見出し画像

 シリーズ『図解!インボイス入門』第3回目です。このシリーズは各回、「制度の内容?(What)」「どのように進める?(How)」「誰が(に)アプローチ?(Who/Whom)」のどちらかの視点に立ち、順序立てて積み上げ式に何度も説明していきます。いわば”スパイラル(螺旋)”のイメージで積み上げ学習していく訳です。
 第1回目、2回目は各々「制度の内容?(What)」「誰が(に)アプローチ?(Who/Whom)」を見てきましたので、今回は「どのように進める?(How)」の視点で見ていきましょう。これで1回転目が完了します。

図①:今回は「どのように進める?(How)」の視点で見ていきましょう。

 2023年10月1日からの消費税法改正による、インボイス制度の導入。これは1989年4月1日に日本で初めて消費税が導入された時並みのインパクトがあると言われています。インボイス制度の導入により、全事業者に影響。場合により、零細事業者の仕事が無くなる・・・ほどのインパクトがあります。そこで早めに情報を入手することで、十分な時間をかけて検討し、インボイス制度導入に備えよう、ということです。
 場合により、零細事業者の仕事が無くなるほどのインパクト・・・。前回は「誰が(に)アプローチ?(Who/Whom)」を深掘りすることで、どんな事業者が大きなインパクトを受けそうかを分析。そして具体的に「課税事業者か、免税事業者か?」を横軸、「買主は誰か?」を縦軸のマトリックスに、まとめてみました。すると事業者を買主とする(BtoB:Business to Business)免税事業者の方が、大きなインパクトを受けることが予想されることを説明してきました。

図②:「課税事業者か、免税事業者か?」、「買主は誰か?」の一覧にまとめてみました。

 上図のいずれのマス目も、「影響アリ」「やや(影響)アリ」「大いに(影響)アリ」・・・と、影響はある訳ですね。ただし、その影響度合いが異なるということです。アリ・・・アリ・・・と連呼すると、イソップ物語『アリとキリギリス」の蟻(アリ)が思い浮かんできました。イソップ物語のアリのように、今からコツコツとインボイス制度の準備を始めていきたいですね。・・・やっぱりキリギリスも出てきました。
 2023年10月1日からの消費税法改正による、インボイス制度の導入。これに向けてコツコツと準備を進めていくことが必須になります。大げさではなく、”インボイス制度対応は準備が99%”という訳です。

図③:インボイス制度は準備が99%です。

 お馴染みの宝石取引ですが、売主と買主に場合分けして、事前準備内容をご紹介して行きます。重要なので何度も言います。”インボイス制度対応は準備が99%”です。

図④:売主と買主に場合分けして、事前準備内容をご紹介します。

 以下の説明内容ですが、税理士の金井恵美子先生の資料を一部参考にしながら作成しています。
資料:金井恵美子「名古屋税理士会主催セミナー 適格請求書等保存方式」2021年10月1日、24~27ページ。

 まず、売主としての事前準備のご紹介です。5ステップあります。
 ①登録事業者の申請
:インボイスを交付するためには、適格請求書発行事業者として税務署長の登録を受ける必要があり ます。登録申請の受付は、2021年10 月1 日に既に開始しています。原則として、2023年3 月31 日までに申請すれば、適格請求書等保存方式の開始から登録事業者となります。
 ②インボイスの交付と保存方法の決定:課税資産の譲渡等を行う場合に、何をインボイスとするか(請求書、納品書、レシートなど)、またインボイスの交付をどのような方法で行うか(紙の交付か、電子インボイスの提供か)を検討し、必要に応じてレジや経理・受注システムなどのシステム改修を行います。 多くの場合、現状において交付している書類(請求書、納品書、レシートなど)に登録番号等を記載して、適格請求書とすることができます。
 ③経理システムの改修:インボイスの交付方法や保存の方法は、システムの改修がどの程度必要になるかが、判断材料の一つになります。 またシステム改修は効率化のために業務全体を見直す機会でもあります。 なお適格請求書等保存方式の開始前に、適格請求書の記載事項を記載した書類を交付し、データを提供することに問題はありません
 ④取引先との連絡:適格請求書等保存方式への移行をスムーズに進めるため、インボイスとして交付する書面やデータ及びその交付方法は、取引先へ周知し、相互に確認しておく必要があります。
 ⑤社員研修:適格請求書等保存方式に係る社員研修の実施も、必要になると考えられます。

