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論語と算盤 合本主義


 こんばんは。中国古典を中心に日々の組織運営、自己成長に役立つ記事を書いて、自分と組織の成長、そしてこのnoteを読んでくださった皆さんのお役に立てる人間になれることを目指しています。

 最近、NHKオンデマンドで「100分de名著」を楽しんでいます。

 さて、前回に引き続き、大河ドラマで一躍時の人となった渋沢栄一の著書、「論語と算盤」の回。ゲストは中国古典の翻訳家、グロービス経営大学院特任教授の守屋淳さん。大変わかりやすい解説でした。

合本主義とは


 渋沢が唱えた合本主義は、「公益を追求するために経済活動をする考え方」です。第一義的に、社会に貢献するために経済活動をすることです。

 資本主義とは、「資本家が商品を生産して利潤を得る経済行動」のこと。資本家の利益が第一義なのです。これは現代では広く浸透しており、資本家の代表は、株主となり、株主への利益還元のために事業を行う、ということになります。
 渋沢は「近代日本の資本主義の祖」とも言われますが、実は彼自身は「資本主義」という言葉を使ったことはないそうです。
 従って、渋沢は明らかに資本主義とは異なる考え方として合本主義を唱えています。

 さて、合本主義においてはインフラに限らずあらゆる商品、サービスを提供する事業においても社会を豊かにするために公益を追求することが前提になければなりません。

そのために企業ができることは、
 

・社会に貢献することを大前提とした事業を行う、 
 ・適切に物やサービスを提供する、
 ・従業員を幸福にする、
 ・利益を社会に還元する

これらが事業の根本にあることで、事業は社会と共に永続的に発展することができる、という主義主張です。

 さて、番組の中で2019年8月19日、ビジネス・ラウンドテーブルの声明発表を紹介しています。内容としては、大株主のための経営をやめ、全てのステークホルダーのために経営する。
ということです。これはまさに現代の合本主義でしょう。守屋さんの言葉を借りると、「これが適切に、本当に実施されるならば合本主義の実践と言えるだろう。」ということで、掛け声だおれにならないことを祈るのみですね。

「修己安人」


 ここで、論語の一節から生まれた言葉を紹介します。
孔子が弟子の子貢に君子の条件を問われ、

「自分を磨いて謙虚な人間になること。自分を磨いて、人々を安定させること。」

と答えました。
 つまり、自らを修練し、立派な事業、活動を行い、人々(社会の人々)に安定した暮らしを提供する、という合本主義に通じる論語の言葉ですね。

また、以前noteの記事にした、次の言葉も合本主義を裏付ける論語の言葉になります。

「富と貴きは人の欲するところなり。その道を以てこれを得ざれば処らざるところなり。」
(里仁篇)

 つまり、富と名誉を求めること自体は人の基本欲求であるが、その得方が道徳に反しないこと。邪道で得た富貴はいずれ滅びるということです。


企業の社会的責任

 現代の企業は利益追求だけではなく、社会貢献を行うことが求められています。
Nikeやユニクロが、(実際は企業が直接的に関与していないのですが、そうであっても、)原材料の生産現場で作業者が奴隷的な扱いを受けていたりするとバッシングを受け、社会的制裁が加わるまでになっています。
 正しい情報に基づいて事実が公表される必要はあろうかと思いますが、SNSなどで情報が瞬時に広まる時代、脇が甘い、もしくは基本原則として公益に基づいた考えを持たない事業者に対して社会が制裁を与える監視の仕組みが出来つつあるように感じます。ただ、この仕組みが正しく機能するためには、繰り返しますがその情報の妥当性は担保されなければなりません。

現代の合本主義の底流

 そしてESG投資は、利益追求と社会的意義を対立関係ではなく、同じベクトりに向ける非常に重要なファクターになると思います。

 渋沢の生きた明治維新〜昭和とは異なる形態で、資本主義は今後合本主義的な流れを汲んだ形態を目指すことになるような期待が大いにできるのではないかと思います。


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