【建築】絵に描いたような森の中のオードロップゴー美術館(ザハ・ハディッド)
今回の建築探訪はザハ・ハディッド設計の美術館だが、規模も小さいし、あまり有名でもない。しかも、予め調べて分かっていたことだが、増築工事のため長期休館中であった。それでも訪れた理由は、世界で最も美しいと評判のルイジアナ近代美術館への道中にあるからだ。つまり"ついで"だ。なのでサクッと進めよう。
コペンハーゲンから電車に乗ること20分。ルイジアナ近代美術館はもう少し先だが、途中のKlampenborg駅で降りる。ここからオードロップゴー美術館までは2.5km。バスもあるが、本数も少ないので、歩くことにした。
近くに競馬場があるためか、いきなり馬に遭遇する。
爽やかな快晴の中の散歩はホントに気持ち良い。
それにしても、どこにでもありそうな住宅街の風景だけど、美しいなあ...
オードロップゴー美術館。
保険会社社長であり美術収集家でもあったWilhelm Hansen氏のコレクションと邸宅が、彼が亡くなった後に国に寄贈され、公開されている。
休館中ではあるが、門は開放され、建物の外観と庭園は見学することが出来た。
美術館は絵に描いたような森の中にある。
その森の奥に、20世紀初頭に建てられたカントリースタイルの邸宅が佇んでいる。美術館の本館でもある。
本館前には庭園と芝生広場が広がっている。空の青さと芝生の緑、そして屋根のオレンジの塩梅がたまらなく良い!
ザハの新館は2005年に本館に隣接して増築された。ザハが世界的にも評価され始め、これから全盛期に向かって駆け上がろうとする時期である。
増築にあたっては、この美しい景観を壊さないことも条件の一つだったようだ。
しかしザハ砲は炸裂した。
流れるような曲線の造形は、本館とは対極なデザインだ。
近年のザハ建築は巨大で有機的な曲線を描くデザインが多いが、曲線は径が大きくなるほど直線に近づく。したがってそれらの建築は、写真やパースで見ると曲線が強調されているが、実際に間近で見ると直線に近いのではないか?
その意味では、この位の大きさの建築の方が、ザハらしい有機的な曲線のフォルムを堪能できると思う。
またザハ建築はデザイン的にも主張が強い。お世辞にも「風景に溶け込んでいる」とは言えない建築も多い。しかし見方によっては、この新館はあまり目立ち過ぎていない。ガラスに周辺の森の木々が映り込み、風景の一部となっているからだ。
その中でどうしても目立つものは構造体であるコンクリート。しかしそのコンクリートも控えめに黒く仕上げられている。(決して薄汚れたわけではない)
地形に沿って這うように建てられ、高さも抑えられている。
2021年にオープンしたスノヘッタによる増築も、公式サイトによれば、ほとんど地下に埋まっており、景観を壊さないように配慮している。
以上、外観のみの見学である。流石にわざわざ休館中に訪れる物好きは少ないようで、この日は私以外には誰もいなかった。
ちなみに隣の敷地には家具デザイナーのフィン・ユールの自邸があり、オードロップゴー美術館の管理により、現在は記念館として公開されている。(残念ながら、こちらも長期休館中であった)
さらに後で分かったのだが、このKlampenborg周辺には、オーフス市庁舎でも紹介した建築家・デザイナーのアルネ・ヤコブセンによる集合住宅などもある。
次にデンマークを訪れることがあれば、ココを再訪しない理由はない。
ではバスに乗り、本来の目的地であるルイジアナ近代美術館に行ってみよう!
最後は宣伝になるが、"休館中と分かっていたけど見に行った建築"と言えば、「渓谷に静かに佇むアルマナユヴァ亜鉛鉱山博物館(ピーター・ズントー)」がある。ノルウェー・ベルゲンからバスを乗り継いで、半日かけて訪れた。その上その日には戻れないので、寂しい町に1泊した。それに比べれば、なんてことはない。
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