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こんな本屋があるんだと思った

今日は曇り空。家の前の桜が空と同じ色で霞んでいる。晴れの日も好きだけれど、こんな日もいい。

堂々とだらだらするには晴れの日よりも曇りの日の方が罪悪感がないから。

ちょっと肌寒くなったので、一度片付けたこたつ布団とストーブを出してくる。
暖かくしてこたつの中で、ぬくぬくと読書タイムを味わうことにして。

先月松江に出かけて買ってきた本を開く。
松江の小さな古本屋さん冬營舎店主のイノハラカズエさんが綴る日記を読んでいるとじんわりしあわせな気持ちになる。

本はさっぱり売れないけれど、
お客さんが毎日のように差し入れを持って
やってくる。

『松江日乗』イノハラカズエ

旅先に小さな本屋さんがあると、ついつい出かけてしまう。
先月松江に出かけた時も、冬營舎という名前に惹かれて足を運んだ。
雨が降っていて、お店がやっていないと切ないことになるので、事前に電話をして営業をしていることを確認すると、お店がわかりにくい場所にあるのでと丁寧に入っていく路地を案内してくれる。

とても感じのいい人だなと思ってお店に向かうと、確かに入り口がわかりにくい。けれども、事前に教えてもらっていたので、小さな看板を見つけてお店に無事に到着できた。

松江の街中にある小さな古いお家の中に、古本とコーヒーやビールが置いてあるコーナーがある。本を選んだら、ゆっくりお茶でも飲もうかと思って、じっくり本棚を眺める。登山家の深田久弥の『シルクロードの旅』と古本屋さん店主の『松江日乗』を選んで買わせてもらう。

本を選んでいる時に、御近所さんらしき女性が来て、店主とおしゃべりをしている。なんだか本屋さんらしくないゆるい雰囲気。店主さんのお家に来ているような気持ちになる。でもそれもいいなと思う。店主さんがちょっとお話をしてくれて、今のお店は移転してきたんですよと言う。

オットが夕陽を見に行きたいというので、本屋さんでお茶を飲むことはやめて夕陽の見えるスポットへ向かったので、ゆっくりお茶が飲めなかったのがちょっと残念。次回松江に行く時は本を選んだ後、お茶かビールを飲みたい。

帰りの電車の中で、早速『松江日乗』を読み始める。文章からも、あのお店のなんとも言えないゆるい雰囲気が伝わってくる。本が売れなくても、お客さんが差し入れをしてくれる本屋さん。

あの店主さんならと思う。差し入れの食べ物がとても美味しそうで、ほっこりする。本屋は利益が少ない中で、続けていくのが大変そうだけれど、こんな本屋があることがうれしいし、続いているのが良かったと思ってしまう。日記はこんな感じで始まっている。読んでいるとまた松江に行きたくなってしまう。

二月十八日(木)晴れ
はす向かいの七福さんが、「一年だね」とケーキをとどけてくださる。
開店の挨拶のときに、開口一番、「場所が悪い」と言われた。それから、あのやぶにらみの目つきでわざとかと怪訝そうに聞かれた。そんな人通りのない路地に長年店をかまえている七福さんは、営業中に店名を染め抜いた暖簾がかかるだけで看板はないが、知る人ぞ知る予約制の懐石料理の店。
 冬營舎のある通りはガラエ丁という。その昔、松江城築城の物資を運んだときの音からとも、ダンガラ染からきたともいわれている。南側の末次公園の先は穴道湖で、北はすぐお堀。猫やあなぐまが通りかかり、すずめが集うのどかで静かないい路地。このあたりでは路地とはいわず、小路(しょうじ)という。
 アキミさんより卵1パック。
 イナダさんより本。
 ルリコさんより煮しめ。
 マサエさんからはきたがきの手羽焼きとコロッケをいただく。
今日は差し入れ日和。

『松江日乗』

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