図⑤:売主としての事前準備に、まず登録事業者の申請があります。

 次に、買主としての事前準備のご紹介です。5ステップあります。
 ①仕入先が未登録時の対応の検討:課税仕入れであっても、消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者から行った課税仕入れは、仕入税額控除の対象となりません。つまり、仕入れ先が登録事業者であるか否かで、仕入れに係る「取引総額」の意味が変わってくるということです。登録事業者からの仕入れについては、取引総額「本体価格+税」のうち「+税」については、消費税の申告を通じて、売上税額から控除されて精算されます。しかし、登録事業者以外からの仕入れについては、取引総額全体が「本体価格」すなわち、費用となります。 したがって、こうしたことを踏まえて、買手は「売手がインボイス発行事業者なのか否か」を確認した上で、売手との間で取引の価格を確認する必要が生じます。
 ②受領したインボイスの保存方法:買手の立場としては、どのような方法でインボイスを保存するのか検討が必要です。
 ③経理システム改修:どのような方法でインボイスを保存するのかを決定したら必要に応じて、経理・発注システムなどのシステム改修を行います。
 ④取引先との連絡:また、継続的に取引を行う取引先(売手)に対して、適格請求書発行事業者の登録の有無、受領するインボイスの様式、インボイスの受領方法を確認しておきましょう。
 ⑤社員研修:適格請求書等保存方式に係る社員研修の実施も、必要になると考えられます

図⑥:買主としての事前準備に、まず仕入先が未登録時の検討が必要です。

 少し補足をさせて頂きます。売主、買主と事前準備はどちらが重たいでしょうか?確かに免税事業者の売主にとって、インボイス制度対応は、今まで”益税”を受け取っていた分、資金繰りは悪化し、場合によっては死活問題になりかねません。よって売主にとって重要な決断が必要とされてきます。
 しかし事前準備の事務作業自体に目を向けると、売主の事前準備の問題は自身での決め事の問題。つまり自身の”決断”事項を粛々と進めていくイメージになります。他方で買主の事前準備は、取引相手である売主に伺いを立てる等”検討”事項が多くあり、余裕を持った事前準備が必要になるということですね。

図⑦:事前準備は意外にも買主の方が重いかも。

 第1回目、2回目は各々「制度の内容?(What)」「誰が(に)アプローチ?(Who/Whom)」を見てきましたので、今回は「どのように進める?(How)」の視点で見てきました。やっとこれで、1回転目が完了となります。1回転目でインボイス制度の大まかなイメージを付けて頂けると嬉しいです。

図⑧:1回転目が完了。大まかなイメージを付けて頂けると嬉しいです。

 次回予告です。2回転目に入ります。1回転目は大まかなイメージをつけることを目的としていましたのが、2回転目は内容詳細に入っていきます。
 ・・・ん?いつもの”下手可愛い”イラストではないですね。2回転目以降、情報量が増えるので、税理士会等の資料も引用しながら説明していきます。もちろんいつもの”下手可愛い”イラストも健在で、ハイブリット方式で説明していきます。

図⑨:近畿税理士会 業務対策部「特集 インボイス制度説明会」3ページより。

 シリーズ『図解!インボイス入門』如何だったでしょうか?分かりやすさ重視のため、イラスト&スパイラル方式で説明していますが、2022年7月中旬までに全12回完結で投稿”予定”です。ただし恐れながら、稲垣経営研究所のnote更新は不定期。読者の皆さまの中には、早めにインボイス制度の全体像を掴みたい方もいらっしゃると思います。チラシを準備していますので、宜しければチラシもご参照頂ければ幸いです。

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?