振り向かれない恋
「ねぇ、俺のこと、考えてくれた?」
「え?んーん。考えてない。」
彼女はちょっと意地悪そうに口角をあげ、微笑んだ。
「どうして?」
「だって、君、私じゃなくてもよさそうだったから。ごめんね、私割と知り合いが多くて。なんとなく耳に入ってきちゃうの。」
「あぁ、誰かから俺が他の子とデートでもしてるって聞いた?」
「ううん。でも、今聞いた。」
「はは、ずるいなぁ。でもさ、俺もあんまりしつこくしたらよくないかなって思って。その気がないなら俺も違う子に目を向けなきゃなって思ったりもしたんだよ。」
「ふーん。」
「嫌だった?」
「ううん。」
「でもなんだか不機嫌そうだ。」
「全然。でも、振り向いてくれないからって好きが薄れたり他にいけるならそれは別に対して好きじゃないんじゃない?とは思う。」
「そうとも言えないよ。」
「そっか。うん、そうとも言えない人もいるのはわかった。だとしたらあくまで私が信じられないだけ。」
「どうして?」
「さぁ。どうしてだろう。自分がそうじゃないからかな。ごめんね、自分の物差しで測って。」
彼女はそう言って、ちょっと困ったように笑った。
彼女を振り向かせる人は、現れるのだろうか。
彼女自身が振り向かない人を変わらず強く思っているうちは、無理なのかもしれない。
そして多分、おそらく彼女が見ているその人は、きっとずっと振り返ってはくれないのだろう。
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