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【短編小説】彼氏が出来たら友達が減るらしい。

[短編小説]


「彼氏できたら友達減るって聞いてさ…」

最近数年ぶりに彼氏が出来た友達が不安そうに言った。

「彼氏できた嬉しさよりそっちの心配!?」


友達の事をピュアで可愛いと思った。

そんなのどっちかが今まで通り連絡すれば、
時間をお互い合わせれば普通に会える。

学校で毎日のように会ってた私たちは大人になった今でも長くても2ヶ月に1回はちゃんと会えている。

お互いマイペースなのでベタベタはしないが正直1番の友達だ。

そんな私たちが仲違い以外の理由で少し疎遠になるなんて、その時は全く考えていなかった。

あれから1ヶ月経った。
少し寂しそうにしていた友達に対してあんなに楽観的な返事をした私だったけど、こちら側から次のアクションを取るのは意外と難しかった。

週末は彼氏と過ごすかな。付き合いたてやし、今月はお誘いやめとくか。

2ヶ月って1番楽しい時期ちゃう?週末空いてるけど、やめとくかあ。

3ヶ月経った頃、向こうが連絡をくれた。せっかくの機会なのに何の悪戯か、たまたまお互いのスケジュールが合わなくて会えなかった。

4ヶ月。
私が病気になってしまった。疲弊していて人に会える精神状況じゃなかった。
今月も友達は連絡をくれたのに、何て返信していいのかわからなくなっていた。
また断ったら「彼氏できたら友達減るって聞いてさ…」と言っていた事が現実になったと思わせてしまうんじゃないか。

友達は優しいから、病気の事を伝えたらきっと心配して駆け付けてくれるだろう。

最近SNSで見る友達と彼氏の写真が眩しかった。

今の私じゃ会えないと思った。

「週末忙しくて。平日なら行んねんけど…」
友達が土日休みの事を私は知っていた。


私の中で1番の友達なのは変わりないのに、今私達は日本とブラジルにいるみたいだ。

遊園地らしき所で2つ飲み物が写ったSNSの写真と、ベッドの上から動けない私。


心の疲れと共に感じなくていい劣等感を感じていた。


彼氏が出来た友達が悪い訳じゃない。
自分で言うのも変だが、タイミング悪く体調を崩した私が悪い訳もない。

そう言う流れだったのだ。
友達と私をひとつに考えてはいけない。
2つの別の物語が同時に進行しているだけ。

歪になった感情を丸く整えてくれる言葉を探した。

「よそはよそ、うちはうち。」

そんなに"よそ"ほど遠くない相手に使う言葉としては冷たく感じた。

どこかで見つけた、
「心が疲れている時はSNSを見るのは止めろ!」

意外とこれが1番しっくり来た。

誰のせいにもしていないし、この決壊したダムみたいな感情を止めてくれる唯一の手段であり特効薬になりそうだった。


何も悪い事をしていない友達に負の感情を抱いてしまった事、それをまた自分で責めて落ち込んでいる。いち早くこのループを止めなければ。

馬鹿正直にすぐ実行した。
ホーム画面からSNSのアイコンを消した。
親以外の誰とも連絡を取らなかった。

1ヶ月経った頃、体調も回復して心もかなり落ち着いていた。

デジタルデトックス恐るべし。

少し前の事を思い出してみると考えすぎる私に反して友達は案外さっぱりしている。

クリスマスケーキを買う時、チョコケーキとショートケーキ迷う…どうしよ、どっちにしよ。どっちがええと思う?と聞いた私に
嫌味なく「んじゃどっちも買って2人で半分こしよ!」と笑って言える子なのだ。

と言うことは今回もクヨクヨ悩んで無限ループに入っている私に反して、
意外と友達はもうすでにあの子なりの代替え案を出していて、さっぱり前向きに生きている可能性が高い。


友達がいなくなるかも…なんて寂しそうにしていたことも忘れているかもしれない。

なんだか急に安心した。
私の心にも余裕が出て来た証拠だろうか。

ここ数年の、傷を舐め合うように2人で過ごしていたクリスマスはもうきっと来ない。

寂しさよりもムカついてきた。
先越しやがって。
そういえば話したい事が沢山ある。

この勢いで連絡してやろう。

「久しぶり。今週末空いてる?土日どっちも休みやねんけど!」




私と友達との実話を元に書きました。

SNSを平和に見れなくなったらあなたの心が疲れているサイン。私と一緒にゆっくり休んでくださいね。


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