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【京都からだ研究室⑤】「ポリヴェーガル理論」〜安心の土台を育む〜

2022年京都からだ研究室中期の振り返りです。
運営メンバーとして参加するなかで感じたこと、そして仏教へのつながりを書いておきたいと思います。

今回の講師は昨年の中期に引き続き田中千佐子先生。

昨年、千佐子先生が作られる場に心の底からの安心感とからだから起こる喜びを感じました。
2021年中期の振り返りnoteはこちら↓

そして、今年のテーマは「身体へのアプローチを通して”安全・安心”をみつめる 〜はじめてのポリヴェーガル理論〜」ということでまた安心がテーマに。

今年の夏は昨年に引き続き世間的にも個人的にも動きがあって、落ち着かない時期でした。そんなときに安心を身体からみつめていく時間は貴重な学びでした。

昨年前期にも登場したポリヴェーガル理論

最新の神経理論であるポリヴェーガル理論は、昨年の前期に、入り口のところを小笠原和葉先生から教わりました。

これまで自律神経は交感神経と副交感神経の2つとされていましたが、
副交感神経には背側迷走神経と腹側迷走神経の2種類がありますというもの。
背側迷走神経は、「ひとりで休息」の神経。
腹側迷走神経は、「みんなとつながる」神経。

ストレスを感じた時に、「ひとりになりたい!」と思うこともありますし、
「人とのつながりを感じたい!」と思うこともあるはず。

人間は動物であり哺乳類です。哺乳類は本来群れで生活します。
人がいる場に行って、交流があるとほっと安心するのは、人間が哺乳類だからなんですよね。人とのつながりがなくなると、途端に元気がなくなることも…
一方、集団の中にいると、ややこしい人間関係に疲れたり、周囲の雑音に耳を塞ぎたくなることも…
そんなときは、静かにひとりで過ごす時間が欲しいもの。自分の感覚を大事にやりたいことを自由にできると癒しになります。
こんな風に、ストレスを感じた時にリラックスするためには2種類の方法があると聞いていました。

3つの神経システム

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今回は田中千佐子先生から、ポリヴェーガル理論のさらに詳しい解説をしていただき、身体からの安全安心を体感しました。

ポリヴェーガル理論の神経が出来上がっていく過程と、無脊椎動物から魚類、爬虫類になり、哺乳類になっていく生物の進化とも重ねながら説明くださいました。
それぞれの神経について私の理解した内容でまとめるとこんなかんじです。

背側迷走神経  食物の消化、睡眠に関わる神経
交感神経    活動するときに使われる神経
腹側迷走神経  社会的な交流に関わる神経

この3つの神経が層のように重なり、人間の神経システムを支えている。この層は階段のように登ったり降りたりして状況によって働く神経が変わってくるようです。

「腹側迷走神経」は、豊かな表情を作ったり、声のトーンを調整して自分の気持ちを伝えたり、相手からの友好の合図を受け取ったりなどの、人と人とがおだやかにつながり、交流するために欠かせない働きを担っています。

赤ちゃんのときは背側迷走神経と交感神経のみだそうですが、
お母さんが声をかけたり、ミルクをあげたり、関わりを持っていく中で育っていき、さらには周りの大人や友達などと関わりを持ちながら、思春期くらいまでに育まれるとのこと。

今回の講座では、安全な環境の中で、社会的相互関係を作っていく腹側迷走神経を働かせていくのに、遊びのワークを通して学びました。

・ジェスチャーゲーム
・人間知恵の輪ゲーム
・にらめっこゲーム
・雪合戦
・だるまさんが転んだ
などなど・・・懐かしい遊びに大人たちは少し照れながらも、やっているうちに童心に帰るように楽しんでいました。

「いないいないばぁ」が安心を育てる遊びだったとは思っておらず、神経の成長過程についても学びになりました。


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最新のトラウマ治療「ポリヴェーガル理論」

ポリヴェーガル理論は最新のトラウマ治療、ストレスケアとも言われ、カウンセリングを仕事にしている私としては興味津々の内容。

危険、恐怖、安心、安全といった状態は無意識下に身体で感じられるものとされ、状況に応じて自律神経システムが働くとされています。

たとえば、その瞬間は恐怖を感じる状況でも、しばらくして大丈夫だったという安心を感じることができれば、ほっと一息ついて、心は落ち着いていきますが、
それがうまく処理されないと心の傷としてトラウマになっていきます。

その恐怖や危険、居心地の悪さなどの感覚は言語化できないことが多いのではないでしょうか。脳ではなく、からだでなんとなく感じている。

トラウマは、からだに記憶されている恐怖体験なのです。

ちょうど講座の第1回目の時に、私自身とある出来事で調子を崩していました。

過去を振り返ると、ある体験が自分の身体に染み込んでいたようで、
同じような状況に出会い、それがまた身体の記憶として呼び起こされました。

身体がびくっと反応して力が入らず、冷静な対応ができない状態になり、それがトラウマであったことに気づきました。

その時は怖い!と感じるかもしれないが、その感覚に向き合いながら、安心できるつながりに立ち戻りながら、自身の認識を修正して、ケアしていく過程でした。

不安や恐怖を感じても、必ず安心に戻れる、すでに安心の中に立っていることを思い出すこと。
その過程の中で、自分への信頼感と世界への信頼感を学んでいくんだと思います。
これもやはり、頭でわかるものではなくからだで感じるもの。

それを癒していくような期間だったのかもしれません。

からだ研究室が安全な場であり、そこでみなさんとつながりながら取り組むことで、ケアされているような感覚がありました。

恐怖や不安に向き合うためには、安心の土台を作ることが大切。

外側の条件で示されるものではなく、身体の内側から感じられる安心感。

自分を大切にする科学「ポリヴェーガル理論」ですね。

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身体からのアプローチ・・・瞑想そして仏教へ

千佐子先生はアレクサンダーテクニークやSE(ソマティックエクスペリエンス)のセッションもされているので、身体からの安心を感じるワークもいろいろ紹介してくださいました。自分のからだに触れてみたり、首顎をゆるめてみたり、ペアになって背骨を感じたり・・・。

身体の方向性を意識してからだをその場におき、静かにため息をつくのように呼吸をしていきます。

体験しながら、つながったのは瞑想やお念仏、仏教の世界でした。

仏教では「安心」を「あんじん」と読みます。
「安心」の本来の意味は、「仏法によって揺るぎない、何ものにも侵されない心の安定を得ること、その境地」のこと。

達磨大師は壁観によって仏道と冥合し「大悟」のことを意味して用いられています。
天台大師智顗が止観によって法性の理に安住することを「安心」と現しました。

つまり、仏のはたらきにより、心の平安を得て、動ずることがない境地を意味します。

浄土系の宗派ではこの「安心」を用い、阿弥陀仏の救いを信じて浄土往生を願う心を表現しました。「安心」は 浄土往生を願い心を定める、「心構え」とも言えます。

まさにお念仏をして、呼吸をする。
阿弥陀如来のはたらきにゆだねていく心のことだと思います。

この身体から感じられる安心の土台。

内側で感じる心地よい身体感覚。
不快になってもまた立ち戻ることができるという予測性。

何か揺らされることが起きても、またその土台に立ち戻ることができれば、
安心感とともにこの身、このいのちを全うしていく力となっていくのだと思います。

安心の土台に導いてくれる、仏さまのはたらきです。

南無阿弥陀仏。


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