中級者向け 世界観に説得力を付与する方法 「敵対行為」「戦い」「敵の勝利」「迫害」 クリエイターの為の批評コラム
前回はこちら。
世界観についての前回はこちら。
さて、まさかこれが続くと思ってなかった方もいらっしゃるかもしれませんが、1年ぶりくらいにきちんと再開します。と言っても書いてる本人がどんなだったかよく覚えていないのでちょっと読み直したところ、「物語らしさを損なわずに生かす世界観の作り方のコツ」と「軸となる要素を世界観と結合するコツ」の両輪で回しながら「世界観に説得力を付与する方法」を組み込んでいく形で次への流れが出来ていたので、とりあえずそれで。
「敵対行為」。回復が必要な「欠落」を生じさせるシークエンスで、権力の座を奪われて秩序が乱れたり恋人が攫われたりします。「欠落」は世界にも個人にも生じるので、そうした複合的な設定によって作品の深みを増す事も出来るでしょう。そもそも「権力の座」や「恋人」と呼べるものが存在しない世界観の作品もありますので、作り方次第でこういうベタなものすら使えなくなります(代わりに違う事がやれるでしょう)。
「戦い」。直接対決で盛り上がるシークエンスです。何が敵となるのか、(敵も主人公も)どのように戦うのか、この機能の扱いが上手だとバトルが見せ場になって、表現者として強力な武器になりそうです。探偵ものなら「謎解き」が戦いに、権力を強奪された大統領ならロボットに乗って副大統領と殴り合いするのもまた戦いになりますが、テーマによっては「戦い」そのものよりもその後の顛末の方が見せ場になりそうですが(恋愛の成就とか)。
「敵の勝利」。何が勝ちか、というのは状況によって変わるものですが、敵の狙いがどこにあるのか(足止めしている間に人質を運び出す、主人公を振り切って逃げ延びる)によっても描き方は変わります。ロボットに乗った副大統領が輸送機に格納されるのか、口喧嘩に負けて泣かされるのか、何に説得力があるのかは世界観のデザインと受け手の受け取り方次第でもあります(BLで「こんな男いねーよ!」というシーンがあってもいいんです。それが受け手に求められているなら)。
「迫害」。酷い目に遭わさせる、という事は「そういう立場・階層が存在する」という事なので、社会的・生物学的・物理的・あるいは電子的な、何らかの理由で規範を犯す行為が存在する事になります。ユートピアなりディストピアなりで「迫害」という概念そのものを取り扱う事も出来るでしょう。また苦境から脱して名誉を回復する事で「逆転」を描く事も出来ますが、プライドだけあって落ちぶれた元大統領や呑んだくれて別人かと思う程太った元恋人などがどんな目で見られ、どんな扱いを受けているか、ディテールは見せ場になりますね。
説得力というのは受け手が変わると効果も変わるものなので、常に一定の方法が有効なのではなく「狙った層」「特定の需要」に絞っていく(マーケットにフィットさせる)事が安定して確実な方法かと思えますが、それでプラスにしようとしても最大公約数的なものにしかならない(つまり大抵出尽くした要素ばかりで飽きられている/飽きられやすい)のであまりお勧めしません。
実際に効果的だと思われるのは普遍的な要素です。時代や文化を越えて、通じる要素。
「人間ならこうする」とか「世界はこうなっている」とか、実例や事実から抽出したエッセンスを作品の根底に据える事で上辺の狂いは何とかなりそうです。何とかならなくてもどうにかする知恵を出す方法はあります。つまりは哲学とか科学とか、人間や世界について考え抜いてきた分野の力を借りるのです(その「科学」や「人間」の在り方が違っていたら、というシミュレーションとしてもSFというジャンルは面白いものです)。
ぶっちゃけ「勉強しようぜ」という身も蓋もない解決法になりますが、そういう普遍的な説得力の要らないジャンルや世界観となるとサメやゾンビを出すとかになるので(それでも退治するのに説得力のある方法を探す必要あり)それだけで長くやっていけるとは思えません。物理法則無視のSFにしようとしてもむしろメチャメチャ勉強しないといけなくなりますしファンタジーで魔法にしてもそれなりに法則を組み立てねばならず、その他の特殊能力にしても同じ事(世知辛い時代です)。
開き直って童話でも書くのでもなければ、哲学とか科学とか歴史とかを学ぶ事から逃れられません。どうせなら楽しく学べるようになった方がいいっていうのはその通りなんですが、どうしても勉強が嫌いな人には「トウモロコシ畑は燃えない」と専門家に言われながら「俺の映画では燃えるんだよ!」と燃料ぶっかけて燃やしたクリストファー・ノーランのようなやり方もある、というのをひとかけらの希望に。
次回は、「普遍性って具体的にどういうの?」という話でいきます。
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