『サロメ奇譚』を観た
2022年3月21日(月)~31日(木)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト
2022年4月9日(土)・10日(日)
大阪府 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
原案:オスカー・ワイルド「サロメ」
脚本:ペヤンヌマキ
演出:稲葉賀恵
出演:朝海ひかる、松永玲子、牧島輝、ベンガル / 東谷英人、伊藤壮太郎、萩原亮介
〜ここから感想〜
演劇を観ていると年に1度や2度
「うわー、自分は今演劇を観てるんだなぁ…」
と思いながら観劇することがある。
”うわー”に込められた思いはいいときもあるし
そうでないときもある。(そうでないときの方が多い)
ただ
”自分は今演劇を観てるんだなぁ…”には
ただいま演劇のおもしろさを絶賛体験中
という思いが込み上げている。
これが僕の心理。
『サロメ奇譚』
奇譚=きたん
※珍しい話。不思議な物語。
は
「うわー、自分は今演劇を観てるんだなぁ…」
を95分の上演時間の中で4回くらい思いました。
まだ2022年も3月なのに、来年の分まで味わっちゃったこの感覚。
〜ここからネタバレ〜
まず、 ベンガルさんと朝海さんのお芝居がかみ合ってない。笑
たまたまそういう回だったのか、それとも狙いだったのか
いややっぱり事故なんだろうな。
二人の掛け合いはとにかく「無駄なセリフ」が多い。
無駄という言葉を使うと脚本家に怒られてしまいそうだけど
そういう無駄ではなく、”あえて書かれてる中身のないセリフ”
のこと。
客席が「もう分かったよ」戻れよ。次のセリフにいけよ。
とツッコミたくなるほど”無駄なセリフ”を浴びせてくる。
これを
あざす!映画やドラマじゃ味わえない謎の時間最高!
おもしろいっす!!!
と思うか
は?何の時間?すべってるよ?
こっちは高い金払ってんだよ??????
と思うか。
どちらの受け取り方に正解も不正解もないけど
前者のマインドがないと、この芝居を心から楽しむことは
難しいと思う。笑
だって、観てるのはサロメを下敷きにした『奇譚』だから。
劇場に『奇譚』を見に来ているのだから。
衣装が特徴的だった。
役者のスタイルを充分に発揮していたかというと
少し今ひとつなところはあったけど。
・父はハリボテだけど力の象徴赤いマント
・母は手を染めてしまった赤い手袋
・サロメは背中に結ばれた呪縛の赤い紐
ラストシーン、父はマントを捨て、母は手袋を脱ぐ最中、サロメの純白が赤に侵されていたのも印象的で、衣装もストーリーになっていた。
脚本に関しては
ペヤンヌさんのスタイルや魅力を知らない初見の人が観劇したらどうなんだろう。 風俗王が吉と出るか凶とでるか。
ただし、父のキャラ設定が現代のわかりやすい老害おじさんを体現していて
作品の間口が広がっていたと思う。
「だれが飯をくわせてやってると思ってんだ!」
「ほしいものならなんでもやる!」
「俺の言うことが聞けないのか!」
昭和のマンガか
きっと名刺の肩書だけにすがって、生きてきた父。
だからこそ自分より強い相手には絶対に逆らわない。
ヨカナーンの存在に抵抗することなく、すぐにひれ伏したのも納得がいったし
物語のテンポ感にも繋がったと思う。
ただ!
物語の本質はそこじゃねぇ!!!
本当のガンは母親だった。
この話の本質は【母の呪い】といっても過言ではない。
容姿ばかりを評価されて、ずっと自分の声を聞いてもらえなかったサロメが
結局、ヨカナーンの容姿に惹かれ、彼の声に耳を傾けることも、本質を見抜くことできないなんとも残酷で、悲しいラストだったけど、
そう育てたのは母親だった。
ここがしっかり描かれていた。
ラストはヨカナーンの唇を手に入れた
サロメのダンスシーンで終わる。
あのコンテンポラリーが持つ意味は何だろう。
「解放」「自由」「勝利」
こんなワードが思い浮かんだんだけど。
観劇した方の印象や感想が気になる。
心から
「うわー、自分は今演劇を観てるんだなぁ…」
と思える演劇だった。
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