことはわすれがちである。(略)
 やはり、ある場合には、自己を没却して、まず相手を立てる。自己を去って相手を生かす。そうした考えにも立ってみなければならない。(略)
 自己を捨てることによってまず相手が生きる。その相手が生きて、自己もまたおのずから生きるようになる。これはいわば双方の生かし合いではなかろうか。そこから繁栄が生まれ、ゆたかな平和と幸福が生まれてくる。
 おたがいに、ひろく社会の繁栄に寄与するため、おたがいを生かし合う謙虚なものの考え方を養いたい。

終戦直後に幸之助氏が考えた「繁栄」と、いまの時代の「繁栄」は同じではないはずです。きっと、物質的な繁栄については、七十数年経って当初の想像を遥かに超えて日本に根付いたことでしょう。一方、精神的な繁栄や、それによっての平和や幸福は、まだまだ道半ばだと感じます。

上で引用したように、「多様性」と「尊敬・尊重」の両面を今よりもっと進めること、すなわち、「さまざま」に「生かし合う」形へとバージョンアップさせることが、松下幸之助氏が「繁栄」に込めた願いではないでしょうか。

決して夢ではないはず

「そんな甘いこと言って…」と感じましたか?

実は、本書内でもう一箇所紹介したい文章があります。これは本編コラムとは別で、「生きがいある人生のために」という章の扉として書かれた幸之助氏のメッセージ(詩?)です。

それは夢にすぎないだろうか
ただ、おたがい おなじ国に生きる人間として
素直に心と心を寄せあい 手と手を握りあって
この国日本の 繁栄と平和と幸福とを
ひとすじに探し求めることができないだろうか
真剣になれば 意見の対立もおきるに違いない
だが 私たち日本人としての願いが一つなら
かならず そこに高い調和と力が生まれよう
それは 決して夢ではないはずだ

(読書会では、ジョン・レノンの imagine に通じるね、という発言があり、おおいに頷きました)

平成から令和へと時代が変わった今日、これからの時代への期待を込めて、こんな夢が実現した世界を思い描いています。決して夢ではないはず!

 ◇ ◇ ◇

参考までに、月刊PHP、PHP研究所のサイトで見つけた幸之助氏のメッセージをご紹介しておきます。

松下幸之助がPHPにかけた思い|月刊PHP (動画の書き起こしあり)
創設者松下幸之助からのメッセージ|PHP研究所
松下幸之助のPHP活動|松下幸之助.com

今回『道をひらく』をとりあげた読書会人間塾は、東京・名古屋・関西で毎月1冊の名著を課題図書として開催しています。ご興味あれば、以下のリンクから辿ってみてください。

(おまけ)GW中は、読書会後に入手した『悲願へ ─松下幸之助と現代─』を読んでいます。こちらも “繁栄” がテーマです。

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