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【子ども×登山】毎年同じところを通るの!?

 「怖いぃぃ。歩けないぃ。。ここ、針山地獄だよ、、」
足がすくむ小学1年生の女の子は、スタッフに引っ張られながら斜面をトラバース(横切る)登山道をチビチビ進んでいました。

 小学1年生~高校生までが集う、ここの子ども会では、毎年秋に秩父山系の山に1泊2日間でハイキングに行くのが恒例行事。
 電気・水道・ガスがない山小屋を使うため、水を背負って足りない部分は沢で補給し、アルコールランプで明かりを取り、ガスは全て持っていく…きわめてクラシックなスタイルの登山旅行をしています。そこでの1コマ。

 女の子は、今年入会した新メンバー。そして、初めての宿泊登山。もともと外で遊ぶことがこれまでそんなに多くなかったこともあったようで、斜面、不安定な地形、凸凹…こうした山ではごく当たり前の地形を歩くこと自体が珍しい体験だったようです。そこに加えて、トラバース道は斜面を横切るわ、下を覗くと落ちてしまいそうだわ…きっと恐怖の固まりのような場所だったのでしょう…。

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 ☝噂の「針山地獄」。斜めに着いた登山道に斜面下方向に熊笹の枯れたものが無数に生えている様子が「針」にみえたようで…。
 大人からするとなんてことない道…ですが女の子はガタブルになりながら進んだのでした…。

 どうにか無事に登山を終え、ひーこらいいながら下山した女のことは、ゲッソリした顔つきをしながら口を開けば「もう、二度と行かない!!」と。
 ところが、面白いことに、家に帰った後しばらくして話を保護者の方へ聞いてみると「登山をやり切ってきたことをペラペラしゃべってます…」というのです。

 次の年、「もう二度と行かないハズの登山」に、彼女は来ました。学年は1つあがって2年生。
 山小屋で1泊したのち、早々に例の「針山地獄」へ差し掛かることに。さて、どうなるかな…と静観していたところ、涼しい顔してなんともなく通過するじゃないですか!?
 スタッフもさすがにビックリし、「ココ、去年怖いって叫んでた『針山地獄』だよ。怖くなかったの…!?」と聞いてみました。すると…。

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 「えぇ~!?これが針山地獄なの~~!余裕~~~♥」
…とあっさりとした返事。。やれやれ。。笑
 2年目の登山が終わって彼女が記した日記が、コチラ。

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 実は僕も15年ほど子どもたちとここの山には通っていますが、この類の話はよく出てくるんです。
 辛すぎて泣き続ける人、リュックをずらして不満をブツブツ言い続ける人、その場に座り込んで何かを訴える人、小さすぎて段差を越えられずに絶叫する人……
 でも、面白いのは、全員数年が経つと、「ああ~ここオレが泣いたところだよね~」「ここおまいさんが座り込んだところだぞ!笑」と、過去を振り返りながら同じ場所を、また通過していくようになるのです。

 ここの子ども会は、最大12年通うことができるところで、毎年同じところへ行き、同じところを通ります。
 大人からすると「同じところ」を通ることや「同じ場所へ行く」ことは、つまらない事だったり、子どもが可愛そう…と思ったり、山はもっとあるのだからいろんな経験を…と思いがちなものです。
 しかし、子どもたちからすると、同じところへ行くことは、「見通しが立つ、安心できる場所」であり、同じ道や出来事は「自分をさりげなく振り返る、成長の効果測定ができる場所」になっているようにも感じます。

 人が体験活動を経て成長していく過程には、「探索行動」と呼ばれるものがあり、そこには「快適なゾーン」「挑戦するゾーン」「無謀なゾーン」という心理的な作用とその環境が必要だという理論も存在しています。
 参考:https://motivation-up.com/motivation/comfortzone.html
 長くなるのでこの話はまたおいおい…。

 同じところを通る、同じ場所へ行く…ことも、子育ての上では悪い事ばかりじゃないようですね。

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