【エッセイ】嘘をつかないと決めたのに
何を思っての行動だったのか忘れましたが
あるとき両親の寝室に侵入して
母親の真珠のネックレスを着けて遊んでいました。
一通り遊んで飽きたので外そうとしたものの
外し方が分からない。
いくつの頃だったかは忘れましたが
後先考えられない年齢だったのでしょう。
力づくで引っ張って外そうとする私。
結果はご想像通り。
綺麗な真珠の粒たちは
繋いだ手を引きちぎられ
ばらばらに離散していきました。
これはまずい。
そのネックレスが
どれほどの価値のものだったのか
当時の私は全く知りませんでしたが
おそらく高価な物だっただろうと想像。
どうやって
自分が壊したのではないことにするか。
無い頭を必死に働かせます。
「ねぇねぇ。こっち来て!
ネックレス壊れてるよ!」
私は小賢しくも
わざわざ壊れたネックレスを
私が発見したかのように振る舞いました。
「ほんとやねぇ。どうしたんやろ?」
「たぶん〇〇と遊んだ時に
壊して黙ってたんじゃないかな?」
たぶんこんなに
具体的な会話はしていませんが
こういうニュアンスの
話をしたような気がします。
ちなみに〇〇とは当時よく遊んでいた
近所の女子です。
その子が勝手にネックレスを触って壊して
黙っていたのだろうと伝えた訳です。
なかなかにひどい嘘。
自分がやったのではない
と言うだけではなく
他人に罪をなすりつけようとしている。
狡いとしか言いようがない。
とはいえ私は嘘を
つき切ることが出来るほど
強い心を持っていなかったので
結局はげろります。
母は当時内職をしていたのですが
仕事をしている母の所へ行き
もじもじする私。
罪悪感もあり
言いたいことがすぐに言えない。
「どうしたの?」
「ネックレス壊したのあなたでしょう?」
そうです、母は分かっていたのです。
どうして嘘を付いたときに
詰めてこなかったのかは分かりませんが
こうやってげろりに来るのを
待っていたのでしょうか。
どんなふうに怒られたかは覚えていません。
でも
「ネックレスを壊したことに
怒っているんじゃない。
嘘を付いたことに怒ってるんだよ。」
的なことを言われたことだけは
はっきりと記憶しています。
この言葉は大人になってからも
かなりの頻度で思い出します。
これまで嘘や隠し事を
全くせずにいられたかと問われると
もちろんそうではありません。
私の弱い心がごまかしや
嘘を吐かせたことが何度もあります。
嘘をついても何も良い事なんて無いのに。
母もきっとそう伝えたかったはずなのに。
さすがにもう今では
馬鹿みたいな嘘を付くことはありません。
むしろ
「仕事において嘘を付くことも必要だ。」
みたいな話をされた時に
拒絶反応で吐きそうになります。
柔軟に生きられないみたいですね。
嘘を付かないと決めたのに
生きる為に嘘も必要だと言って来る人がいる。
それもそれ
これもこれ
べつに間違ってはいないと思う。
けど
私は母にもらった言葉が沁みついて
もう取り除くことが出来ない。
上手に生きられないのかもしれないけれど
何とかして
嘘を付かずに生きることのできる方法を
選びたいと思います。
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