うめあわせはいつも

キャンペーンだから買いに行こうと
話していたファーストフード店の前
すさまじい行列にさっさと諦めた姉
不機嫌になった私を見て家の誰もが
食べたいのに買えなかったからだと
それ以外の理由を思いつきもせずに
夜になってからわざわざ買ってきて
これでいいと得意気だったけど正直
たいしておいしいとは思わなかった

不機嫌そうに見えたのはモヤモヤしたからで
食べたいのに食べられなかったせいじゃない
私の希望に対して何のフォローもしないまま
有無を言わさず却下したということに対して
私はひどく自分を邪険に扱われたように感じ
ここで私は尊重されない存在なのだと思った
その本質に家族は思い当たることもなかった

十年以上前の些細な話を
いまだに覚えているのは
忘れないくらいの頻度で
私の存在レベルの低さを
思い出させてくるからだ

今でも私の毎日のルーティンを平然と
壊すかのように行動する彼らと暮らし
私は変わらず尊重されない存在のまま
朝のバタバタした支度の時間を乱され
呆れたまま無言で私が出かけたからか
その日はアップルパイを買ってきたり

本質に家族は思い当たることがなかった
ただうめあわせにいつも食べ物を買って
それで機嫌が直ると思い込んでいるのだ

相変わらずバカにされたもんだなあ
そんな風に思えるくらいにはなった
うめあわせはいつも見当外ればかり
別にアップルパイが好物でもないし
雑な扱いに甘んじるのももう少しだ
ほのか見ゆる未来を頼りにしながら