立方体の思い出 #毎週ショートショートnote
立方体が2つ、再び宙を舞う。
馬鹿な賭けをしてしまった。
雑多な居酒屋に、まるで似つかわしくない美人が1人。ほろ酔いだった俺はつい声をかけた。
「ねぇ、これで賭けしない?大きい目が出た方が勝ち。俺が勝ったら連絡先教えてよ」
テーブルに置いてあったサイコロを2つ差し出す。
出た目で飲み物の量や値段が変わるシステムの、居酒屋でよく見るあのサイコロだ。
「...いいですよ」
「やった!君が勝ったらなんでも言うこと聞くよ。ここ奢るでもいいし」
「じゃあ、飲み物一気して下さい」
彼女は無邪気な笑顔でそう答えた。
そして俺は今、彼女から何も聞き出せないまま、7杯目のジョッキを飲み干したところだ。
「君、すごい強運だね...」
「まだ、やります?」
「ここでやめたらかっこ悪いでしょ!」
存分にかっこ悪くテーブルにうなだれながら管を巻くと、彼女は微笑んで再びサイコロを手に取った。
「ねぇ、1個だけ質問...君の職業聞いてもいい?」
彼女は笑顔でこちら側に赤い点を2つ見せながら言った。
「プロ雀士です」
そこから先の記憶はない。
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