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AIは人間を超えることが出来るかを面白い視点で描く:SFドラマ「自動工場Autofac」レビュー

 最近見たドラマで面白かったのは、『フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズ』の中にあるいくつかの話だ。これは、作家フィリップ・K・ディックの短編に基づいた一話完結型のSFドラマ・シリーズである。ディックは、映画『ブレードランナー』の原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を書いたことで知られている、SFジャンルにおける先駆者である。まだ全話を見終わってはいないけれど、前半では"Real Life (真生活)"と"Autofac (自動工場)"という話が私には面白かった。今日は"Autofac (自動工場)"のレビューをしたいと思う。

 あらすじはこうだ。
 今回の舞台は、大陸間戦争後の世界。そこではAIによって制御される自動工場が、絶え間なく商品を生産し、人類の元へと配送し続けている。この工場は戦争が起こる前に建てられたものだが、戦争後20年が経過した現在も、人類がほぼいない世界へ人が消費しない物を作り、送り続けている。戦争を生き抜いた人間たちは、自動工場の生産を停止させたがっていた。それが、深刻な環境汚染を引き起こしていたからだ。
 ある村の革命家たちは、自動工場から荷物を届けに来たドローンを打ち落とした。そのドローンを利用して、旧式なカスタマーサービス経由で自動工場と連絡を取る。彼らの目的は、自動工場に生産停止を交渉することだ。果たして、人類はAIを説得して、自動工場を止めることはできるのか。

 この物語の楽しかったところ。まず一つ目は、そのオチが挙げられる。終盤は見事などんでん返しの連続だった。謎が明かされる度に、物語が急速に収束していく様子は印象的だ。どんでん返しの場合、後から「実はこうだった」と付け加える説明が続くと疲れてしまうけれど、物語の中にきちんと伏線が張られているときはとても面白い。ネタバレを避けるために具体的に書けないのが残念だけど、この作品はその点でとても楽しめた。
 もうひとつ面白かったことは、人工知能は人間を超えるかというテーマの表現方法だ。エンタメドラマや映画ではありきたりなこのテーマの答えは明白だ。もちろん、これまでの作品と同様に、AIは人間を超えることはできない。私が面白かったのは、その表現方法なのだ。AIと人間。何が違うのだろう。AIは計算をして、効率よく答えを出していく。エラーは異物としてすぐに排除してゆく。しかし、人間は統計学的な異常、すなわち多様性をも利用して危機を乗り越えてゆく。このドラマは、複雑な人間を、巧みな設定を利用して描いている。単なるAIと人間の力のぶつかり合いではないところが、面白かった。

 "Autofac (自動工場)"はAIと人間との対比を描いたSF作品であり、その劇的などんでん返しや、AIと人間の違いを表現する独特な表現方法が私にとっては非常に新鮮で楽しむことができた。この記事を読まれた方が興味を持って、見て下さると嬉しい。


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