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GIGAスクールの阻害要因は、本当にヒト・モノ・カネ・時間だけなのか?

さて、今回は久しぶりに教育関連の記事を書いてみます!

(前回の「学習を支える条件」についての記事)


1. GIGAスクール構想とは?

2019年度から、政府は段階的に小中学校への1人1台端末と高速ネットワークの整備を進めました。
当初は5年間の計画でしたが、コロナ禍を契機として2年弱で一気に整備されました。
これを、「GIGAスクール構想」といいます。(※GIGA = Global Innovation and Gateway for All)

2. 今直面している課題は?

端末という「器」が配られたものの、そこでの活用の頻度や態様は地域・学校によってまちまち
子供達の学びの充実にフル活用しているところもあれば、中には、「学校に配られたまままだ開かれることなく保管庫にしまわれている」というところもある、と・・・。

そんな中、先月閣議決定されたいわゆる「骨太の方針」には、以下の極めて重要な記載がなされました。

「各地方公共団体による維持・更新に係る持続的な利活用計画の状況を検証しつつ、国策として推進するGIGAスクール構想の1人1台端末につい て、公教育の必須ツールとして、更新を着実に進める。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2023/2023_basicpolicies_ja.pdf


「国策」「公教育の必須ツール」「更新を着実に」と言い切っていることから、国としてもこれを国費で続けていくんだという強い意志が感じられます。
他方で、「状況を検証しつつ、」とあるように、ちゃんと使われているのか?がそれに当たり重要な要素となりそうです。

では、GIGAスクールが進んでいない要因は、いったいどこにあるのでしょうか?

3. 外的な障壁(External Barriers)

こちらを考えるに当たって参考になるのが、令和3年9月にデジタル庁が公表したGIGAスクール構想についての26万件(子供22万件、大人4万件)のアンケート結果です。

そこでは、以下ような課題が例えば挙げられていました。

「学校のネットワーク回線が遅い。」

「教職員に研修する時間と研修サポートが必要。」

「児童の端末と異なり、教職員端末が古いため、指導がしづらい。」

「GIGAを本気でやりたいならまず人を増やして、一人当たりの仕事量を減らすべき。」

「具体的な授業に活用する方法を教えてほしい。」

こうしたことは、Jones(2004)の分類によると、外的な障壁(External Barriers)と言われます。
そして、実はこうした課題に対しては、国もネットワーク回線や教職員端末の補助をしたり、研修が出来るアドバイザーの派遣、事例集や動画の発信などの支援を積極的に行っているんです。

では、この外的な障壁さえ取り除けば、ICT活用は進むのでしょうか?

4. 内的な障壁(Internal Barriers)

私は、実はそれだけでは劇的にICT活用は進まないと思っています。
それは、同じくアンケートにあった以下のような意見をご覧いただければお分かりになるのではないでしょうか。

「教育委員会や学校長に向けてのメッセージを繰り返し発信し、大人の意識を変えるサポートをしてほしい。」

管理職の先生がICTに抵抗を示すと、それが若手教員の士気にも反映されてしまう。」

「積極的に活用しようとする教職員もいれば、従来からの板書スタイルを最適と考える(あるいはスタイルを変えるつもりはないと考える)教職員もいる。」

「個々の教員によってICTに対する温度差が激しく、全体的な活用がなかなか進まない。校内組織も整っていないため、一部の教員に負担が集中している。」

実はこういった「内的な障壁(Internal Barriers)」、いわゆる意識の壁のようなものですが、の存在は重要で、どんなにサポートが与えられて外的な障壁が解消されても、こちらが解消されないとICTは大きくは進まないのではないでしょうか。
1人の先生で「点」になることはあっても、それを「線」や「面」にしていくにはこちらに対応する必要がありそうです。

ただし、政策を見ても、この「内的な障壁」に対してしっかりとした施策を打てているステークホルダーが、国や自治体含めてまだまだ少ないと感じます。
かつ、こちらは対処療法的な施策では効果が出てこないので、手を変え品を変え様々な形で継続的に働き掛けることが重要だと思います。

5. リーダーシップとの相似形?

これまでの議論をまとめたのが、こちらの図です。

参考文献は最下部参照

実はこちらの図なのですが、以前紹介したこちらの記事にある、

「技術的課題」「適応課題」とまさに相似形になっているんです。

「技術的課題」は、新たな知識やスキルを身に付ければ解決できる課題。
研修をしたり、事例を知ったり・・・まさに「外的な障壁」です。

それに対して、「適応課題」は、自らの価値観や物の見方を問い直さないといけない課題。
効用を理解したり、変化への免疫に抗う・・・まさに「内的な障壁」なんです。

この両方に目配せをして、せっかくの1人1台端末をフル活用して子供達の学びを充実させていきたいですよね。

こうした点については、例えば以下の自治体が思いや施策をまとめて下さっているので、もしよろしければ参考にしていただけますと幸いです!

〇戸田市教育委員会

〇鎌倉市教育委員会

<参考文献>
・Jones, A. (2004). A review of research on barriers to the uptake of ICT by teachers. British Educational Communications and Technology Agency (Becta).


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