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週末の電車内で見た社会の縮図劇場

週末の下り電車の始発駅。
ちょうどやってきた電車に、ホームに並んでいた人がするすると乗り込んでいく。今日はそんなに混んでなさそう。ラッキー。

先に並んでいた楽器やエフェクターボードを持ったバンドマンっぽい3人組がドア付近で立ち止まっていたので、立つスタイルかな?と思ってするりと間を抜け、空いていた座席に腰をかける。

「そこ、空いてるっすよ。あっ、あー空いてなかったわ」

席に座った瞬間、後ろからそんな声が聞こえた。
あ、今の、私のことかも。私が腰掛けたところはちょうど3つ並んで席が空いていたのだ。

げげ、座ろうと思ってた感じ?
会話から察して素早く向かいの1つだけ空いてた席へ。
そっちの席は両隣の方がなかなかボリューミーだったので広く空いている方を選んだのだが、私が移れば3人並んで座れるもんね。失礼しました。


「あ、空いたっすよ」と1人が言い、3つ並んだ席にどっかりと座る。続けて連れの1人が席の方に向かいながら、私に小さく「あざます」と言って座った。そして最後の1人もゆっくりと歩いてきて、席に...座るのかと思ったら、彼は2人の目の前に立った。

「え、座んないんすか?」

「うん」

「えーなんで?(笑)」

「いやいい」

3人目のお兄さんの動向に最初に座ったお兄さんがゲラゲラと爆笑する。
どうやら3人はいい調子に酔っ払っているようだ。中でも立っているお兄さんが結構酔っていると思われた。まだ動いていない電車内でゆらゆらと体を揺らしながら吊り革に掴まっている。

「いやいや、座りましょうよ。危ないし」

「あざます」のお兄さんが立っているお兄さんに言う。

「いい、だいじょぶ」

「あはは、なにそれどゆこと?あっちの人、絶対どゆこと?って思ってるよ。せっかく空けたのになんで座んねーのって」

ゲラゲラお兄さんが言った。「あっちの人」は多分私のことだ。いや、確かに思っちゃったけど...それ大きい声で言われるとなんだか恥ずかしいのですが...!

そうこうしている間に何も知らない新たに電車に乗り込んだ人が、空いていた最後の席にするっと座った。夜の電車なんて座席の争奪戦だ。当然そうなる。


まぁ、立ちたいらしいし、いっか。
そんなことを思っていたら電車が発車し、一駅目に着いたところで私の左側にいた人が降りていった。

おそらく3人が盛り上がっていたのがちょっとうるさかったのだろう。向かいに座っていた人が1人、私の隣に移ってくる。
すると、さっきまで座ることを拒んでいたゆらゆらお兄さんが「あら、こんなところに席が空いているじゃないか」というようなジェスチャーをしながら、空いた向かいの席にすとんと座った。

「いやいやどゆこと?マジ意味わかんねー」

そう言って再びゲラゲラと笑うお兄さん。
あざますお兄さんは、ゲラゲラお兄さんに「しー!うるさいうるさい」と注意しながら席を立つと、通路の真ん中に置きっぱなしになっていたゆらゆらお兄さんのエフェクターボードを足元に持って行ってあげる。

そのタイミングで、反対側から乗り込んできた人が先ほどまであざますお兄さんが座っていた席にすとんと着席。
一瞬で色々な入れ替わりがあり、結果的にお世話をしたり注意をしたり一番まともな動きをしていたあざますお兄さんの席がなくなってしまうという状態になった。
その光景を見て、輪をかけて盛り上がって笑うゲラゲラお兄さんとゆらゆらお兄さん。
おーおー、さては今日はライブ帰りなんかでいい感じに酔っ払ってるのかな?


なんだか凸凹な3人だなぁと思いながら、まぁバンドってこれくらいタイプが違いつつも一緒にいるくらいの方がバランスが取れるのかもしれんなぁなんて考える私。
一番真面目でまともなタイプが結果損をくらうという社会の縮図というかあるある現象を、3分くらいのドラマで見たような気持ちになった。

いやはや、あざますお兄さん、おつかれさまです。
君は電車のステージでは一番輝いてて好感度高かったと思うぞ!

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